みずのきおく・39






東雲の血を引く者が多かれ少なかれ持つ能力は、物事の真実を見る事が出来るというものだ。
僕は今までその能力を伸ばそうと思った事がなかった。
小さい頃から「僕」の記憶が鮮明過ぎて、「僕」の使命を全うさせるまでは僕の事は気にしていられなかったから。
だけど、今の僕はそれじゃダメなんだ。



「ええ、信用して構わないと思います」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・いいだろう」
暫くの沈黙の後、父さんからOKが出て少しほっとする。
能力を伸ばす訓練を始めて3ヶ月。
年が明けてようやく最終試験をクリアできた。



「能力自体はもう1人前と言っていい。後は判断力・・・これは経験を積むしかない。リスクを理解した上でどう動くかを考えなさい」
「はい、ありがとうございます」
西神茉莉との問題が起きてから、僕は東雲の人間である事を改めて認識させられた。
僕は東雲の人間としても生きていかなくてはならない。
そして、それを自覚しているのであるならば僕は東雲の血縁者に認められるだけの能力を持たなければならない。



「やる気になれば数ヶ月で仕事を任せられるな。親の贔屓目ではなく、東雲の目の判断だ。誰にも文句は言われないし言わせないさ」
「そうですか・・・では、やる気にならないといけませんね」
「そういう事だ」
母さんとメチャクチャな婚約と結婚が出来た事も、僕の特殊な出生の事も、父さんの独断だったけど東雲の人間は誰も反対はしなかったらしい。
代表に異を唱える者は東雲に異を唱える者とみなされる。
それくらい東雲の代表は一族の中でも絶対の存在。
父さんは僕とほとんど変わらない年齢で東雲の誰もが認める代表になっていた。
元々の能力が高かったせいもあるけれど、幼少時代から東雲の人間である事を自覚してそれなりの事をしてきたからその地位を務められたんだ。



「この能力は万能ではない」
「はい?」
コーヒーカップをテーブルに置いて、父さんは珍しく暗い顔をした。
「自分にいい選択は他の誰かには逆の選択になり得る。私が空を選んだ事によって風眞ちゃんが心と身体に酷い傷を負う事になってしまったようにな」
「・・・・・」




※※※※※※※※※※※※※※※





僕が姉さんの存在を知ったのは3年前。
留学先の転校手続きに一時帰国した時だ。


「おねえちゃんはいつかえってくるの?」
「おねえちゃんはおかあさんにあいたいんだよ」


双子達の言葉に泣き崩れる母さん。
そんな母さんを見て泣き始める双子達。
偶然見てしまったその光景が気になって父さんに聞いてみると、いずれ分かる事だからと僕達に父親が違う姉さんが居る事を教えてもらった。
10歳の誕生日の時だといって見せてもらった写真には、青白い肌や痩せた身体が酷く不健康だったけれど、右の目だけは母さんと同じ澄んだ綺麗な翠色をした女の子が写っていた。

「この子は大人の事情でお母さんと会えないんだ。お前と1つしか違わないのに心と身体に酷い傷を負っていて、それでも懸命に生きている。私は彼女に・・・・・何をして償えばいいのだろうか・・・・・」



正直言って、父さんの話を聞いても姉さんに対する興味は湧かなかった。
当時の(最近までのと言った方が正しいか)僕は「僕」の事が最重要事項で他の事に目を向けられなかった。


あの時から3年経って僕と姉さんが初めて直接会った時・・・粋さんの家に招待されて偶然に会った時・・・僕達はこっちの世界の姉弟として直ぐには打ちとけられなかった。
門の世界では共通の目的を持った仲間だと分かっていても、心の何処かでお互いを避けていた。
だけど、粋さんを通して共通の友人として親しくなっていって、そして、僕と姉さんが出生の秘密で心が潰されそうだった時に粋さんに救われた事で姉弟としての絆を深められたんだ。



「私は私の選択を後悔してはいない。だが、正直言うと風眞ちゃんに会うのが怖かった。彼女は私の事を恨んでいても構わないと思っているのに、目の前に立たれたら私は平静を保っていられるのか不安でたまらなかった」
「姉さんは初めから父さんを恨んでなんかいませんよ。北杜さん親子が小さい時から父さん達の事情を理解できるように説明してくれた事と、姉さん自身が芯の強い人だったからでしょうね」
姉さんが西神でどんな目にあっていたのか詳しく知ったのは最近の事だ。
左目の失明の原因や今でも服に隠れた所に火傷の痕が幾つも残ってると聞いた時は、西神の女帝にも同じ目に合わせてやりたいと思った。
僕に話をしてくれた北杜さんが西神に抱く感情が分かるから何も言えなかったけれど。



「長い間ずっと苦労をさせ続けていたのに、風眞ちゃんは今度も自分を犠牲にして空やお前を助けようとしている。創司くんがセーブしてくれているお陰で目立った異常は見られないようだが、あの能力を連続して使うと健康な身体であっても酷い疲労感と視神経の酷使による頭痛に襲われるらしい。彼女はきっと創司くんに止められるギリギリの所まで頑張っているんだろうな」
「だから・・・僕も頑張らなければならないんです。姉さんの気持ちは有難いけれど僕達は姉弟だから・・・姉さんだけに全てを背負わせない、背負わせるわけにはいかないんです」
「少しは大人になったじゃないか」
「子供に出来る事は直ぐに限界が来てしまいますから」
時計を見ると午後7時。
一礼をして執務室から出て携帯をチェックしてみる。
今日から特待組も登校だから何かあったら北杜さんから連絡が来ているかもしれない。





初日から少し面倒があった。
お前さんのファンの間で粋の変な噂が広がっていたんだ。
あ、でも、特待の皆が協力してくれたお陰で今日中に収まったし粋は無事だから心配しなくていい。
直接的に粋を狙ってきたって事は、あのお嬢さんも年末の件があってから焦り始めたんじゃないかと思う。
考えすぎかもしれないけれど東雲と西神の親族会議が近々あるかもしれない。
気にはしておいた方がいいだろうな。


心配しなくていいとは書いたけど、きっと心配してると思うから今日だけ特別。
俺の携帯に9時に電話してごらんなさいな。
それじゃ。





暫く静かにしてると思ったら粋さんに手を出しやがったのか。
粋さんは無事だったっていうけど嫌な思いをしたに違いない。
あの女・・・滅してやりたい・・・



親族会議・・・・・早くて今月遅くても3月までにはあるだろうな。
それまでにあの女の真意が分からないと辛い。



ああ、もう、色々と考えないといけない事はあるけれど何より今は粋さんが気になる。
北杜さんの携帯に9時に電話って何でだろう?
北杜さんの事だから意味がない訳ないけど。
まーさか粋さんが出ちゃうとか・・・?



「・・・・・」







急いで帰ってやる事やって部屋に籠って準備万端。
8時55分。
どうしようすごいどきどきするすいさんでたらちゃんとはなせるかないやなめにあわせてごめんねっていわないとこのまえはすきっていってくれてうれしかったっていわないとことしはじめてはなすからあけましておめでとうっていわないとどうしようはなしたいことがまとまらないまとまらないまとまらない



【訳】
どうしよう
すごいドキドキする
粋さん出たらちゃんと話せるかな
嫌な目に合わせてごめんねって言わないと
この前は好きって言ってくれて嬉しかったって言わないと
今年初めて話すから明けましておめでとうって言わないと
どうしよう話したい事がまとまらないまとまらないまとまらない



自分でもどうしたと思う程にドキドキしている。
僕ってこんなにピュアピュアハートの持ち主だったのか!
自分でもびっくりどっきりだ!!



く、9時・・・・
時計が変わった瞬間に北杜さんの番号を選択。
コール音が3回鳴って、誰かが出た、出た、デター!!



「はい」
「・・・・・・・・・姉さん」
「何よ、そのがっかりした声は」
うん、いいの。
何となくそんなオチじゃないかとも思っておりましたからね。



「いえ、別に。それよりどうしたんですか」
『アイちゃん、ちゃんと髪をとかさないとだめよ!あ、ごめんね電話中に・・・』
へ?!
な、何故に粋さんの声がするですか?!
「いいのよ、大した電話じゃないから。それに、そろそろ切ろうかと思ってたし」
「なっ!!」
近くに粋さんが居ると僕が分かった途端に電話切る言うですか、このお姉さまは!!
何ですか、何ナリか?



「なーんてね、びっくりした?」
「びっくりというか・・・どういう事か説明して頂きたいのですが」
「今晩は粋ちゃんのお家にお泊りに来てるの。3人で1つのお布団で寝るのよ、うふふ☆」
「うふふ☆って貴女・・・」
相変わらずよく分からない人だ・・・



「・・・・・今日の話は聞いたわ。彼女が何をしてくるか分からないから、今晩は私が粋ちゃんの傍に居た方がいいって思って。余計な事かもしれないけれど念のためね」
「あ、そ・・・うですか。ありがとうございます」
「別に貴方にお礼を言われなくてもいいわ。粋ちゃんは私の大事なお友達だもの、あまりフザけた事をするようなら・・・・・ってつまらない話は止めましょう。粋ちゃんに代わるわ」
「え、え、えぇっっ?!」
な、な、何ですとぉぉ!!!
きゅ、急過ぎるんですよこっちはそれなりにびしっとびしーーーっと話したいのでこ、こ、こここころの準備なんぞを・・・



「もしもし・・・?」
「・・・・・・・・」
「あの・・・・・どなたですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
粋さんの声だぁ・・・
電話越しでもか、かわゆい声ですよぉ・・・
『風眞さん、誰も出ないけど・・・・・切れちゃってるのかなぁ?』
「き、切れてないです。僕です!!」
「ほむらくん?!」
声裏返っちゃったし。
うわぁ、かっこよさの欠片もないじゃん・・・



「ごめんなさい、急に」
「ううん、全然。どうしたの?電話してきても大丈夫なの?」
「今日だけ特別って、北杜さんが。あ、あの、今日・・・僕のせいで迷惑がかかったみたいですみませんでした。嫌な思いをしたでしょう?」
「私は大丈夫だよ。クラスの皆が助けてくれたし、ちょっと怒鳴ってスッキリしちゃったりして・・・」
「怒鳴ったんですか?粋さんが?」
「いや、まぁ、その・・・怒鳴ったというかキレちゃったというか・・・ははは・・・」
ほんわかふわわ〜んな粋さんが怒鳴るとかキレるとか・・・一体何があったんだ??
益々もって気になる・・・



「本当にごめんなさい。僕がもっと気をつけないといけないのに」
「もう、皆、私の事を過保護にし過ぎだよ。こう見えても一番年上なんだからね?」
「あはは、粋さんは可愛いから年上とか関係なく・・・年・・・あ、もうそろそろ誕生日じゃありませんか?」
「うわっ、本当。じゃあ暫くは焔くんと3歳差なんだ?うぇーん、ショックだぁ・・・」
今日が1月15日だから・・・8日後か。
バタバタしてるけどお祝いくらいあげたいなぁ・・・
「欲しいものとかありますか?今からだったら結構何でも準備出来ると思うんで」
「・・・・・・・」
「粋さん?」
「あ、えと・・・ダメ、未だ我慢しておく。だから、気持ちだけで十分だよ」
「え、え?そんな遠慮しないで下さい」
「・・・・・・・・」
「言ってみるだけでも、ね?」
「会いたいの。少しの時間でいいから・・・・・焔くんと会いたい。でも、それが難しいって事は分かってるから、我慢できるよ。今が1番大変な時なんでしょう?だからね、私の事は気にしないで頑張って。全部終わったら又ケーキ食べに行こうね?」



危なく携帯を落としそうになった。
嬉しすぎて手が震える・・・
「僕も・・・会いたい・・・です」
「焔くん・・・・・」
「何とかしてみます。大好きな粋さんのためだから」
「嬉しい・・・・・私も焔くんのこと、大好きだよ」
「うん・・・それじゃあ、えと、名残惜しいけど、おやすみなさい」
「おやすみなさい」



携帯を切ってベッドに倒れる。
やばい・・・やばい、身体の震えが止まらない。
大好きだって、粋さんが僕のこと大好きだって!!
ゴロゴロとベッドの上を転がる僕は傍から見たらかなりおかしいだろう。
いや、もう、おかしくても何でもいいって!
だって、だって、嬉しさが溢れちゃっているんだもの。
寧ろ、一体どうしたのかと聞かれたいですよ。
そしたら、粋さんと僕の出会いから今までの愛の軌跡を少々の脚色付で語っちゃいますってば!



「・・・・・・・あと8日か」
起き上がってスケジュール確認をしてみる。
明日から登校し始めて、学校行事は暫くナシ。
会社の予定は・・・20日からバレンタインのイベントが少しずつ始まるか。
「イベント・・・・・」
8日あったら何とかなるかもしれない。
・・・・・じゃなくて何とかしよう。
父さんと姉さん・・・2人の力を貸してもらわないと。
僕は急いで企画書の作成に取り掛かった。







「すいちゃんは、ほむらさんがだいすきなのね」
「少し前まで私の方が好かれていたのに、寂しいわ」
「え?え?え・・・と・・・」
電話を切るとアイちゃんと風眞さんがすっごい笑顔で私の両脇に立っていた。
あ・・・ああ・・・思い出すと恥ずかしい事を言ってたような・・・
そして、バッチリ聞かれていたご様子。



「だいすきっていえるひとがいるってしあわせね」
「そうね、大好きって言えて大好きって言ってもらえたらそれはとても幸せなことね」
「うん・・・そうだね、幸せだね」
3人でお布団の上に転がって黙って天井を見上げる。
幸せ・・・そう、幸せだ。
毎日会えなくたって、毎日話せなくたって、好きな人に好きだって言ってもらえる私はすごく幸せだ。



「ほんとうにほんとうのことはじぶんのなかにあるのよ、だからね、もしもまようことがあったらじぶんのこころにきいてみるのよ」
「アイちゃん・・・?」
「わすれないで・・・」
『本当に本当の事は、自分の中にある』
前に双子ちゃん達も言ってた。
本当の事って・・・何?



「眠っちゃったわね」
「・・・・・アイちゃんって時々不思議なの。私の気持ちをすごくよく理解してくれるし、言う事も大人っぽいし。私の方が守ってあげなくちゃいけない立場なのに、沢山守ってもらってる気がするの」
「そう・・・・・いい妹さんね」
「自慢の妹。風眞さんにも3人も素敵な弟さんと妹さんがいるね」
「ええ、可愛い弟と妹。ふふっ、私達って幸せなお姉ちゃんだと思わない?」
「思う。私、アイちゃんのお姉ちゃんでよかった」
私と風眞さんの間で眠るアイちゃんのサラサラとした髪を撫でると、ほんの少しだけ口元が緩んで笑ったように見えた。



※※※※※※※※※※※※※※※




深夜、粋が熟睡をしている頃。
「・・・・・・起きてる?」
「・・・・・・はい」
「貴女も使命を持ってこの世界に居るの?」
「私は、粋とシイラの為に在ります」
「・・・・・・ねぇ、貴女がこの世界に在る理由はそれだけじゃないのよ。貴女は沢山の人に愛されてる子、粋ちゃんの大事なかけがえのない妹なのよ。だから、この世界の貴女も大事にして」
「お言葉を返すようですが、風眞様も皆様にとってかけがえのない方です。貴女を失うと粋が哀しみます。 お願いです、無理はなさらないで下さい」
「・・・・・・・私達って、似てるのね」
「・・・・・・はい」
再び静寂が訪れる。



※※※※※※※※※※※※※※※




「水波ちゃん、東雲の新しいブランドの広告見た?!」
「え・・・・・と、いや、まだ・・・・・」
そうだ、昨日からポスター貼られてるんだった。
昨日はゴタゴタ続きで駅まで見に行かれなかったんだよね。
「すっごい可愛い子供達のと、後、聞いて驚いて・・・東雲くんがモデルやってるの、すっごい綺麗なんだよ!!」
「そう・・・なんだ・・・」
ど、どう反応すればいいのかな。
私も見たいなぁ〜とか・・・う・・・白々しい・・・



「・・・・・・・水波さん・・・・・だよね?」
「へ?!」
何、何、何、何??
たった1日でバレ・・・いやいや、バレるわけないない!!
「だから、あの子供達の1人って水波さんの妹さんだよね?」
「そうなの?」
「あ、はい。そ、そうなの・・・です」
何だ、アイちゃんの事か。
驚いた・・・



「この子やろ?みなみちゃんとちょっとタイプちゃうけど、めっちゃかわええや〜ん」
九重くんが机の上に広げた雑誌には見開きでティンクルの広告があった。
仕上がりはこうなってたんだ。
4人ともきゃわいい・・・
「水波さんにはフラれちゃったけど、今からアプローチしたらこの子に彼女になってもらえるかな?」
「残念。アイちゃんにはもう素敵な彼氏さんがいるのです。この男の子ね」
「あれ?この子ちょっと東雲くんに似てる?」
「焔くんの従兄弟だから。あ、双子ちゃんは焔くんの弟さんと妹さんなの」
「この年でもう将来は美形確定やん。東雲の血筋ってすごいわぁ」
確かに確かに。
あと5年後が楽しみな子達だなぁ。



「次のページは・・・これこれ、東雲くんは当然として相手がねすっごい綺麗な子なの」
「2人は同時に撮影しておらんようやけど、CGとはちゃうな。今の技術ではここまで出来ひんもん。それに・・・」
「別撮りだけどお互いが通じ合ってるように見えるね。王子様って気が多いタイプには見えないんだけどねぇ、水波さん?」
「な、何で私に・・・同意を・・・求めるの・・・でしょうか・・・」
相変わらずの爽やか笑顔の祐月くん。
何か勘づいちゃったとかじゃ・・・ない・・・よね??



「ふふっ、僕達の仲じゃない。隠し事なんて寂しいな」
「「話し方がエロい」」
「あははっ、ハモんないでよ夫婦漫才。で、本当の所はどうなのかな?このままこの子に美久が恋しちゃったら哀しい結果になっちゃうし、それは友人として無視できないでしょう」
「あ、あう・・・・・」
みくちゃん出してきた!!
祐月くん、黒属性全開だ・・・



「朝からスイちゃんに絡むな、エロ魔人」
「あ、おはよ。ミクも駅で見たでしょ、この広告」
和泉ちゃんが指差した雑誌のページを見ると、みくちゃんは顔を赤らめた。
ど、どうしたのですか?!
「この子、スイちゃんでしょ?いつもと少し違うイメージだったから昨日の帰りに見て驚いたよ」
「え?!そうなの、水波ちゃん??」
「意識して見れば・・・せやね、みなみちゃんや」
「ふふっ、愛があれば真実が見えるんだよ。僕も直ぐ分かったからね?」
「え?もしかしてバレたらいけない事だったとか・・・?」
「は・・・・・はい・・・・・」
1日でバレました。
どうしましょうかね・・・・・



「この美少女の友達だ〜って言いまわりたいのは山々だけど、黙ってるよ。守秘義務ってヤツでしょ?」
「仕事には付きもんやからなぁ、しゃーないわ」
事情を話すと皆黙っていてくれると言ってくれた。
特待組は家の関係で大人達と仕事をする機会が多いから、そういう部分は詳しいみたい。
よかった。
「この子が水波さんだっていう事を秘密にしていればいいんだよね?じゃあ、違う噂は流してもいいって事かな?」
「いいんじゃない?嘘ではないし、別に誰の迷惑にもならないだろうし」
みくちゃんは祐月くんの言いたい事の意味が分かるみたい??
何だろう、どんな噂なの?



「昨日の件は僕もちょっと頭にきてるんだ。僕が居ない所で噂によって僕の友達が傷付けられるのって許せないんだよね。相手が男でも女でも大人でも子供でも・・・」
「???」
「幸いな事に今日は王子様が登校しているらしいし・・・・・ふふっ、僕の本気を見せてあげる。惚れ直してくれてもいいからね、水波さん」
「「「惚れ直すも何も1度も惚れておらんわい!!!」」」
私の手を握ろうとした祐月くんにビシッと突っ込みを入れる3人。
面白い程揃うものです・・・



※※※※※※※※※※※※※※※




「焔さん、貴方、何かしたわね?」
「別に何もしてませんよ」



『東雲の広告見た?』
『焔さまの本当の恋人ってあの子らしいわよ』
『だって、茉莉さんの前であんな表情した事ないじゃない』



「こんなに早く広範囲に噂が広がるなんて、有りえないわ」
「知りませんよ。大体、僕が何かしたとしたら傍に居る貴女が気がつかないわけないでしょう。きっと広告を見た人が勝手に推測して話をしたんでしょう。噂とはそういうものだって、貴女の方が詳しいと思ってましたけど」
何処から広まったのか分からない。
昼休みが終わった時には女子を中心に噂が浸透していた。
広告の子は誰なのかというよりも彼女が僕の恋人だという話の方が興味があるらしく、粋さんに余計な詮索が及んでいなくてよかった。



「・・・・・否定しなさいよ」
「それは出来ません。ルナソルのイメージキャラクターの設定を崩すわけにはいきませんから。僕は唯の中学生じゃなく東雲の人間です、少しでも会社の不利益になる選択はしません」
彼女が焦っているのが分かる。
同じような噂が流れれば、記憶操作によって作られた噂は揺らぐ。
東雲の為に否定はしないという僕に対して彼女は強く言う事が出来ない。
それによって、僕と彼女の偽りの関係が噂によって崩されていくのを止める事も出来ない。



「私をバカにするのは許さない。私は選ばれた人間なんだから・・・私は無能なんかじゃないんだから・・・」
「席に戻ったらどうですか、午後の授業が始まりますよ」
何も言わないけれど、僕達の間の空気を周りが感じとっているのが分かる。
揺らぐ、崩れる、壊れる・・・
ようやく流れが変わってきた。
そろそろ・・・



「反撃開始だね」









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