みずのきおく・41(閑話)






2月10日土曜日。
今日は風眞さんと和泉ちゃんと常盤さんと私の4人でお買い物です。
この時期に女の子オンリーの買い物というのは、そうですよアレですよ!



「私、バレンタインのチョコを買いに来たの初めて」
「えっ!?そうなの??」
「ええ、小さい頃は寒くなると体調が悪くなって外に出られなかったし・・・それに、あっちのチョコって私も創ちゃんもあまり好きじゃなかったから」
「西神さんは帰国子女でしたっけ。外国製のチョコレートは口どけや風味が少し違いますから、好き嫌いが分かれますよね」
そうなのですよソレなのですよ。
バレンタインのチョコを買いに来たのですよ!



「うわぁ・・・バレンタインって一大産業だって実感できるなぁ」
「あの中に入って行くのは勇気がいるね」
デパートのバレンタイン特設会場に来てみたわけですが、すっごい女子の数と熱気。
選んでいるうちに1日が終わってしまいそうな雰囲気。
事前に雑誌で買う物の目星をつけてきてよかった・・・



「それでは、30分後に1つ下の階の休憩所で会いましょうか」
「遅くなるようなら連絡って事で」
会場では自由行動じゃないと時間がロスだよね、って事で一時解散。
「粋ちゃんは誰のを用意するの?」
「創司くんと祐月くん。2人とも同じチョコを選んだんだよ」
昨日の昼休みに雑誌を見ながら女子3人で話をしていたら、「僕達にもくれるんでしょ?だったらリクエストを聞いてくれると嬉しいなぁ」という祐月くんの言葉により緊急クラス会開催。(本当に面白いクラスだよね・・・)
で、みくちゃんと九重くんの分を常盤さんが、安積くんと霧島くんと土浦くんの分を和泉ちゃんが、創司くんと祐月くんの分を私が調達する事になったのですよ。
「創ちゃんのリクエストだったら・・・うーん・・・アーモンドチョコとかかしら?」
「さっすが、正解だよ!!あ、ここのお店だ。じゃ、後でね」
付き合いが長いだけあって好みも熟知してるんだ〜。
いやいや、愛の力かな?
こういうのでニヤニヤしてしまう私ってオバチャンなのでしょうか。




※※※※※※※※※※※※※※※





「風眞さんは誰の分を買ったの?」
目的の物を買って集合場所にくると、先に来て椅子に座っていた風眞さんの膝の上に小さな紙袋が。
私が買い物してくるのってそんなに時間がかからなかったと思うんだけど行動早いんだなぁ。
「私と粋ちゃんとお子様達の分」
「私の?あ、ありがとう・・・って、創司くんのは?これから買うの?それとも手作りにするとか?」
「ん?創ちゃんのは後で買うわよ、スーパーかコンビニで」
「あ・・・・・そうなんだ、よか・・・・はい??」
スーパーかコンビニで?
まさか板チョコとか・・・いや、板チョコ美味しいけどね?
「創ちゃん麦チョコが好きなの。デパートには売ってないんですもの」
「麦チョコですか・・・」
うん、デパートで麦チョコってあんまり聞いた事ない。



「すみません、お待たせしました」
「ごめんね〜」
約束の時間よりも5分くらい早く和泉ちゃんと常盤さんがやってきた。
クラスの分にしては量が多いから、個人的な物も買ってきたのかな。
「ううん、全然」
「目的の物はちゃんと買えた?」
「バッチリ!ねねね、ちょっと早いけどランチしに行こうよ。折角女の子だけで集まるんだからってお店のチェックしてきたんだ」
そんな所まで気にしてくれていたなんて、さっすが和泉ちゃん!
心遣いが嬉しいなぁ。
「みんなオッケみたいだね、じゃ、レストランフロアへ行こっ!」



案内されて来たのは釜めしとおそばのお店。
和風の落ち着いた大人の雰囲気。
・・・・・の割には私達くらいのお客さんが多いかも。
「味は勿論ですが、ミニサイズの釜めしとお蕎麦があるという事も女子層にうけるんでしょうね」
「後はデザートが魅力的・・・とかかしら?」
「ビンゴ!インチョと風眞ちゃん鋭いなぁ〜」
「そうなんだぁ・・・すごいなぁ、2人とも」
私みたいにポヤンとお店を見てるんじゃないんだもんね。
デキる女は見る所が違うのね。



「それでは、お願いします」
釜めしは注文を受けてから炊き始めるので時間がかかりますって言われてたんだけど、女の子4人集まって話してると待ってる時間なんて全然気にならなそう。
「インチョと風眞ちゃん、メインもデザートも同じだったね」
「山菜釜めしと粟ぜんざいですよね?」
「えぇ、私たちって好みが似ているのかしら?」
「でも、彼氏さんはあんま似てないよね・・・・・っていい機会だから聞いちゃおっと。2人はそれぞれの彼氏さんの何処に惚れてるの?」
「はい?」
「えっ?」
呆然と固まる2人。
どちらも普段は余裕がある感じだから、これは滅多に見られない貴重な光景だね。
「私も聞きたい!あ、ついでじゃないけど和泉ちゃんも聞きたい!!3人とも付き合いが長い人が彼氏さんなんだもんね。あえて異性として好きになったのはどうしてか知りたいなぁ〜」
「う・・・ウチもなの・・・?」
笑顔(多分、興味津々な顔)で頷くと和泉ちゃんはトホホ顔になった。
話を振っておいて自分も振られるとは思わなかったみたい。



「それじゃ、まぁ、直ぐに終わりそうだからウチからね」
「すぐに終わらなくてもいいですよ?」
「い、いやいや、そんなに話す事ないから・・・・・えーと・・・・・きっかけは小4の作品展なんだ」
「作品展?」
「小学部では4年生以上になると、特待クラス技術系の生徒が作品を発表する機会が1年に1回あるんです」
はぁぁ・・・小学生の時から自分の能力を発表する場があるんだ。
小さい頃からプロの意識をつける為なのかな。
「小学部の時のウチらのクラスって技術系がウチと達弥だけだったのね。だから共同で作品を作ったの、3種類の香りが出る置時計」
焼きたてパンの香りとお花の香りと紅茶の香り・・・だって。
目覚ましに使いたいなぁ、そんな時計。
「誰かの前に出す初めての作品だったからすっごく頑張って・・・それで運よく2位に入賞出来たんだ」
「運なんかじゃないですよ、あれは素晴らしい作品でした」
「ありがと、でさ、嬉しくて喜んでたら直ぐ側で声が聞こえたんだ」
ぎゅっと目を閉じてお茶を1口飲んで話を続ける。
「いくら能力があったとしても分家の女なんて子供を産むだけの道具なんだから、何が出来たって無駄だって・・・・・1つ上の・・・・・本家の男の子だった・・・・・」
「なっ!?」
何だそれ?!
すっごいすっごい失礼だ!!



「名前のある家って親族内で順位をつけたがる人が必ず居るのよね、バカみたいな話だけど」
「1つ上って事は常盤さんも知ってるの?」
「ええ、才能もセンスも当麻さんよりずっと低いのに努力もせずプライドだけは高い方ですよ。今も1つ上の学年に居ますけど、あの程度では大学に上がれないと思うので来年からは学園内で見かける事はなくなるでしょうね」
き・・・・・きっつ・・・・
でもでもそんな失礼な輩ならブリザードな言葉を投げつけちゃって構わないのですよ!!



「大人が言ってた事を真似しただけなのかもしれないけどさ、悔しくて・・・でも何も言えなくて・・・そしたら達弥が物凄い怒って「今の言葉を訂正しろ!」って言ってソイツの顔を殴っちゃったんだ」
「ひゃー・・・あの九重くんが・・・」
「細工師は手が大事だって事は子供だって知ってる。人道的な事を抜きにして人を殴ったりしちゃいけないのに。それだけウチの為に真剣に怒ってくれたんだって思ったら・・・・・まぁ、落ちてましたって話。うわぁ〜、ウチって単純だぁ〜!!」
バタバタと足を動かしてる・・・・
カワユイ・・・・



「相手側が悪かったにしても暴力を振るってしまった事で問題にはならなかったの?」
「うん、大丈夫。子供のした事だからって穏便に済んだんだ。まぁ・・・九重と当麻だったら家の格で九重の方が上だし、達弥は次男だけど本家の人間だからね。大人の事情でお咎めナシになったっていうのが本音。ただ、達弥は家でお兄ちゃんに叱られたらしいよ、殴るなら顔じゃなくて柔らかくて自分に被害が出ないお腹にしとけってさ」
「お兄さん・・・」
何処をどう突っ込むべきか。
「これでウチの話はおしまい。丁度お料理も来たし次に行ってみようね、インチョ?」
「・・・・・・・・はぁ」




※※※※※※※※※※※※※※※





ニコニコ〜っと笑ってお箸を手にとる和泉ちゃん。
和泉ちゃんはミニサイズの鶏釜めしと月見そば。デザートには抹茶パフェが来るみたい。
「食べ専」だからガッツリ食べるんだって。
「わぁ・・・美味しそう!!」
私は五目釜めしとデザートにわらび餅。
お釜の蓋を開けたらふわぁっとお醤油とお米の香りが立ち上がってきて・・・・・あぁ・・・幸せの香りだぁ・・・



「大した話にはなりませんしつまらないと思うのですが・・・あ、皆さん遠慮しないで食べて下さい」
「食べてまーす、ね、ね、早く早く♪」
自分の番が終わったから元気いっぱいだネ・・・
「どこから話しましょうか・・・ええと、冥には二朗くんっていう1つ下の弟が居るんです。産まれた時から身体が弱くて・・・ご両親は二朗くんにつきっきりになってしまい、冥は1歳の時から近所でもあり昔から親交のあった私の家で育てられることになりました」
じゃあ、小さい頃から土浦くんと常盤さんは姉弟みたいなものだったのかな?
でも、2人って姉弟の雰囲気はないんだよねぇ。
「常盤の家は少し特殊で、子供は言葉を話すようになると家の離れに幽閉状態にされます。そこで能力の開花があるかどれくらいの資質があるかを判定され、見込みがあればある程長い間・・・最高で10歳までそこで育てられます。私は幸か不幸か見込みがあったので10歳のぎりぎりまでそこで育ちました」



時々ご飯を食べながら、常盤さんは淡々と話し続ける。
「常盤の能力は先祖代々の植物の知識です。離れには膨大な量の本があり、更に毎日のように新しい本や書類が運び込まれてきました。私はそれを読み続ける事が義務でした。「あいうえお」や「ABC」を習っていなくても理解出来てしまう・・・・・それをおかしな事だとも家族に会えないのが不思議だとも思っていませんでした。朝がきて夜になって、変わらない毎日が過ぎていきました。8歳になったある日、最低限の体力をつける為に日課にしていた庭の散歩をしていると小さな男の子が庭に駆け込んできました。その子が冥でした」
「あ、本当に遠慮しないで食べて下さい。冷めてしまいますから」・・・・との事ですが、あまりの内容に皆動きが止まってしまいましたよ・・・。
常盤さん・・・すごい幼少時代を過ごしてきたんだ・・・



「冥はじっと私の事を見てから庭から駆け出して行き、何かを握りしめて戻ってきて私にそれを手渡しました。それは・・・スズランの花でした。私は彼にスズランの話をしました。彼は黙ってそれを聞いた後、庭から出て行きました。次の日は白いスミレの花を持ってきました。私はスミレの話をしました。毎日毎日、冥は花や草を持って庭に来ました。毎日毎日、私はその植物の話をしました。私には知識がありました、でも、それまで本当の花の色も草の香りも知らなかった事にようやく気が付きました。平坦で白黒だった私の世界は少しずつ変わっていきました。1年半くらい経った初冬に冥は柊の枝を持ってきてこう言いました」


「シュウは白くて小さい花みたい。だから、ヒイラギにも白くて小さい花が咲くんだ」


「白くて小さいキンモクセイのような可愛らしい花でした。私は自分の名前と同じ植物、ヒイラギの花を実際にはその時初めて見ました。涙が出ました。私と近い植物なのに何でもっと早くちゃんと見てあげなかったのだろうと思い泣きました。冥は何も言わずに頭を撫でてくれました」
ふぅ・・・と息を吐いて静かに言葉を続ける。
「冥に会わなければ私は人に聞かれた事を答えるだけの唯の辞書でした。常盤の人間としては優秀であっても本当に生きている人間とは言えませんでした。冥は私に新しい世界をくれました、私を人間にしてくれました。それだけで冥は私にとって特別です。以上です、あまり面白い話ではなくてすみませんでした」
「・・・・・・インチョ・・・ううん、今日からシュウちゃんって呼ばして!!」
「私も、柊さんって呼んでいい?」
「え、えぇ・・・お好きなようにどうぞ」
涙目の和泉ちゃんと私に手を握られて戸惑う常盤・・・いやいや、柊さん。
だってだってこんな話を聞いたら・・・・ううう・・・



「柊ちゃんと土浦くんはきっと似ている所を持っているのね。だから惹かれ合うし心が重なり合う。そういう人に会えたって事はとても幸せね。和泉ちゃんもよ。自分の事を真剣に考えてくれる人、一緒に笑ったり素敵な思い出を作れる人と長い時間を過ごせているのはとても幸せ」
ふんわりと微笑む風眞さん。
綺麗でカッコ良くて・・・
「同性でも惚れる〜!!風眞ちゃんって何でそんなにイイ女なのっ!!」
「本当に素敵な方ですよね。西神さんも水波さんもお友達になれてよかったです」
うぅ〜〜2人の言葉が嬉しい〜!!




※※※※※※※※※※※※※※※





「じゃあ、そんな素敵な風眞ちゃんのお話をデザートと共に・・・どうぞ!」
はぁう!!
和泉ちゃん・・・切り替え早ーーーっ!!
「そうねぇ・・・うーん・・・」
話しづらいのかなぁ・・・・って、あ、そだ!!
創司くんとの昔の話をするって事は、西神のお家での話もする事になっちゃう?!
そ、そりゃ・・・話しづらいっていうか話したくないない!!
「あ、あの、えと、ふ、風眞さんに代わって私が話しちゃおうかな!」
「へ?ど、どうしたの水波ちゃん・・・???」
どうにかして私に注目を向けなければ。
風眞さんを困らせないで、場の雰囲気を盛り下げない為にはそれしかない!



「気を使ってくれて有難う、粋ちゃん。ごめんなさい、皆。今度ちゃんと話すわ」
「いいんですよ、無理しないでも。話しづらい事だってあります」
「そうだよ、ウチこそゴメン。無遠慮だったよね」
「ううん、もう少ししたら色々と整理出来ると思うから・・・・・そうしたら話せると思うの。今度は余計な耳がない時にね、祐月くん?」
風眞さんがチラリと後ろに目を向けると、後ろの席に座っていた人は立ちあがって私達の席の横に来た。
「嫌だな、盗み聞きなんて失礼な事してないよ?」
ニコニコーっといつもの爽やかな笑顔。
爽やかだけど何とも胡散臭い・・・・・・祐月くん・・・・・
「だったら私達に声をかけてくれてもいいはずよね?貴方のお気に入りの粋ちゃんも居るんですもの、合い席してもいい?って言う方がまだ自然だわ」
すごい、すごい、風眞さんってば探偵みたい!



「ねぇ・・・・・シュウちゃん・・・・・ウチ、一瞬で深い眠りに落ちれる香りを調香してみようかと思うんだけど・・・・・」
「そうですか、それは、何かと活用できそうですね。私はちょっとした痺れ薬とか記憶障害を起こす薬の原料になる植物をふと頭の中に浮かべてみました。当麻さんと協力したら何だか有意義な事が出来そうな気がします」
「うん、ウチも同じ事考えてた。ねぇ、円ちゃん・・・・被験者になってみない・・・?」
和泉ちゃんと柊さんの背中から黒い煙のような物体が発生しているように見える・・・
はぅ・・・・・目に見える怒りパワー・・・・・



「うふふ、大丈夫よ。祐月くんが来たのは柊ちゃんの話が終わった後だったから。もしも本当に盗み聞きしようものだったら・・・・・私・・・・・ただじゃおかないもの♪」
今世紀最大の殺気が風眞さんの背後から出現した・・・
スゴスギル・・・
「じゃ、じゃあ、今のところ祐月くんには・・・罪はないんじゃない・・・のかな・・・?」
「ふふっ、水波さんは優しいね。だから大好き」
「水波ちゃんに触るな、黒属性」
「長い夢を見させてあげましょうか、祐月くん」
私に伸ばしてきた手をペシリと叩くと、2人は祐月くんを睨みつけた。
美少女の怖い顔って迫力ある・・・



「はぁ、僕って好かれキャラなのになぁ」
「自分でそういう事をサラリと言える根性がスゴイよね」
「図太いというか厚かましいというか・・・・・何もかも超越して清々しいかもしれません」
2人とも厳しい・・・
「ねぇ、祐月くん。未遂であっても自分の罪を認める?」
同性でもドキっとするような綺麗な綺麗な風眞さんの流し目。
「・・・・・認めるしかないね。じゃ、お詫びとしてここの支払は僕にお任せ下さい、お嬢さま方」
流石の祐月くんも操作されたようデス。







「今日は本っ当に楽しかった!女の子だけでさ、又遊びに行こうね!」
「そうですね、今日はありがとうございました」
あの後、祐月くんは本当にお昼を奢ってくれて、2時間くらいブラブラとショッピングしてから「ランチの時に浮いたお金でお茶しよー」との事でケーキを食べながらおしゃべり〜という実に濃厚な1日だった。
満足満足!



「あ、あのね、水波ちゃん・・・」
「うん?」
駅に向って歩いていた和泉ちゃんはクルっと振り返って私の耳にコソリと話しかけてきた。
「明日か明後日か・・・空いてる?」
「うん、どっちも平気。どうして?」
「お菓子作り・・・教えて欲しいんだ・・・」
お菓子作り・・・お菓子・・・
あ・・・・・
「チョコ?」
かぁっと赤くなって小さく頷く。
か、か、か、かわゆい・・・・・
こんな姿を見たら、九重くんメロメロになっちゃうよぉぉぉ
「じゃあ、明日。家に来てもらってもいい?」
「うんっ!ありがとうっ!!」
ぴっかぴかの笑顔。
何度も何度もしつこいように思うのですが、可愛い・・・



「柊さんはチョコを手作りするの?」
「私は出来ないんです、料理をする事を禁止されているので」
そういえば。
学園祭の時に「頼みのシュウちゃんは料理禁止されているから」ってみくちゃんが言ってたなぁ。
「万が一にも怪我や火傷をしないようにと兄達から泣いて懇願されたんです」
「お兄さん達が・・・泣いて懇願・・・」
「シュウちゃんのお兄さん達って2人ともクールで頭よくってカーッコイイんだよ。それでね、シュウちゃんをすーーーーっごく溺愛してるの」
「へぇぇ・・・・会ってみたいなぁ・・・」
クールで頭よくってかーっこよくって妹さんを溺愛・・・・・
「ええ、2人とも大学院で研究をしているので機会があれば是非。私に仲のいい女の子のお友達が出来たと知ったら喜ぶと思い・・・・・・・」
「どうしたの?何だか険しい顔になっているけど」
「いえ、あの・・・・・・兄達に会っても仲良くしていただけるか心配になりまして・・・」
「当たり前だよぉ!お兄さん達に会えるの楽しみにしてるね」
「そうですか、その・・・・・兄達が歓喜して興奮のあまり異常行動を起こさないようには十分注意しておきますので」
クールで頭よくってかーっこよくって歓喜して興奮のあまり異常行動を起こすかもしれないお兄さん・・・・・
興味津々なのですが。



「それじゃあね、水波ちゃん、後でメールする!」
「さようなら、お2人とも気を付けて帰って下さいね」
駅で2人と別れて風眞さんと歩き始める。
「楽しかったね」
「ええ」
「・・・・・・あのさ、これからも何度でも今日みたいにおしゃべりしたり遊びに行ったりしよう」
「・・・・・・ええ」
返事に少しの間があった。
それはきっと確信が持てない答えだから。
「・・・・・・」
「・・・・・・」



暫く黙って歩いていると、急に風眞さんは立ち止った。
どうしたんだろう・・・?
「素敵ね」
「うん・・・・・」
視線の先にあるのはリュミエルのポスター。
空さんと梨紅さんの笑顔。
「私・・・もっと沢山・・・粋ちゃんと・・・大事なお友達と・・・笑いたい・・・」
ポスターを見つめる澄んだ翠の瞳の端がきらりと輝く。
これは街灯の光?
それとも・・・・・



「いっぱい笑おう。可愛い服の話したり、美味しかったお菓子の話したり、好きな人の話してさ。楽しくて嬉しくて可笑しくて・・・・・いっぱいいっぱい笑おう。あ、でも、風眞さんの笑顔は女の子もメロメロにする威力があるから男の人の前ではちょっと控えないとね。創司くんがハラハラしちゃうもん」
私がへらっと笑うと風眞さんは優しく微笑んだ。
ふぇぇ・・・やっぱり女子をもメロメロにする笑顔だぁ・・・
「ハラハラさせるのも面白いかもしれないわね」
「えぇぇ?!創司くん枯れちゃうよ!!」



ねぇ、風眞さん。
苦しくて、悔しくて、辛くて、泣きたくなったら泣いて欲しいんだよ。
その後にそれを吹き飛ばしちゃうくらい一緒に笑わせて欲しいんだよ。
私達の思い出が全部笑顔に変わるように。









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