みずのきおく・48






「なくしものでしょ〜?」
「あ、うん。あのね、アクアマリンのペンダントなんだけど、昨日どこかに落としちゃったの。どうやったら見つかるか見てもらえないかな?」
「い〜よ〜」
次の日の朝。
少し早めに教室に行くと霧島くんは既に登校していた。
普段は朝の予鈴まで教室に来ないのに珍しいと思ったら、「水波さんがお願いに来る気がした〜」との事。
予感の能力って、スゴイ。



「…………」
「…………」
暫く黙って目を閉じていた霧島くんは、ふと眉を寄せると静かに目を開け私に尋ねた。
「………そのペンダントって水波さんの大事な物なんだよね〜?だから、見つかって欲しいよね〜?」
「う、うん。大事な物だし見つけたいと思ってるよ」
「そっか〜そうだよね〜。………う〜ん」
困った顔をしているって事は「見つからない」っていう結果が出ちゃったのかもしれない。
それは残念な事だけど、霧島くんは悪くないんだし困らせるのは申し訳ない。



「見てくれてありがとう。もし見つからないって結果が出たのだとしても、私が納得いくまで探してみるから。だから……気にしないで、霧島くん」
「見つからないわけじゃない〜」
「え?」
見つからないわけじゃないって事は、見つかるって事?
それなのに何で困った顔をしてるんだろ?



「探さなくても〜なくしものは〜戻ってくる〜けど〜………」
「けれど……?」
「………それが〜水波さんにとって〜いい事とは限らない〜〜かも〜」
「いい事とは限らない……って、何か変な事が起っちゃったりするのかな?」
霧島くんの表情が暗くなる。
ついこの前……バレンタインの日と同じ。
「もしかして……」
「ごめん〜、分からない〜」
「………何が起きるのかまでは分からないけど、よくない事が起こりそうなのかな?」
「そう〜」
「そっかぁ………あ、あのね、念の為なんだけど………こういう事、能力が発揮出来ない事って、そう度々起きてるわけじゃないよね?」
戸惑った顔をして霧島くんは頷いた。



「なら安心した。能力が上手く使えない時って不安になるもんね。ほら、もしかしたら能力が効きづらい人とかどうにもならない原因があるのかもしれないし。失くし物が見つかるって教えてくれただけで充分だよ。だから、ありがとう」
「水波さん……」
「朝から珍しい組み合わせじゃない」
すごく失礼かもしれないけど、今、このタイミングでは会いたくない人が……。
THE 空気読めない人(否、読まない)の祐月くんは、爽やかな笑顔で私達に近づいて来た。



「お、おはよう、祐月くん」
「おはよ〜」
「おはよ。何か大事な物でも失くしたの?」
「う……うん。ペンダントなんだけど……」
「もしかして昨日の朝、玄関に落ちてたヤツかな?」
「そう…………って?!気付いてたの?!」
「うん」
悪気のない顔で頷く祐月くん。
な、ななななな、何たる事!!



「どうしてその時に教えてくれなかったの?!」
「昨日の朝の水波さんっていっぱいいっぱいだったから余計な話をしない方がいいかな〜って親切心。それに、あんな所に落ちていたらお家の人が気が付くでしょう?」
「そ、それは…」
そうだけど、そうだけど……
何か違う気がするっっ!!



「それで?まさかお家の人は気付かなかったの?」
「……お母さんが見つけて……焔くんに渡したんだけど……」
「だけど坊やが失くしちゃった?子供のお使いも出来ないんじゃん。使えねー」
「ち、違……」
「違うの?じゃあ、ペンダントはどうして失くなっちゃったの?」
「う、うぅぅ………」
意地悪してるっていうか、私をいじって楽しんでいるご様子なのですが。
何だか悔しい〜!!



「朝からスイちゃんで遊ぶな」
「あーあ、ナイト様登場か。そんじゃね、水波さん。探し物、早く見つかるといいね〜」
祐月くんがヒラヒラっと手を振って自分の席に戻っていくと、登校してきたばかりのミクちゃんは深い溜息をついた。
「絡まれてたみたいだけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫……というか、祐月くんだし………」
「慣れてきちゃった?あんまり慣れない方がいいかもだけどね……」
「確かに……」
いけない、いけない。
慣れちゃったらある意味負けだ…。



「あのさ、余計な事かもしれないけど」
「うん?」
私と霧島くんを交互に見て何かを察したのか、みくちゃんは遠慮がちな声で言った。
「何か困っている事があるなら力を貸すからね?僕にだって何か役に立てる事があるかもしれないから……相談してくれたら嬉しい……あ、困ってるのに嬉しいなんておかしいか。その……だから……」
「…………あ〜!!」
「え?」
「どうしたの?」
それまで黙っていた霧島くんは、珍しく大きな声を出すとジッとみくちゃんを見てから教室を出て行ってしまった。



「……僕を見て、何か思い出したのかな??」
「そう……だね……あ、さっきの事なんだけど」
「さっき?」
「相談に乗ってくれるって」
「うん。僕に話せるような事だったら遠慮なく話して」
私達の様子がおかしいのに気付いていたみくちゃんに「何でもない」と言うのも悪い気がして、私はペンダントの事を話した。



「アクアマリンのペンダントだね?分かった、僕も探してみるよ。東雲くんから貰った大事な物だものね」
「ありがとう。でもね、霧島くんの予感だと「探さなくても失くし物は戻ってくる」らしいんだ」
「じゃあ、粋ちゃん以外の人がペンダントを見つけるって事なのかもしれないね。クラスの皆にも声をかけてみようか?」
「そう……なのかなぁ……」
その後に続いた「戻ってくる事が私にとっていい事とは限らない」という部分が気になって曖昧に返事をしてしまってから、私は自分でも「間違った」と気が付いた。



「あまり大事にしたくなかった?……そうだよね、ちょっと考えれば分かるのに……ごめん……。でも、僕は僕で探してみるから。早く見つかるといいね?」
「あ、ち、違っ……」
多分、私がハッキリとしなかった理由を勘違いしてる……。
自分で話を振ったのに私ってば最低だ…。
「水波さんって、天然悪女だね?」
いつの間にか近づいてきて私の耳元でそう囁いた祐月くんの笑顔は、それはそれは楽しそうに輝いていた。
あぁ……ホント最悪。



※※※※※※※※※※※※※※※




午後 調理実習室

「ミク〜」
「どうしたの?午前中の授業、全然出てなかったじゃない」
「ん〜ちょっと〜整理してた〜」
「整理?」
「「予感」を整理してた〜」
長い付き合いであっても特待組の生徒達はお互いの能力の深い部分を知らない。
予感の整理とは考えを整理する事と同意なのか、そこはよく分からないが美久は何も言わなかった。



「お昼は食べた?簡単な物でよければ直ぐに作るけど」
「おにぎり〜こんぶの〜」
「分かった、ちょっと座って待ってて」
言葉の通り数分でお茶とおにぎりを霧島の元へ持ってくると、美久は霧島の対面に座った。
「食べてい〜い?」
「どうぞ。足りなかったらもっと作るから遠慮しないで」
「ありがと〜」
眠そうな目でモグモグとおにぎりを食べる様子は普段と変わらない。
単にお腹が空いて来ただけだろうと理解し美久が自分のお茶を淹れ始めると、霧島は突然話し始めた。



「僕は〜水波さんが〜好き〜だから〜」
「!?」
唐突な告白に驚きテーブルの上へお茶を注ぎ始めた美久を見て言葉が足りなかった事に気が付いた霧島は、彼にしては早く言い直した。
「あ〜〜、あ〜〜、ミクの好きとは違う意味〜」
「僕の好きと……い、いや、あの………えーと……」
「だからね〜、ミク。その時になったら、動いて〜?」
「その時??ごめん、ホダカ。キミが何を言っているのか全然分からないよ」
困惑する美久を濃灰色の瞳で静かに見つめると、霧島はおにぎりの礼を言い調理実習室から出て行った。



「その時って……何?」
言葉の意味も真意も分からず、美久は首を捻るしかなかった。







放課後。
私は帰り道を歩きながら霧島くんに見て貰った事を焔くんに説明した。
「そっか……能力を使っても何処で見つかるかは分からなかったんだ……」
「でもね、いつかは分からないけれど戻ってくるらしいの。だから、えーと……私が言うのもおかしいけど……心配しないで?」
『水波さんにとって〜いい事とは限らない〜』
そう言われた事は焔くんに言えないでいた。
何でも頼って欲しいとは言われてるけど、余計な心配事を増やすだけだし。
焔くんはお家の事でも大変なんだし……



「………何か隠し事してる?」
「うっ……し、してないデス……」
自分でもバレバレだなぁと思う下手な反応に、焔くんは少し頬を膨らませて言った。
「約束したでしょ?僕を頼ってくれるって」
「う………うん………まぁ、そうだけど……大した事じゃないから」
「大した事ないんだったら言っても平気だよね?僕に秘密にしたいんだったら別だけど……」
赤茶色の大きな瞳をウルウルっとさせて寂しそうに言いなさる。
泣き落としですか?!
う、うぅ………
「本当に、あの、えーと………」



落とされました。



「もう1度、霧島さんが言った事をなるべく正確に思い出して言ってくれる?」
「『探さなくてもなくしものは戻ってくるけど、それが水波さんにとっていい事とは限らない』だったと思う」
「そっか……」
昨日と同じように公園のベンチに座って白状すると、焔くんは小声で言葉を繰り返して軽く目を閉じた。
「あ、あの、そんなに気にしないでいいからね?「いつ」とか「何が」とか分からないんだし……」
「うん……そうかもしれないね。いい方向に考えれば『限らない』ってだけで何も起きないのかもしれない。でも、何か起きるかもしれない」
「そうだけど、そんなの何でもそうだよ。明日の事も1分後の事も未来に何があるかなんて分からないもん」
「それはそうだけど、気にはしておいた方がいいよ。いーい?ペンダントが見つかったら直ぐに連絡してね?1人で何処かに取りに行く〜とかナシにしてよ?僕の都合なんて2の次でいいんだから」
「そういう訳には……」
いかないと言いたいけど、妙な威圧感というか迫力というかに負けて言えない……
「昨日もしたけどもう1回、約束」
「はい、約束します…」
昨日の約束の状況とは大分変わっているような気が……する。







次の日。
土曜日で学校が休みの私達4人は、私が7年前まで住んでいたらしい町に行く事にした。
らしい、っていうのは私にその時の記憶がないからで……
「2時間も電車に乗ったんだもんね、疲れちゃった?」
「あ、ううん、全然。ちょっと考え事してただけ」
「まぁ、一息いれよ。今日の予定を確認するためにもさ」
「賛成。粋ちゃん、悩んでたら考え込まないで話してちょうだい。約束したでしょう?」
「そう……だね。ありがとう、風眞さん」



駅の近くの喫茶店に入ってとりあえず休憩。
席について窓の外を眺めてみても、全然見覚えがない。
7年の間にガラッと変わってしまうなんてはずないから、きっと未だ記憶は凍結したままなんだろう。
「征さんは記憶を凍結する事になった原因の場所に行けば、徐々に記憶が戻ってくるって言ってたんだよね?」
「うん。記憶の凍結解除を急にすると心に負担が掛かり過ぎて危険だから、キーになる場所に行って少しずつ解除をしていく方がいいんだって」
お父さんは私の過去を凍結させた事で記憶の入り組みが複雑になってしまったんじゃないかって気にしていたから解除に賛成はしてくれたんだけど、記憶を凍結させた理由……その時に一体何があったのかは話してくれなかった。



「お父さまが少しずつっておっしゃっているのだから焦らないでいましょう?今日は1箇所だけでも構わないし、途中で気分が悪くなったら別の日にしても構わないわ。粋ちゃんが1番楽なようにしましょうね」
「ありがとう。あ、あのね、風眞さんも無理しないでね?寒い時は体調を崩しやすいって前に言ってたから……」
小さい頃は寒い時期になると体調が悪くなって外に出られなかったって言ってたのを思い出して急に心配になってしまった。
風眞さんも結構無理を通しちゃう人だから……。
「大丈夫よ。私の身体の事は創ちゃんが見ていてくれてるから」
「そういうこと。24時間態勢の専属医師ですからネ」
「それもそっか。いいねぇ、風眞さん」
彼氏さんでお医者さんでしかも一緒に住んでいるんだもんね。
それはとっても安心だわ。



「………」
そういえば、と何だか静かになってる隣を見ると焔くんは私の顔をジーーーっと見つめていた。
こ、これは……
「な、なに?どうしたの??」
「実はちょっと前から考えていたんだけど」
「う、うん」
「粋さん、家に来て。僕と一緒に住もう?」
「はい?」
あまりの突然の内容に耳を疑いました。



「何か問題?」
「問題というか………えーと、えーーと……???」
普通におかしくないですか?
と思う方がおかしい?
何だかわけ分からなくなってきたかも。
「だって一緒に住んでいたら最低1日の半分は一緒に居られるでしょ?そしたらもっと粋さんの役に立てると思うんだけどなぁ」
「家に居る間は傍を離れないつもりね、この脳内桃色破廉恥小僧!!」
「語尾に力が入ってんなぁ…」
風眞さん……目つきが怖すぎる……



「気持ちは嬉しいけど今は藍ちゃんと離れて生活したくないの。ごめんね?」
「だったら藍ちゃんも……っていうか家族みんなでおいでよ」
「お母さんは事情を知らないし、あの……無理じゃないかと……」
まさか夫と娘2人が異世界の記憶を持ってます!なんて聞いたら何事かと思っちゃうだろうし。
お母さんの事だから信じてはくれそうだけど、そしたら心配かける事になっちゃうし。
「無理かぁ……」
しょぼんとしてしまった焔くんを見ると何だか申し訳ない気持ちになってくる。
厚意で言ってくれてるのに悪かったかも。



「一緒には住めないけど焔くんの事、頼りにしてるからね?」
「………」
「すごくすごくいっぱい頼りにしてるからね?」
「………」
「焔………くん?」
しょんぼりしてるだけじゃなくて何やら考えているようにも見えるのですが…



「ご家族に心配かけちゃいけないもんね……うん、そうだよね」
「分かってくれた?」
そうだよね、焔くんならちゃんと分かってくれ………
「じゃあ、3年後には家族になるんだしって事でお願いしてみればいいかな?」
「さ、3年後に家族??」
………想像を遥かに突き抜けた事をおっしゃいました。



「ごめんね、面倒だけど法律はどうにもならないから……あ、でも、事実婚って言葉もあるしね。大事なのは2人の気持ち………って、何するのさっ!!」
風眞さんに向う脛を蹴られたのか……。
すっごく痛がってるな……。
「場の雰囲気を和ますだけで終わりなさい、愚弟」
「場の雰囲気とかじゃありませんー。僕は本気で言ってるんですぅー」
「尚更タチが悪いじゃないのよ!!」
「あははー、仲良しきょうだいだなー」
「………っ」
3人のコントのようなやり取りに思わず噴きだしてしまった。



「もー、粋さんに笑われちゃったじゃないか」
「貴方がお・か・し・い★から笑ったんでしょう。ねぇ、粋ちゃん?」
「あ、いや、おかしいというか面白いというか何というか……そう!微笑ましいなって思って」
「「微笑ましい??」」
風眞さんと焔くんは納得いかない感じの声で……しかも声を揃えて言った。
「うん、微笑ましい。それに、ちょっと羨ましいかな」
3人の関係と私が入った4人の関係は微妙に違う気がする。
ちょっぴり疎外感。



「俺達って異世界の繋がりはあっても、それだけじゃないよな?」
創司くんの言葉に皆の目が私に集まった。
「何度だって言うけど、私は粋ちゃんが好きで粋ちゃんは一番の友達だって思ってるわ。これって私の片思いなのかしら?」
「風眞さ……」
「僕の方が姉さんの何倍も好きだからね!!しかも僕達は両思いだもんね!!」
「あ、あぁぁぁ……変なところで張り合わないでよぉ……」
きっと口に出して言ってしまったらモメモメしそうだから言わないけど……
この2人って……
「似た者きょうだいだなぁ」
あえて空気を読まずに言ったっぽい創司くん。(しかもすっごい笑顔で)
「「似てない!!」」
絶対に2人の反応を面白がってる。
大物だ……



「まぁ、似てるのは粋が絡む時限定だけど」
「はぁ……」
何とも反応しづらい事を。
創司くんは何を言いたいのかな?
「分かんないかな?えーと、オマエさんはこっちの世界の記憶もあっちの世界の記憶も欠けてる所があるのが不安で、だから何となく俺達と距離を感じる事があるだろう?」
「それは………うん、そうだね」
さっき感じた疎外感なんかそのままズバリだもん。



「俺達が「そんな事ない、大丈夫だ」って言っても粋にとっちゃ大丈夫じゃないんだろ?言い方は悪いけど、何を言っても気休めにしかならないし。言葉だけじゃ何の解決にもならないもんな」
「うん」
「だから…って事になんのかな、だからさ、粋が満足できる答えを見つけるにはあるべき所にあるべき物が戻らないといけないんだ。そうしないと俺達と同じ位置に立った気にならないだろうから」
「うん……」
「まぁ、そういうこった。とりあえずは記憶集めを頑張りマショって感じ?ダーイジョブだって。元々は自分のモンなんだから上手い事いくって」
笑ってそう言う創司くんを前にすると、膨らんでいた不安な気持ちが小さくなっていく気がする。



「そうだね。始まったばかりで心配してちゃ動くものも動かないし。みんな、お世話になるけど宜しくお願いします」
「「お願いしますなんて水くさい!」」
あうっ!2人の声がまた揃った!!
何だかんだ言ってすっごくシンクロしてるしー。
思わず噴き出すと焔くんは私の手を握って言った。
「何度だって言うからね。一緒に、頑張るんだよ」



創司くんが言ってたように私の中には不安がある。
7年前に何があったのか。
私が分からないシイラの記憶は何なのか。
それらが明らかにならないと皆と対等に付き合っていけないような、そんな不安。
全てを知ったら今までの私ではいられなくなるかもしれないという事よりも、皆との関係にバランスが取れていない方が不安に感じるなんて、私がそれだけ皆に依存しているって事なのかな。



「そんじゃ、これ飲み終わったら早速行ってみますか」
「最初は7年前に事件が始まった所……だったわね」
はっきりとした話は聞いていないけれど、私が半年間眠り続け、その後に声が出なくなった原因となった事件があったらしい。
その事件が何故起きたのか、私は何をされたのか、それが凍結した記憶を融かす鍵になるはず。
「………うん、行こう」







「どんな心境の変化?」
「お願いをするのには直接会うのが礼儀かと思ってね」
呼び出されたコーヒーショップで待っていた少年に祐月は笑顔で答えた。
「僕は僕の利益になる事しか動かない。それをアンタはよーく知ってるはずだけど?」
「知ってるよ。だからキミにお願いするんじゃないか」
「ふぅん」と小さく呟き少年の前に座ると、祐月は人のいい笑顔のまま黙り込んだ。



「このままだと彼女はボーヤとくっついちゃうけど。それでいいのかな?」
「別に。今はいいよ」
「今は、なんだ?」
「今の彼女はガキんちょと一緒なのが幸せみたいだし?無理して離す必要ないよ。暫くすれば飽きるからさ」
「飽きるんじゃない、飽きさせるんだろう?」
「…………」
肯定も否定もせずにアイスコーヒーのグラスに差してあるストローを玩んでいる祐月をチラリと見ると、少年は勝手に話し続けた。



「でもさ、彼女にキミの能力は効かないよ。正しく言うとキミは彼女に躊躇なく能力を使えないから効かない……かな?」
「躊躇するような人の心を持ってると思われてるとは驚きだね」
「思っているさ。だってキミは正真正銘の「人」だから」
少年の言葉に一瞬だけ動きを止め、祐月はすぐにゆっくりとストローを回し始めた。



「何か気になった?」
「うるさいなー。もういいや。アンタのお願い、話だけ聞いてあげるから言いなよ」
「どうも。それじゃおいで、ルイ」
少年が手招きをすると祐月の後方から小柄な少女が近づき彼の横で立ち止まった。
「もう……いいの……?」
「隣に座りなさい。さぁ、マドカ。これで話を聞くだけじゃなくてお願いも聞いてくれる気になったかな?」
「こ……この子って……!?」









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