みずのきおく・37






「どきどきするね・・・」
「プレゼントとかいって強引に計画に巻き込んでしまったけど・・・何があっても守るから安心してて」
「ううん、巻き込んでくれてありがとう。私も何か出来るならしたいって思ってたから、頑張る」
私達は今、蘇芳さんの運転する車で東雲グループの年末パーティの会場に向っている。



「すいちゃん・・・」
きゅっと小さな手が私の手を握る。
アイちゃん・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・かわゆすぎるよっ!!


お子様達4人は白い洋服を着ていて、アイちゃんとユウキちゃんはツインテールに紅蓮くんとノゾムくんは靴に銀のリボンをつけている。
皆、かわゆすぎるぅぅぅぅ!!!
天使みたいっっ!!
風眞さん、きっとギューーーってしたいに違いないよねっ!!



はぁはぁ・・・
落ち着かねば。



「私の着てる服もお子様達が着てる服も、蘇芳さんが作ってたなんて驚いたな」
「皇さんの希望通りのモノを仕上げられるなんてすごい才能よ。皇さんって普段はあんなだけど仕事面では厳しい人だから」
「そうなんだ・・・」
家族に甘々〜ってイメージが強すぎて「厳しい」って言葉がイマイチ繋がらない。
でも、大企業の代表をやってるくらいなんだもんね。
仕事に厳しいっていうのは当たり前なのかも。



「そろそろ会場に着くから計画をおさらいしておこうか」
創司くんの声にお子様達も含めた全員の顔が引き締まる。
むむむ・・・
しっかりしなくちゃ。
私が失敗したら台無しなんだもん。
「先ずは・・・」







「信用していない訳ではありませんが、内容の詳細は今は伏せておきます。その時が来れば分かると思いますから、それまで焔くんは西神のお嬢さんと今まで通り接していて下さい」
「はい」
「その時が来たら後の事は大人達に任せて、何も考えないでやっちゃってください」
「はい・・・・・」
何も考えないで・・・やっちゃって・・・いいのかな。
「あ、でも、あまりやり過ぎるのは・・・・・」
少し焦ったような梨紅さんの声。
僕、そんなに邪なオーラを出していたかな・・・
「あ、はい・・・・・理性は残すつもりです」
つもり・・・です。



※※※※※※※※※※※※※※※




「何か悪い相談事でもしていたの?」
「いいえ、唯の世間話です。貴女はここまで来て未だ安心出来ないんですか?」
「安心してもいいの?」
「さぁ・・・どうでしょう」
腕に纏わりついてくるキツイ香り。
あまり強い香りが好きじゃないからはっきり言って迷惑で仕方ない。
自分の好みじゃない香りが身体にうつるのも嫌だ。
こういう時、ふわんと鼻をくすぐる程度の甘いイチゴの香り、粋さんの香りの傍に居たいと思う。



ふと、昨晩の事を思い出して唇を押さえる。
暗闇の中、粋さんが意識を失う前に一瞬だったけど唇が触れあった。
偶然かもしれない。
でも、前に僕からした時とは少し違ってた気がする。
まるで・・・恋人のような・・・


都合よく考え過ぎだ。
自分でも分かってる。
だけど・・・・



「ホムラ」
「・・・・・母さん」
今まで父さんの傍から離れないでいた(父さんが離さなかったっていうのが正しい)のに。
「どうしたんですか」
「ああ、マツリさん。メイクをしたいからホムラを暫く借りていくよ」
「メイク・・・」
母さんが僕にメイクをするなんて珍しい。
夏のあの撮影の時以来だ。
「発表の準備ですか」
「そう、ホムラはメインだから」
「そうですか、行ってらっしゃい焔さん」
あっさりと僕の腕から離れていったけど・・・
あっさりし過ぎじゃない?
「都合よく解釈してくれたようだね。まぁ、嘘はついていないけど」
「そう・・・・・ですね」
「メインはホムラ」じゃなくて「ホムラはメイン」って言ってたから。
僕はメインの1つって事なんだろう、きっと。



「彼女は本当にホムラの事が好きなのかな」
「・・・・・分かりません」
控え室に行く途中、小声で母さんが呟いた。
「彼女からは恋をしている輝きが見えない。ホムラに近づいているのは西神の言う事を聞いてるだけなのかもしれない。何と言うか・・・使命みたいなものを感じるんだ」
「使命・・・ですか」
門の世界の彼女の魂の使命か・・・・・
・・・・・ん?



『こっちの世界で生きていくには別に貴方でも構わないかなって』



・・・・・・・・・・おかしい。
僕でも構わない。
「僕」ではなく僕。
ここ数ヶ月嫌々ながら傍に居たけれど、「僕」であるファルシエールに対する執着が曖昧になっている気がする。
それに、どのようにするのかは分からないけど粋さんの記憶を戻してもいいと言ってきたりもした。(条件が条件だったから却下したけど)
粋さんの記憶を戻すのは「彼女」にとっては都合が悪いはず。
なのに、何故?
「彼女」が僕に近づいて来た理由はファルシエールのはずなのに。


彼女は本当は何者で、何を求めているのか。
それが分かれば、唯の能力者がこちらの世界で自由に能力を使える理由も分かるかもしれない。
もう少し手がかりが必要か・・・







「ルナソルを発表するんですか?」
「そう、イメージキャラクターを変えれば発表出来るからね」
「それは・・・」
仕事に対するプライドが誰よりも高い父さんが自分の考えを変えるだなんておかしい。
それに、粋さんのイメージを見て他の誰かなんて考えられない。


「イメージキャラクターは東雲の長男と謎の少女の2人って事にするんだ」
「謎の少女?」
「まぁ、スイちゃんなんだけど。正体は明かさないって事で」
「え、あ・・・僕とスイさんの2人・・・ですか?」
「そう。2人と1人じゃ全然違う。最初のイメージキャラクターとは変えた事になる・・・って、言い張るらしい。ま、発表しちまえば西神も手を出せないからね」
スイさんと2人で・・・
やば・・・・・嬉し過ぎる。


「じゃ、じゃあもしかして、今日・・・此処に粋さんが来るんですか?」
母さんが優しく微笑む。
「絶対に発表を成功させないとね」
「はいっ」



※※※※※※※※※※※※※※※




メイクといっても前回の撮影のようではなく、髪のセットと着替えだけで済んでしまった。
今回は僕が僕だと分からなければならないし。
メイクが終わると直ぐに僕と母さんは父さんが居る舞台に通された。
記録の為だろうか、舞台の袖に聖さんもいる。


「皆さんの協力のお陰で、今年も満足のいく結果を得る事ができました。『リュミエル』は来年、彼らに加えて妻の空をモデルとして起用していこうと思っています」
梨紅さんを中心に天さんと母さんが並ぶ。
天さんと並んでも見劣りしない女性。
東雲の代表が母さんを公の人に妻と紹介するのは初めてだった事もあって、会場内がざわめく。
特に西神の関係者と思われる人たちは、母さんが仕事の表舞台に出てくるなんて思いもしなかっただろうから驚きを隠せていない。



「今日は更に大事な発表があります」
父さんの声に会場が静まる。
「来年、リュミエルに続く2つの光を新たなブランドとして立ち上げようと思います」
西神は発表の内容に困惑している。
だけど、動きだしてしまったものはもう止める事は出来ない・・・
「光の1つは、星の光をイメージにしたキッズ向けブランド『ティンクル』」
会場の入口付近にライトが当てられると、白い洋服を着た4人の子供達が手を繋いでこちらに向って歩いてきた。
有希と望と藍ちゃんと紅蓮か。
会場からの「可愛い」という言葉に笑顔で返している。
上手くやるもんだ・・・


父さんは4人を傍に寄せると話を続けた。
「ティンクルは子供達の愛らしさと快活さを全面に出しています。イメージキャラクターとしてはこの子達を起用していこうと思っています」
ニコニコと笑って手を振っている子供達。
確かに誰もが笑顔になってしまう程に可愛い子達だけど、本人達は内容を理解出来ているんだろうか・・・



「もう1つの光は、太陽と月の光をイメージにしたティーン向けブランド『ルナソル』」
始まった。
未だ分からないけど、この会場の何処かに粋さんが居る。
そう考えると胸が熱くなる。
「ルナソルのイメージキャラクターとして私の息子である東雲焔と・・・」
僕自身と月の光が差しこむ2階の大きな窓にライトが当てられる。
あそこに・・・
「彼のパートナーとして彼女を起用したいと思います」
会場の目が「彼女」に集中する。


窓の外の月を背景にした銀青色の髪の謎めいた美少女。
ライトの光に少し目を細めふわりと微笑むと、息が止まりそうになる程綺麗だ。
・・・・・・粋さん。
もっと近くで貴女の顔を見ていたいよ。


「・・・・・」
声を出せる人がいない。
会場中が彼女の幻想的な雰囲気に魅せられているようだ。



「パートナーとして紹介したのだから、2人で並んでくれないと絵にならないな」
「聖さん」
カメラをおろして小さく息を吐くと、聖さんは彼女に目をやった。
「行って来なさい」
「父さん・・・・・・はいっ!!」
裏の通路から粋さんの元へ急ぐ。
やっと・・・やっと、ちゃんとした形で会うことができる!!
早く、早く・・・



※※※※※※※※※※※※※※※




「あの小娘・・・」
「ごめんなさい、暫くは大人しくしていてもらえる?」
「あっちの世界での能力をロクに使えないくせに、こっちの世界でも私の邪魔をしようだなんて生意気な・・・」
暗がりからの声に憎々しげに答える茉莉。
「言いたい事はそれだけかしら?」
声の主・・・風眞の呆れたような言葉に感情が高まり、茉莉の瞳の奥にオレンジの光が輝いた。


「っ・・・・・」
魔力は解放され、風眞は惨めに床に這いつくばるはずだった。
はず・・・なのに。
何かに吸い込まれるように魔力は消えてしまった。
「いくらあっちの世界の能力がロクに使えなくても、大事な人を守るくらいの力はあるんだよね。まぁ、大体、君と俺の格は違い過ぎるからこれくらいのハンデは必要だったりする?」
風眞の奥に今までなかった気配を感じ、息を飲む茉莉。
必死に堪えなければ膝をつきたくなる程の恐怖。
姿を見せないでいるこの男は、その気になれば茉莉を1人消すなんて何とも思わないだろう。
世界のルールの抜け道なんていくらだって見つけられるはずだから。


「アナタ達、こんな事をして・・・後悔するわよ」
「後悔・・・・・・そうね、私達を甘く見た事、後悔させてあげるわ」
声が遠ざかり、気配が完全になくなっても茉莉はその場を動く事が出来なかった。



※※※※※※※※※※※※※※※




「す・・・・・」
思わず名前を呼びそうになった時、こっちを向いた粋さんの人指し指がそっと唇に押し当てられた。
あ・・・・・そうか。
彼女はあくまでも「謎」でなくちゃいけないんだ。


「ルナソルのパートナーは相対する光。全く違うからこそ惹かれあい輝く光をイメージしています」


『彼女を思いっきり巻きこんじゃいなさい!』
『何も考えないでやっちゃってください』


「本当に、巻き込んでいいの?」
「本当に、巻き込んでいいよ」
広げた腕の中に彼女が飛び込んでくる。
ふわっと鼻をくすぐるイチゴの香り。
甘くて優しい粋さんの香り。
その存在を確かめるかのように強く抱きしめると、僕の背中にまわされた腕に僅かに力が入った。
・・・・・あれ?
今まで僕の方が一方的だったのに、どういう事??



「そうだ、そうだ。焔くん、ちょっと失礼」
「はい?・・・・・って、え?え?」
粋さんは僕と両手の指を絡め合わせると、上目づかいに僕を見上げてきた。
わ、わ、わぁわぁわぁ!!
僕の理性さんを追い出そうとしてるんですか?!
手袋してるからって積極的過ぎですよ!!


「私達は惹かれあってるって事なんでしょ」
「あ、はい、そうです」
演技か・・・そうだよね。
でも、僕は演技じゃないんだけど。
愛しい愛しい彼女の瞳の奥に僕が映っている。
あぁ・・・何て幸せなんだろう。


「上手くいってるっぽい?」
「ええ・・・・・」
僕の胸に頬を寄せた彼女が階下を見降ろすと、人々は羨望と憧れの混じった溜息をついた。



「以上の2つの新ブランドを加え、東雲の光のシリーズを家族で愛していってもらいたいというのが私の考えです。イメージキャラクターを含め、賛成し協力して下さる方は拍手で答えるようお願い致します」
父さんの言葉の後、会場内は拍手の嵐に包まれた。







「はぁぁぁぁ・・・・・緊張した!」
「お疲れさまです」
発表の後、粋さん達の帰りの準備をする僅かな間だけ僕達は2人きりにしてもらえた。
「・・・・・昨日は、ありがとう」
「いいえ、それより照明が落とされる件、知っていれば事前に中止させていたのに。すみませんでした」
「・・・・・・・やっぱり、あの時、焔くん来てくれたんだ。気を失っちゃったから、夢だったのかもって思ってた」
「そう・・・ですか」
やっぱり、唇が触れあったのは偶然?
まぁ、嬉しすぎる偶然だけど・・・



「何だか話したい事が沢山。学園祭の時もありがとう。騒ぎが広がらないようにしてくれたんでしょう?」
「あれは桜組の人達には非がありませんでしたから、当然です」
元はと言えば、あの女が起こした騒ぎだもん。
火のない所に新聞紙を積み重ねて灯油撒いて放火した感じだよ。
何考えてんだか・・・
「でもね、お礼を言わせて。焔くんのお陰で気持ちよく学園祭を過ごせたんだもん」
「いえ・・・・喜んで頂けたならよかったです」



「後ね、これ・・・このペンダント、ありがとう」
「着けてくれたんですね。ええと・・・自分で言うのも何ですが似合ってます、よかった」
あんまり手先が器用じゃないからよく見るとちょっと歪なんだけど、石だけはいい物を激選したんだ。
粋さんの瞳の色と同じ透き通った青。
瞳も石もキラキラと輝いてとても綺麗だ。



「私も何か形に残るプレゼントを用意しておけばよかったな」
「いいんですよ、今日、こうして会えて話せた事が何よりのプレゼントです」
「うん・・・・・私も・・・・・」
かぁっと粋さんの顔が赤く染まる。
わ、わわわわわ!!
そんな顔されたら勘違いしてしまうでしょうが!!



「そろそろ・・・時間ですね」
時計に目をやり溜息をつく。
こうして会えたのがすごく嬉しかった分、別れの時間が迫ってくるのは辛い。
「あ、あの・・・あの・・・あのね・・・」
「はい・・・」
「ほ、焔くんって・・・その・・・未だ・・・私の事・・・好き・・・?」
「はい」
迷わず答えると、粋さんはゆっくりと息を吐いて僕を見上げた。
どうしたのかな。
目を潤ませちゃって可愛いなぁ。






「わ、わら・・・・・・・・私もね、焔くんの事、好きなのっ!!」
「!!!???」
粋さんはつま先立ちになって僕の頬に口づけると、ドアの向こうへと駆け出して行ってしまった。
「・・・・・・・」
















































「夢じゃ・・・・・ないよね・・・?」
壁にかかった鏡の中の僕の頬には、うっすらとパールピンクのリップがついていた。
夢じゃない。
夢じゃないってことは、ちょっと待って、つまり。





粋さんは僕のことが好き?





「うわぁぁぁぁ・・・・」
頭を抱えてその場に座り込む。





一 生 の 不 覚 ! !




何てこったい!
何で何で何でこんなビッグチャンスに呆然としちゃうんだ僕は!!
粋さんが僕の事を好きだって言ってくれて粋さんの方からほっぺにチューしてくれるんなら今だったら僕の方からあんなこんなそんなことをしても恥ずかしいって言うだけであんなこんなそんな感じに応えてくれるかもねそうかもね!!
「ほっぺただけでいいの?」「え・・・・だけって?」「違う所にもしたいでしょ?僕はしたいな・・・」「あ・・・・でも・・・」「はずかしい?じゃあ、目を閉じてて」「うん・・・・・優しくね?」( 以下自主規制 )
・・・・・とかなっちゃってたのにぃ!!
ちゃんと捕まえておけばよかったぁ!!
未だ間に合うかな。
いやいやもしかして扉の外で待ってたりして!



※※※※※※※※※※※※※※※




「何やってんだ、お前・・・」
はっと気が付くと困った顔をした北杜さんが僕を見降ろしていた。
あぁぁぁぁ・・・・
「いえ、何でも。未だ帰ってなかったんですか」
「俺以外は帰ったよ」
「あぁ・・・そうですか」
粋さんは帰ってしまったんだ。
残念だけど・・・仕方ないよね。



「粋と少しは話せた?」
「はい、時間を作って頂いてありがとうございました」
「そうか、よかった・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・何ですか?」
沈黙が続くのも変だから思い切って声をかけると、北杜さんは僅かに目を逸らした。
何なんだ?



「あのさ、粋・・・何かお前さんを喜ばすような事を言わなかったか?」
「え?!」
自分でも分かるくらいウキウキ声で返答してしまった・・・
いけない、いけない。
気を引き締めないと。
「その感じからいって了解致しましたよ。そっか・・・」
「はい?」
「お互いの気持ちが通じたなら、そろそろ粋の記憶が動くんじゃないかと思って」
「・・・・・はい」



粋さんの記憶。
「彼女」の記憶。



「俺達は物心つく頃には記憶があったし、風眞は13まで記憶がなかったけど、俺と時間をかけて記憶を整理していったから酷い混乱は起きなかった。だけど・・・」
「断片的な夢は見るけれど繋がりはないし「僕達」の事が分かっていない。この世界とあっちの世界の記憶が上手く切り替えられなくて苦しい思いをさせてしまうでしょうね・・・」
それは分かっているけれど、記憶は戻さなくてはならない。
「彼女」と「僕達」が「あっちの世界」で目覚める為には絶対に必要なことだから。



「「俺達」の最後の記憶は皆同じだけど、シイラだけは違う。あんな事があったんだ、酷く辛い最後の記憶になってるはずだ」
「だから・・・尚更・・・記憶が戻らなかったのかもしれません」
「だよな・・・・・」
再び沈黙が続く。
夢じゃなく実際にあった出来事だと実感したら、あの最後は残酷すぎる。



「粋さん1人に苦しみを背負わせません。全てが繋がった時に何が起きるか分かりませんが、僕は粋さんの一番の支えになりたい、ならせて欲しい」
「それは、焔の気持ち?」
「ええ」
嘘じゃない。
これは、僕の意思。
「ならいいや。お前さんは何よりも粋を優先すりゃいい。あ、そうそう・・・・・」
「はい?」



「さっきさ、西神のあの子に宣戦布告してきちゃった♪」
アハハっと笑いながら言う事ですか??
いや、この人の事だから・・・
「もしかして、例の問題が何とかなりそうなんですか?」
「あぁ、うん・・・・・多分、色々とメチャクチャになると思うけど何とかしちゃいますよ」
色々とメチャクチャとは・・・
おっそろしい事をしでかしそうなのは気のせいだろうか。
この人が敵でなくて本当に良かったと思う・・・







「唯の能力者じゃ、やっぱり神の能力者には勝てないか」
「・・・・・何よ」
会場内、人気のない廊下で茉莉は自分を呼び止めた少年の声にイライラとした様子で応えた。
「4ヶ月・・・期待はしてなかったけどもう少し頑張って欲しかったな」
「煩いわね、未だ・・・未だ終わってないわ・・・」
自分に言い聞かせるように呟きその場を去る茉莉の後ろ姿を見て、少年は薄く笑った。
「本当に・・・馬鹿で醜い女」
そう言い放つと冷たい青の瞳をした少年は闇へと消えて行った。









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