みずのきおく・49






「ここが……」
「ヒトミクリニック。産婦人科の病院だね。中に入る?」
「用がないのに病院に行くのは迷惑だろうから、此処でいいよ」
「いやいや、寒いし中に入りましょ。院長には上手い事言っておいたから大丈夫。お見舞いの振りしときゃいいんだよ」
「創司くんって産婦人科のお医者さんにも知り合いがいるの??」
「俺って業界では結構有名なのよ、これでも。此処の院長は知り合いの知り合いだけど」
普段は結構忘れちゃうけど、創司くんってスッゴイ人なんだと改めて思う。



「創ちゃん、グッジョブよ!さ、それじゃあ入りましょ」
風眞さんは私の手を握ると病院の入り口に向かって行った。
「先を越されたな」
焔くんに気の毒そうに声をかけると、創司くんは私達を追い越して一足先に受付に向かった。
そして焔くんは……
「後も先もないもんね」
空いている私の右手を握る……と電気バチバチだと寸前で気付いたらしく、腕を組んでにっこり笑った。



※※※※※※※※※※※※※※※




「…………」
皆に聞いた話だと、受付の近くの椅子に座っていたはずの7年前の私はいつの間にか姿を消していたらしい。
それは……何故?
「粋ちゃんがお母さんに何も言わずに1人で何処かへ行ってしまうとは考えにくいでしょう。それに、他の人の目があるのに連れ去りなんて出来ないわ」
「考えられるのは、粋さんが誰かを助けようとしてこの場を離れた……かな」
「だな。粋の性分を考えるとそれが一番簡単だし」
「誰かを助けようとした………」
今は固く閉ざされているだけで、私の中に記憶は残っている。
たった7年前の事、頑張ればきっと思い出せる。



誰かを助けようとした?
誰を?
「男の子だ」
ふと、頭の中に浮かんだ姿と共に私は無意識にそう言った。
「男の子?」
その子は病院の入り口で誰かを探していた。
私は声をかけた。
この近くに居るはずだからと一緒に探してあげた。
男の子に手を引かれて……歩いていると……言われたんだ。



「この世界でもキミはお人好しなんだねって言われた」
「この世界でも……それって……!!」
確かに、その子はそう言っていた。
「その時は意味が分からなくて、そしたら……」
そしたら、それからどうしたんだろう?
苦しい……すごく、息苦しい。
暗い所に居る時みたい。



「顔色が悪いわ。これ以上は止めておきましょう?」
「だい……じょぶ。もう少し……何か……」
男の子は他にも何か言っていたはず。
思い出せる、きっと……



『………仕方ない、今はこれだけで我慢しておくよ』



氷みたいに冷たい青い瞳の男の子。
あの時、私は男の子に首をつかまれた。
細い指が首に食い込んで、苦しくて声を上げようとしたけれど声が出なくて。
「っ……かはっ………」
「粋ちゃん、ダメッ!!」
「粋さんっ、止めてっ!!」
両手に走った静電気のような痛みにハッとすると、直ぐ間近に焔くんと風眞さんの心配そうな顔があった。
「………」
無意識に私は自分の首を強く絞めていたようだ。
ゆるゆると首から手を離すと急に寒気が襲ってきた。



「今日は中止。これ以上は粋の心と身体に負担がかかりすぎる」
「………だいじょうぶ、だよ。折角……此処まできたんだもん。もう少し……」
「ダメだ」
ただ1言なのに創司くんの言葉には重みがあった。
「創ちゃんは粋ちゃんの事を思って厳しく言ったのよ。それは粋ちゃんも分かってるわよね?」
黙って頷くと風眞さんは私を優しく抱きしめて言った。



「急がないでいいの。こんな事を言ったら怒られちゃうかもしれないけれど、あっちの世界の私達の方がずぅっと大人なんですもの、時間がかかったって許してくれるわよ。だから、自分を追いつめるようにして無理をしないで」
皆、私の事を思ってくれている。
それは分かる。
それでも私は…
「私は……今までも待たせてた。あっちの世界の記憶を思い出すチャンスは17年の間に何度かあったはずなのに、私はずっと気付かない振りをしてた。皆が私の心配をしてくれているのは分かっている。でもね、今だったら何か手掛かりがつかめそうなんだよ?だから…」
言葉の途中で両手にバチッと電気が走った。



「粋さんの記憶を戻すのは粋さん本人が頑張るしかないかもしれない。一緒に頑張ろうって言ったけど、直接的に僕が出来る事はないかもしれない、だけどね、粋さん」
焔くんの赤茶の瞳はじっと私を見つめて続けた。
「僕は……って言いたいところだけど僕達は、粋さんが傷つかずに記憶を戻せるようにサポートを頑張りたいんだ」
「焔くん……」
「粋さんが持っているあっちの世界の記憶は、紅蓮の能力を目の当たりにしたのをきっかけに出て来たんでしょう?同じようにさ、何かのきっかけで他の記憶を自然に思い出す可能性はゼロじゃないと思わない?だから、此処で無理することはない。もし此処で無理をして何か思い出せたとしても、それで粋さんの心や身体が傷つくのだったら……僕は自分を許せないし、あっちの世界も許せない」
「ほむ…」
興奮してきたのかな。
心なしか瞳に赤味が増してきたような……



「大っ体さぁ、あっちの世界の人達も重要な事を僕達に任せるくらいだったらもっと協力的であって欲しいと思わない?……って、姉さんの記憶は北杜さんが解放したんだっけ。ファルシエールには準備期間がなかったからなぁ……」
「風眞さんのあっちの世界の記憶って創司くんが解放したの?!」
初耳。
そういえば風眞さんは焔くんと創司くんみたいに生まれた時から記憶があったとは言ってなかったし、「いつから」って話は聞いたことない……かも。



「ごめんなさい、粋ちゃん。隠していたわけじゃないの。ただ、今まで何となく機会がなくて……」
あんまりに私が驚いたものだから風眞さんは申し訳なさそうに謝った。
「謝る必要なんてないよ。そっかぁ、風眞さんの記憶は創司くんが解放したのかぁ」
そんな事が出来たんだ。
でも、私の記憶を解放出来ないって事は限定的なのかな?
「うん、まぁ。さて、と。粋の様子も少しは落ち着いたみたいだから場所変えよう。近くに東雲のホテルがあるから行ってみるか」
「え?あ?えと……」
創司くんの態度、ちょっとおかしい……かも?
色々考えていると焔くんは私の腕を軽く引っ張った。
「行こう、粋さん」
「………うん」
とりあえず今は皆の言う事を聞いた方がいいんだろう。
軽く息を吐いて立ちあがろうとした時、さっき思い出した言葉が頭を過った。



『この世界でも……』



男の子の青い目が私を見ているような気がして私は焔くんの腕に強くしがみついた。







「………これは、何?」
「ファミリータイプの特別室だよ」
「すっげぇ部屋……っつーか家のレベルじゃないか、コレ」
「だってファミリータイプだもん」
だってじゃない、だってじゃないよ焔くん。
次元が1つ2つ違う気がするよ!!



「寝室はダブルとツインとシングルが1つずつあるんだ。ねぇ、粋さんはどの寝室にする?」
「あ、え?ちょ、ちょっと待ってね?今、まさに今、頭の中を整理してるから」
ホテルに着くと焔くんはフロントに行って鍵を貰って来た。
焔くん曰く、「明日も休みだし今日は此処に泊ろう」とのことでして。
そして連れて来られた部屋に居るわけで御座います。
更に更に現在、寝室に関して説明されているようであります。



「…………なんだけどね、やっぱりオススメはダブルだよ!キングサイズだから広くて快適だと思うよ!!」
家具売り場の店員さんみたいな熱意で勧められると「いいかなぁ」って心が揺らぐ。
「じゃあ……」
「じゃあ、私と粋ちゃんはダブルの寝室に決定ね。一緒におしゃべりしながら寝ましょうね〜?」
「ね〜?」と言いながらきゅうっと抱きついてくる風眞さんにメロメロっとなる私。
創司くん、ごめんなさい。
超気持ちいいです。
「うん、そうしよう!焔くん、勧めてくれてありがとうね」
「え………え………あ、うん。喜んでくれて……何より……」
笑ってそう答えた焔くんは、その後に肩を落として創司くんに慰められていた。
何故?!



「うっわぁ………想像以上だったぁ………」
「本当よねぇ………やんっ!!ふっわふわ〜!!粋ちゃんも寝てみたら?」
ベッドの感触を楽しんでいる風眞さんの横にお邪魔してみると……
「ふわっふわ〜!!」
「ねー?」
「未だ昼間だけど、こんなに気持ちいいと眠くなっちゃうね」
ふわふわの感触もだけど、枕から漂ってくる何か植物の香りが更に眠気を誘うぅ……
「お昼寝って言葉があるんだから昼間に寝ても問題ないわよ」
「そうかなぁ……焔くんと創司くんに……悪いなぁ………」
「それこそ、問題ないない」
「そう……かなぁ……」
悪いなぁと思いながらも身体はベッドに沈むように重くなっていく。
そして私は眠りに落ちていった。



※※※※※※※※※※※※※※※




「寝た?」
「えぇ。創ちゃん、私は焔ちゃんとお買い物に行って来るから粋ちゃんをよろしくね」
「いいよ。任されました」
「なっ!?それ、おかしくないですか?粋さんをよろしくされるのは僕でしょう?」
異論を唱える焔に風眞はニッコリと微笑んで言った。
「桃色脳の肉食獣と大事なお友達を寝室で2人きりにするなんて恐ろしい事、私には出来ないわ」
「桃色脳の肉食獣って……」
「アンタよアンタ。言わなきゃ分からない?粋ちゃんに手を出したらお姉ちゃん鉄拳制裁しちゃうんだからん★」
「な、なななななな……北杜さんと2人きりにするのだって危ないじゃないですか。こんなにカワユイ寝顔の傍に居て何もしないなんて、いい歳した男として有り得ません」
その考えを持ってる時点で「オマエとだけは2人きりにさせられん」と風眞が固く決意するであろうに、言ってしまう辺りが焔のちょっと抜けてる所である。



「心配ないって。大体、その気があるなら2人で住んでた1ヶ月の間に何かしてるし。それに、いくら粋がカワユくても………」
「それ以上言わないでよろしい。ほら、焔ちゃん、行くわよ」
「い、痛いです!!どうして耳を引っ張るんですか?あーん、粋さぁ〜ん!!」
何かとんでもない事をサラッと言われそうな予感がした風眞は、言葉を遮り焔を連行して部屋を出て行った。



※※※※※※※※※※※※※※※




「どういう事ですか?僕達だけで調査するんですか?」
「それは積極的にじゃないわね」
「それじゃあ……」
「お買い物って言ったの憶えてないのかしらおバカさん」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」
ムッとした顔の焔を鼻で笑うと風眞は続けて言った。



「急にお泊りが決まったから着替えを用意してないんですけど。男どもはいいかもしれないけど、女の子は我慢ならないんですけど」
「あぁ………下……ぎぃぃぃた、痛ぁ……」
「全て言わないでよろしい。必要な物は私が選ぶから貴方は財布と荷物持ちを担当しなさい。2階で必要な物は揃いそうだから行くわよ」
「あ……い……」
力いっぱい抓られた頬を擦りながら焔は姉の後をトボトボとついて行った。







「あ………あれ………?!」
ほわほわとした感触に包まれて目を覚ました私は、一瞬ここが何処か分からず慌てて飛び起きた。
「そんなに急に起き上がると身体がビックリしちゃうぞ」
窓際のソファでノートパソコンを開いていた創司くんは私の方に近づいて来ると「落ち着きなさい」というように頭をぽんぽんと撫でた。
「ご、ごめん。私、寝ちゃったんだね……」
ふわふわベッドを風眞さんと楽しんでいる間に私だけ寝てしまったようで。
な、情けなさ過ぎる……!!



「少しは疲れが取れたか?風眞と焔は買い物に行ってるからもう少し休んでていいんだぞ?」
「大丈夫、元気になったよ。風眞さん達はお買い物に行ってるんだ?それじゃあ、お茶の準備をしておこうかな」
「俺も手伝う。キッチンに色々とあるみたいだから行ってみよう」
「キッチンもあるんだ……」
なんとなく簡易キッチン程度じゃない気がするんだけど。
そして、予想のナナメ上の物が出てきそうな気が……する。



※※※※※※※※※※※※※※※




「やっぱりー!!」
「はははっ、この部屋で生活出来るな」
お料理好きなら憧れる有名メーカーのお鍋。
戸棚に並んでいる趣味のいい食器。
そしてこれは最新式のホームベーカリー!!
「はぁぁ……此処で料理したら楽しいだろうなぁ……」
「そんじゃさ、夕飯は此処で作って食うか。必要な食材があったら焔に買って来るように連絡しておくから」
素敵キッチンに思わずため息をつくと創司くんは気をつかってくれたんだろう、私的には非常に嬉しい申し出をしてくれた。
「うん、そうしよう。焔くんには悪いけどお買い物お願いしてもらえるかな?」
「いるものメモしといて。それ書いてる間に此処にある食材とか調味料のチェックしておくから」
そう言うと創司くんは冷蔵庫や戸棚を開けて中を見始めた。
流石、何て気が利いて行動が早いのかしら。



「えーと………これでいい……かな?」
「見して。んーーー、鍋にでもするのか?」
「寒いし皆で食べるのにいいかなって思って。水炊きと寄せ鍋の2種類で大丈夫かなぁ」
「大丈夫大丈夫。メールしとくな」
手早く携帯を操作し「送信」と言うと、創司くんはジッと私の方を見た。
「ん???どしたの???」
今さら言うまでもなく創司くんの外見は爽やか好青年。
恋愛感情があろうがなかろうが見つめられるとドキドキしてしまう。
うーん……赤くなるな、私の顔……



「俺が風眞の記憶を解放した経緯、知りたい?」
「え?!ど、どうして突然?」
「いや、何となく。時間あるし、知りたいなら話そうかなと思いまして」
「何となく」なんて創司くんらしくない。
らしくないって事は意味があるって事だ。
「私が知っても……いいの?」
「あーー、まぁ、正直に言うと粋は知っておいた方がいいかなぁと思うんだ。記憶を戻すヒントになるかもしれないし」
「それは有難いけど……風眞さんも一緒に居る時の方がいいんじゃないのかな?」
風眞さんにも関係ある事なんだし、私だけ話を聞くのは違う気がする。
けれど、創司くんは少し困ったような顔をして笑って言った。



「風眞には……聞かせたくないんだ」







女の人の買い物は長いってよく聞くけれど、
「…………」
それが本当だと現在実体験中だ。



「(これが粋さんとの愛★ラブ★ショッピングだったら傍を片時も離れず寧ろ試着室にだって付いて行く勢いで楽しい時間を過ごせたのになぁ)」
僕達きょうだいは一緒に居るとかなり目立つようで、静かに買い物をしたいという姉さんは僕を店の外に追い出した。
無理矢理連れてきたくせに身勝手極まりない。
僕だって粋さんの着る物……っていうか着せたい物……を選びたいのに!!
ボーっと上を見上げると、シイラの姿をした粋さんと目が合って危うく後ろに倒れそうになった。
何だ、広告か。
東雲のアパレル関係の店が並ぶフロアだから有るのはおかしくないけれど、急にだと驚いてしまう。



「ルナソルのモデル、超カワイイよねー」
うん、超カワイイ。
通りすがりの一般人さんの意見に思わず心の中で相槌を打ってしまう。
粋さんは僕の世界の中で一番カワイイ存在だもの。
「あの子さ、小学校の時に同じクラスだった子だよ、絶対」
「うっそ、マジで?あれってCGじゃないの?」
「!?」
広告を指差して話す一般人女子Aの言葉に耳を疑った。
今、聞き流しちゃマズイ事を言ってなかった?



「家の事情とかで半年くらいしか居なくてさぁ、写真ないから証明できないんだけどねー」
「その話、聞かせて頂いても構いませんか?」
失礼だとは思ったけれど声を掛けると一般人女子Bはポカーンとした顔で僕を見上げた。
「え?あれ?えぇっ!?」
僕と頭上の広告を交互に見て一般人女子Aは驚いているようだ。
「しののめほむらくん??」
「え、えぇ。そうですが…」
何で僕の名前を?と思ったけれど直ぐに合点がいった。
粋さんの情報は非公開だけど僕の情報は公開されているんだった。
モデルの名前なんてイチイチ見ないだろうと思ってたけど、そうでもないんだなぁ。



「超カッコイイ〜!!写メっていい?」
「すみません、それは遠慮して頂けますか?それで先ほどの……」
「握手して!」
なんなんだ、この問答無用な勢いは。
全然会話が成立しないじゃないか!!
「………いや、そうじゃなくて……」
話しかけた事を後悔しそうになったけれど、ここで踏ん張らなくちゃ。
粋さんの為、粋さんの為、粋さんの為ぇっっ!!!



「あの広告の彼女の話、してくれませんか?」
一般人女子Aの目をジッと見つめて、父さん直伝の営業用スマイルを発動させてみる。
やり過ぎると相手に危険が及ぶとかよく分からない事を言われているから6割程度の力で……
「………きゅう………」
「…………マジですか」
鼻血を出して倒れそうになった一般女子Aを目の前に、僕は自分の見た目の異常さを再認識した。



※※※※※※※※※※※※※※※




「ごめんごめん、あの子の事だったよね。でも、ほむらくんの方が彼女の事を知ってるんじゃないの?」
「いえ、実は僕も契約の関係で彼女の事はよく知らないんです。でも、一緒に仕事をしてるんだし気になるじゃないですか」
「へぇ〜、何かほむらくんって意外にフツーっぽいんだね」
「どうも。それで、彼女なんですけど……」
「あぁ、えーと、アタシこの近くの東小に行ってたんだけど、6年の時に半年くらい同じクラスだった子だと思うんだ」
「6年……?」
おかしい。計算が合わない。
粋さんが日本を離れたのは7年前、小学5年生の時だったはず。



「髪の色は黒かったけど目は薄い青で、無口で無表情な子だったけどあのモデルの子と顔はすっごく似てた。他人とは思えないくらい。5年前だけどそんなに顔って変わるもんじゃないでしょ?」
髪が黒い?
無口で無表情?
粋さんは5年前に日本に居ない。
だったら他人の空似?
何だか嫌な予感がするのは何故だろう。
有益な情報を得られなそうだし話を切り上げた方がいいかもしれない。



「そうですか、ありがとうござい……」
「名前がちょっと変わってたっけ。えーと……」
心臓が妙に早く打つ。
その名前を知らない方がいいような気がしてならない。



「えーと……しいら。『かいどうしいら』って名前だったはず」
「しいら………」
粋さんと同じ顔じゃない。
シイラと同じ顔をした「しいら」という名前の人がいる。
ただの偶然?
それとも…



「こんな所で浮気してたのね、もう、おバカさんなんだからぁん♪」
「ね………ムグッ………」
「ほむらちゃんが迷惑をかけたみたいでごめんなさいね。ほら、行くわよ★」
「ムガ、ムガ……」
ポカーンとする一般人女子ABをその場に残し、姉さんは僕の口を塞いで歩き始めた。
あぁーーー!!!未だ聞ける情報があったかもしれないのにーーー!!!



「名前と小学校が分かっただけで充分よ。あまり一般人に関わるのはよくないわ」
「でも、」
「それより今はお買い物を優先。創ちゃんから食材調達依頼のメール来てるから見てみなさい」
「………」
こんな時でもマイペースな姉さんに唖然とする。
真面目に考えてないわけじゃないだろうけど…
「………私だって気にならないわけないのよ。今、まさかの仮説を立ててしまって自分の中で整理がついてないの。悪いわね」
親指の爪を噛んで睨みつけるような目つきで姉さんは真っすぐ前を見つめている。
「姉さん……」
前言撤回。
姉さんは姉さんなりに考えているんだ。



「私たちが知らない記憶………シイラに、一体何があったっていうの……」
姉さんの独り言に黙って頷き、僕は粋さんの広告を見上げた。









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