クリスマスイブの次の日から、私とお子様達は一般発表向けの撮影をすることになった。 メイクと衣装の着つけは風眞さんで、撮影は聖さんが担当する。 風眞さんがする公式での初めてのお仕事。 頑張らないと!! 「そんなに硬くならなくていい」 「あ、はい、すみません・・・」 頑張らないと!!・・・とは思っていてもなかなか上手くいかない私。 お子様達の撮影が順調ですごく早く終わったのを見ていたせいか、自分のダメっぷりにションボリ。 夏の時は上手くいったのにな・・・ 「仕方ないわよ、相手が目の前に居ないのにやれって言われてるんだもの」 風眞さんが服を直しながら慰めてくれる。 あぁ・・・・・そんな優しい風眞さんのために役に立ちたいのに。 「ううん、皇さんだって聖さんだって出来ない事は言わないよ。上手くいかないのは私のせいだって分かってる」 焔くんの気持ちに上手く答えを出せなかった私。 焔くんが困っているのに傷つける事を言ってしまった私。 ずっと後悔してた。 あの時に答えを出せていたら、あの時に正面から話せていたら何かが変わっていたかもしれない。 伸ばした手の先に焔くんが居てくれたかもしれない。 隣でいつも笑って話を聞いてくれてたかもしれない。 信じて欲しいという言葉、信じたいという気持ち。 正直、後悔の中でそれらが揺らぐ時もあった。 「聖さん、もう1度お願いします」 カメラの前に戻って深呼吸を1回。 「未だ、私のことが好き?」 その問いに迷いなく「はい」と答えてくれたのがすごく嬉しかった。 「私も、焔くんのことが好き」 小さく呟いて目の前に居るはずの相手・・・焔くんを想う。 「好きだよ」 「遅くまで待っててもらってごめんね」 「だいじょうぶよ。きれいなすいちゃんみてるのたのしかったから」 撮影が終わって帰る道。 寒さで吐く息が白く、耳が痛くなる。 アイちゃんが風邪ひかないように気を付けてあげなくちゃ。 「すいちゃんとほむらさんはすきどうしなの?」 「あ・・・・・いや、ええと、うん・・・好き同士・・・」 何を真面目に答えているのでしょうかね。 恥ずかしいんだけど・・・ 「よかったね。すきどうしってうれしいね」 「そうだね、嬉しいね」 ニコニコ笑って喜んでくれるアイちゃん。 可愛くて優しい妹。 すごく歳が離れているのに時々それを忘れてしまうくらい精神的に大人。 ・・・・・いや、私が精神的にお子様って事? 「だからね、すいちゃんはじしんをもっていていいのよ。ひとがなんていっても、ふたりのきもちがいっしょならむてきなのよ」 「うん」 「それにね、わるいひとからはアイがまもってあげる。アイはすいちゃんをまもるためにうまれてきたんだから」 「んん??」 今、何か不思議なことを言いませんでしたか? アニメか何かに影響されたのかな・・・ 年が明けて、学校が始まったのは15日。 特待組のほとんどが家の都合で年末年始は忙しいから、選抜組よりも1週間休みが長くなってるらしい。 「アイ、こうこうまでついていくよ?」 「大丈夫だよ、アイちゃんは幼稚園が始まる時間まで皆と遊んでて」 「でも・・・・・」 今朝からアイちゃんの様子がおかしい。 いつもだったらお子様達だけで学校に行くのに、今日は「すいちゃんもいっしょにいこう」って手を離さなかったし、今だって高等部までついて行くって言うし。 昔っから勘がいい所はあるけど、何を心配してるんだろう? 「うーん、じゃあ、高等部の門に入るまで見ててくれるかな。ユウキちゃん、ノゾムくん、紅蓮くん、待っててもらってごめんね」 「「だいじょうぶ」」 「気になさらないで下さい」 ああ・・・・・何て可愛いお子様達。 「じゃあ、行ってくるね。アイちゃん、心配してくれてありがとうね」 「きをつけてね・・・」 「うん」 何度もお子様達を振り返って高等部の門へ。 アイちゃん、どうしちゃったのかなぁ。 怖い夢でも見たのかな・・・ 「水波さん」 「は、はい?」 校舎へ入る直前。 知らない女の子に名前を呼ばれ立ち止まる。 聞き慣れない声・・・だけど聞いた事がある・・・? 「ちょっと話をしたいんだけど、いい?」 「うん・・・10分以内で終わるなら」 「・・・・・じゃあ、放課後に椿組に1人で来て。逃げようって思っても無駄だから」 「は、はぁ・・・・・わかった・・・」 何だか古典的な言い様だなぁ。 それに、あんまりいい話じゃなさそう。 むぅぅぅ・・・・・でも、行かないとマズイだろうなぁ。 しかも10分じゃ終わんないんだぁ・・・ 「水波ちゃん、大丈夫?!」 「あ、和泉ちゃん。あけましておめでとう〜」 「おめでと・・・・・って、ちがーう!!」 教室に入った途端、和泉ちゃんがすっごい早さで駆け寄ってきた。 何事でしょうか・・・ 「選抜の子に絡まれなかった?」 「選抜の子か分からないけど、知らない子に話したいって声をかけられたよ」 やっぱり・・・って言って難しい顔してる。 やっぱり? 「何かね、休み明けの校内の一部で水波ちゃん有名になってるんだよ」 「有名・・・?え、私、何か目立った事したかなぁ??」 一瞬モデルの事かと思ったけど、あのメイクでバレるわけないし・・・ 一般に発表されるのは15日からだし・・・って今日か! わわわわわ! 駅に行ったらポスターあるかなぁ? 何か怖いけど見てみたいな・・・ 「え?え?ぼーっと考えちゃって、思い当たる事あるの?!」 「う、ううん、全然。何で有名になっちゃってるの?」 選抜の子なんて風眞さん以外知らないもん・・・ 関わりもないし、何で私の名前知ってるのかも不思議。 「東雲の王子さまとその彼女の仲をやっかんで、彼女に酷い嫌がらせをしてるんだって」 「は、はぁぁ?!そ、そんな事・・・」 な、ななななな何という話ですか?! 嫌がらせも何も、学園祭以来全然彼女に会ってないのに!! 「するわけないって分かってるよ。彼女って文化祭のあの子でしょ?あの子が水波ちゃんに嫌がらせするなら分かるけど・・・・!!」 「ストーップ。当麻さん、話がズレてるよ。とりあえず落ち着いて話をしよう」 桜組の1限は常盤さんが先生にお願いしてくれてHRに変更してもらえた。 自由な学校で良かった! 「噂が広がり始めたのは先週の木曜日みたいだね」 「何でそないな半端な時期なん?」 「噂を流すのが早過ぎたら粋が現れた頃には噂の旬が終わっちまう、遅過ぎたら広がる前に俺達が何とか収拾させちまう。先週の木金で広がって土日で尾ひれが付いて、噂の盛り上がり最高潮が今日、特待組の始業日ってこと」 「流石、北杜先生。そういうことだよ、達弥」 そんなに計算して噂が広がってるなんて・・・ 気持ち悪い。 「東雲くんは何も言ってないの?」 「王子さまは新学期が始まってから未だ学校に出てきていないみたいだよ」 「でも、何で水波なんだろ。別に東雲と接点ないじゃん」 「最近は、でしょう。以前は親しくしてましたよね?」 俯いて頷くと、場の空気の重さが伝わってくるようだった。 新しい年の始業日なのに、こんなの嫌だな・・・ 「推測なんだけど」 暫くの沈黙を破ったのは、みくちゃんだった。 「本当に心が通じあっているのは東雲くんとスイちゃんなんじゃないのかな?東雲くんとあの子は作られた恋人。噂を広げた人は何かのきっかけで偽りの人間関係が崩れてしまうのを恐れたんだと思うな」 「みくちゃん・・・・・」 「僕の推測はどうだろう?」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・美久って、ドMだね」 ・・・・・今、祐月くんの適応と同調という能力を疑いました。 「当たってると思うよ。そこから導き出される答え、噂を広げた犯人は・・・・・」 「あの子だよね!!許っせないぃぃぃぃ!!」 怒り心頭で教室から飛び出しそうになる和泉ちゃんを九重くんが止める。 本気で怒ってくれるのは嬉しいけど危ないよ・・・ 「まーった、ちょい待ちーや。話は未だ終わっとらんやろ。んで、これからどないすりゃええんや?」 「今日は〜1人にしちゃ〜だめ〜かも〜?」 「そうですね。とりあえず今日だけは水波さんを1人にしないようにしましょう。こんな訳の分からない言いがかり、明日には収拾させますからそれまで不自由でしょうが我慢して頂けますか?」 ・・・・・と、ものすごくものすごーく有難い事を言ってくれたのは嬉しいんだけど・・・・・ 「1人で行くって約束しちゃったの?!」 「ご、ごめん・・・こんなに話が大きいとは思わなくて・・・」 「そんなの無視すりゃいいじゃん。どーせ大した話じゃないって」 「そういう訳にはいかんよ。行かんかったせいでみなみちゃんの立場が悪なっても、俺達は弁護出来ひんやろ」 約束をしたのは私。 約束を守らなかったら、その責任を負うのは私。 だから、皆は何も言えないし皆に迷惑をかける訳にはいかない。 「ちゃんと行くよ。勘違いで責められても私が我慢すればいいだけだし、大丈夫だよ。私、何も悪い事してないもん」 「・・・・・何も悪い事をしてないとか、あの子達には関係ないんだけどね」 「みくちゃん・・・?」 どうしたんだろ。 すっごい険しい顔してるけど・・・ あの子達・・・あの子達・・・って・・・ 「水波さんは約束を守って行った方がいいね。おかしな事が起きないようにはしておくから安心して」 「ありがとう、皆、ごめ・・・・・」 すっと和泉ちゃんの指が私の口に押しあてられる。 「「ありがとう」だけでオッケーじゃない?」 「うん・・・・・・ありがとう」 放課後。 「約束」通り椿組に行くと5人の女の子達が私の事を待っていた。 5人・・・・・ なーんか引っかかるなぁ・・・ 「お待たせしました。話って何?茉莉さんに嫌がらせしたとかいう作り話の事じゃないよね?」 「作り話って・・・」 「貴女、自分でやっておいて何を言ってるの!?」 「じゃあ、教えてくれる?私は茉莉さんに何をしたの?私が気付いていないだけで茉莉さんに嫌な思いをさせてしまったのなら茉莉さんにちゃんと謝るもの」 1.相手に一方的に話をさせない。 2.先に話の道筋をこちらから作ってしまう。 話をしに来る前に祐月くんからアドバイスされた事。 『相手は噂に動かされているだけ、つまり、何が本当なのかは分かっていない。水波さんがあの子に何をしたのかを突っ込んで聞けば、辻褄のあった答えを出せないだろうね。その事がおかしいと相手が気がつけば、話は有耶無耶になって終わると思う。だけど・・・』 「何かなんてどうだっていいのよ。貴女が悪い事したっていうのには変わりないんだから」 どうだっていいってきましたか。 あーあ・・・ 『相手が人の話を理解出来るの子なのかっていうのが問題なんだけどね』 「途中編入のくせに生意気なのよね」 「ちょっと目立つ見た目してるからっていい気になってるんじゃないの?」 ありゃりゃりゃ、初めて話す相手なのにすごい言われよう。 自分では気にしてなかっただけで浮いてたのかな・・・ 「大体、特待組の人って胡散臭い。テストもないし授業も適当なのに進学出来るし。アタシらがテスト前に苦労してる時、遊んでばっかいるじゃん」 「ちゃんとテストしたら絶対に点数ヤバいよね、あいつら」 ちょ、ちょっと待ってよ。 話が全然ズレてきてるじゃん!! 私の事はどうでもいいとして皆の事を言う必要はないよね?? 「特待組の人は胡散臭くないし、遊んでばっかなんかいないよ。自分の能力に誇りを持ってて一人前になる為に一生懸命やってるもの。皆の事をよく知りもしないで勝手な事言わないでよ」 「よく知ってるわよ。貴女と仲のいい「みくちゃん」の事は特に・・・」 「みくちゃん・・・・・あ!!」 あ、あ、あ、思い出した!!! この子達、クリスマス会の時にみくちゃんに話しかけてきた子達だ。 謝るとか何とか・・・・・ 「胡散臭いというかオカシイの筆頭だよね、帝って。家のしきたりだとかいって女装するなんて今どきアリエない」 「男の格好に戻ってもオネエ言葉使ったりしてさ、しきたりじゃなくて実際オカマだったんじゃないの?」 あははは・・・と笑う女の子達。 今、私の中で何かがプチっと切れちゃいました。 もういいです、我慢しません。 言っちゃいますやっちゃいます。 「・・・・・・人の事を見た目とか話し方でしか評価できないなんて、貴女達ってすごく心が貧しいんだね」 「な・・・・」 「1対1で話し合うことも出来ないし、自分自身の考えも持ってない。此処に私を呼んで集団で責めれば泣いて服従するとでも思ったの?作り話を流したいなら流せばいいよ、私は自分を信じているし信じてくれる友達が居るから怖くない」 「私の父が何をしているのか分かってないんでしょう。無名のくせに意見なんか言える立場じゃないのよ、貴女」 5人の中心に居る女の子は物凄く怒ってるみたい。 でも、私だってすっごーく怒ってる!! 「初対面なのにそんなの知るわけないじゃん、言いたい事は言わせてもらうよ。目の前で友達の悪口を言われて黙っていられないもの。みくちゃんはすごくすごく優しくて心が綺麗で頑張る人なのに、汚い言葉で罵って笑うなんて許せない。ちゃんと彼に謝ってよ!!」 「話がグダグダになっちゃったし、そろそろ終わりにした方がいいんじゃないの?」 ガラっと教室のドアが開いて、桜組の皆が入ってくる。 ど、どうしたんだろ・・・ 私の声、大きすぎた・・・かな・・・かも? 「あ、アナタ達は関係ないでしょ。勝手に入ってこないでよ」 「関係あるよなぁ?」 「特待組の人は胡散臭いんだっけ?ウチらと絡みないのによく言うよね」 「ふふっ、僕達の実力が気になるならテストしてみる?」 「どの教科も〜僕達の〜誰にも〜勝てないよ〜?」 女の子達の顔が青ざめていく。 「そ、そんな事言ってな・・・」 「全部・・・この子が・・・教えて・・・くれた・・・」 安積くんの腕の中で小さなハムスターがチュッチュと鳴いている。 あの子が全部聞いてたんだ。 「相手するのもバカバカしいけど、どうする、帝?」 皆の後ろから出てきたみくちゃんは、中心の女の子の目の前で立ち止まった。 「彼女にもう2度と関わらないなら今回は見逃してあげる」 「見逃す・・・ね。随分偉くなったじゃない、私の事、未だ怖いくせに」 女の子は歪んだ笑顔でみくちゃんを見上げた。 怖い・・・? 「君は今の僕を敵にまわす勇気があるの?はっきり言ってあげようか、僕はミカドの正統後継者だ。僕の言葉1つで君は2度と帝に関わる所で食事をする事が出来なくなる。困るんじゃないかなぁ?ミカドは世界レベルだから」 「な、何よ。家とか持ち出してきてバカじゃないの?」 「先に・・・自分の家の事・・・言ったのは・・・そっち・・・」 安積くんの言葉に女の子の顔は真っ赤になった。 「僕は本気だ。君のことなんかもう怖くない。」 「・・・・・行きましょう!」 他の子達を連れて教室を出ようとした彼女の耳元で常盤さんが何かを囁くと、彼女は私を見返して逃げるように立ち去っていった。 ・・・・・常盤さん、何を言ったんだろう? 「ありがとう、みくちゃん。み、みくちゃん?!」 「は・・・・・はぁぁ、緊張したぁ・・・・・」 女の子達の気配がなくなると、みくちゃんはヘナヘナと床に座り込んでしまった。 やっぱり・・・怖かった・・・の? 「ミク、平気?」 「意外に平気・・・自分でも驚いてる」 「あの子たちって・・・その・・・」 「小学部の時に美久を可愛がってくれてた子達」 「可愛がる?」 可愛がる・・・普通に可愛がるの意味じゃないよね。 じゃあ・・・ 「あぁ、えーと、簡単に言うとイジメに合ってたんだ。小学部の時だけどね」 「イジメ・・・」 ドクンと心臓が大きく鳴った。 無理して笑ってるけど、さっきまでの感じだと多分、トラウマになる程のイジメだったんだ。 「美久って顔立ちが綺麗だから女の子の格好をしているだけでも超美少女だったわけ。そうするとさ、小学部の高学年になると妬みっていうのが出てきちゃってさ・・・」 「どんなに嫌な目にあっても、ミクは決してウチらに誰が何をしたのか話さなかったの。それはミクの優しさだったのにあの子達はミクが弱いからだって勘違いしてさ・・・・・ウチらも悪かったんだよ。すごく近くに居たのに、あんなになるまで気がつかなくて・・・・・」 九重くんと和泉ちゃんは特に辛そうな顔をしている。 「もしかして、みくちゃんはあの子達だけじゃなくて「女の子」が怖くなってしまったの?」 「そのようです。中学部で桜組に入った私は、慣れてもらうのに半年かかりました」 すごく結束が強くて仲がいい桜組。 大事な仲間がイジメに合っていたなんて知った時、ショックだったろうし悔しかったと思う。 「小学部の終わりの頃は結構辛くって更に実の兄さんのように慕っていた人を亡くして・・・・・辛いとか哀しいとか思うくらいなら心なんかいらないって自分の殻に閉じこもったりもしたっけ」 『自分の世界に閉じこもったまま、周りの人の言葉も気持ちも気がつかないでいた』 前にみくちゃんは自分の事をそう言っていた。 でも、そうしなければ生きていけないほど辛かったんだ。 「でもね、あの時スイちゃんに会って、和美さんのためにも友達のためにも僕自身のためにも頑張っていかなくちゃって思えるようになったんだ。心って辛いとか哀しいだけじゃなくて、嬉しいとか楽しいとかも感じられる。僕の特別な力はきっとそういう気持ちを人に持ってもらう為のものなんだって思えるようになったから」 歌の力だけじゃない。 私がしたのは助けというよりもきっかけを与えただけ。 そう思えるみくちゃんは、歌が響く素直な心と未来へ進もうとする強さを持っていたんだ。 「水波さんはあまり気にしていなかったみたいだけど、美久の話し方の理由も教えてあげるよ」 「あ・・・うん・・・」 理由。 女の子の格好をしていたからじゃないのかな? 「中学部に入って美久が男の格好するようになったらさ、あの子達、掌返す態度で美久に近づいてきたんだ。家の事とか美久の立場とか目当てで。だからね・・・」 「だからミクはあんな話し方をするようになったんよ。話し方で何や勝手に勘違いしてしまったんやろね、それからだーれも近づかなくなったわ」 「そうだったんだ・・・」 あの話し方はわざとだったんだ。 だから直ぐに話し方を変えられたんだ・・・ 「そんな事もあってさ、初めてミクに好きな女の子が出来たって知った時ウチら嬉しかったんだ。ミクがトラウマから抜けるきっかけになるんじゃないかって思ったし、幸せになって欲しかったから。だから・・・その・・・かなり強引にミクと水波ちゃんをくっつけようと色々しちゃったわけ、ごめん、迷惑だった?」 「ううん、迷惑なんかじゃなかったよ。逆に私がニブ過ぎて皆に迷惑というか苦労をさせていたのではないかと・・・・・」 ・・・・・・・・・あ、皆、頷いた。 「クリスマス会の時から色々と考えたんだ。僕の気持ちはスイちゃんを困らせるだけだから無くした方がいいんだ・・・とか。でもね、心ってそういうものじゃないんだよね」 立ちあがったみくちゃんは私の手を握って話し続けた。 「人の心も自分の心も外からどう出来るってものじゃない。いつか新しい恋をするまで大切にする、誇りに思う。スイちゃんの事を好きになれて・・・よかったって」 「みくちゃん・・・ありがとう・・・好きになってくれて・・・ありがとう・・・」 目を閉じて頬を合わせると、みくちゃんは優しく優しく抱きしめてくれた。 「「すいちゃん!!」」 「粋さん!」 高等部の門を出ると、双子ちゃんと紅蓮くんが私を待っていた。 「ど、どうしたの?小学部はもうとっくに終わってるでしょ?」 紅蓮くんは特にほっぺたが赤くなって耳はすごく冷たくなっている。 かなり長い時間此処に居たって事だ。 こんなに寒いのに・・・どうして? 「あいちゃんがいないの」 「すいちゃんのところいくってこうこうにいっちゃったの」 「え?!」 「有希と望には先に帰っていてもらったんですが、遅くて心配だってさっき学校に戻ってきたんです。高等部の中に入っていって入れ違いになったり迷子になっては困るので校門で待っていました」 「そうなの・・・分かった、ありがとう。3人は先にお家に帰っていて。後は私が探すから」 これ以上此処に居たら風邪をひいてしまう。 心配だろうけど・・・ 「どうしたの・・・水波さん・・・」 「安積くん!!」 「無能には何をやらせても無駄ね・・・」 小さく舌打ちをし、高等部選抜クラスのある建物から出ようとした茉莉の前に小さな影が現れた。 「魂の格も低ければ人としての質も低い。貴様のようなヤツに記憶を操作される方もされる方だが・・・」 「・・・・・・・っ!?」 「こんな事をする意味があるのか?何をした所で貴様に勝ち目は無いというのに愚かしい」 「・・・・・子供だから見逃していたわ、アナタもバケモノだったのね」 茉莉の前に立つ少女。 見知った顔であったが、今まで気にも留めていなかった。 小さく弱い存在だと思い込んでいたから。 「何とでも言うがいい、私は雑魚の言葉に惑わされるバカではない」 「この・・・・・っ!?」 掌から発されたオレンジ色の光が少女の腹部を打つ。 咳込み倒れる程の力の塊を受けたはずなのに、少女は顔色1つ変えなかった。 我慢している様子はない。 全く効いていないのだ。 「これ以上、粋とシイラを傷つける事は許さん。次は無いという事を覚えておけ、そのさして良くもない頭でな・・・」 下唇を噛み睨みつける茉莉を冷たい目で見上げると、少女はその場を後にした。 「アイちゃーん、アイちゃーん!!」 「すいちゃーん!!」 ちょこちょこと駆け寄ってくる小さな身体を抱きしめ、その柔らかい髪を撫でてあげる粋。 「無事でよかったよぉ・・・ありがとう・・・安積くん・・・」 「見つけたのは・・・くろさん・・・」 安積の腕の中でニャニャっと鳴く黒猫。 「よかったね・・・って・・・」 「うん、ありがとう、くろさん、安積くん」 2人で手を繋いで校門まで行くと、待っていた子供達が駆け寄ってきた。 「みんなごめんね、しんぱいかけてごめんね」 「あいちゃん、ひとりでいなくなっちゃだめよ」 「こんどはぼくたちもいっしょだよ」 「うん・・・・・」 双子達から熱烈抱擁を受けている藍を見て、1人難しい顔をする紅蓮。 「紅蓮くんもあの中に入っちゃえば?」 「あ、いえ・・・僕は藍さんが無事ならそれでいいので」 「そうなの?」 「はい。今回は何でもありませんでしたが、次は・・・・・僕が相手をしますから」 「え?」 紅蓮は誤魔化すように後ろを向き、高等部の校舎を見つめた。 その赤茶の瞳は夕日を受けて紅く輝き、まるで獲物を狙う獣のようだった・・・・ |
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