「みくちゃんってダンス上手なんだねぇ」 「慣れてるだけだよ。それに、相手がよかったから。スイちゃん、初めてとは思えないくらい上手かったよ」 そ、そんな事ないない。 私がよろけそうになったりステップを間違いそうになると絶妙のタイミングでフォローしてくれるんだもん。 「慣れてるって・・・・・ダンスパーティー的なものを日常的にやってるの??」 「いや・・・日常的じゃないけどね。普通の人よりも機会が多いってくらい。後は所作を習うのに日本舞踊とか社交ダンスとかを小さい頃からやってたんだよ」 「ふぇぇ・・・すごい・・・」 日本舞踊もですか? そりゃまぁ優雅な動きになる気がする〜 「・・・・・」 ありゃ? 沈黙・・・ 私、何か変な事、言っちゃったかな・・・ 「どうしたの?」 「ううん、こんな事で感心されるとは思わなかったから」 「こんな事?「こんな事」なんかじゃないよ。小さい頃からやってた事が身に付いて自分のものになってるって本当にすごいと思うもん」 「・・・・・ありがとう、スイちゃんの言葉には救われる」 う・・・・・ 私こそ、大した事は言ったつもりはないんだけど・・ 「帝・・・くん・・・」 暫く2人でまったりと話していると横から女の子達が声をかけてきた。 5人も居るけど、皆、同じ学年かな? 選抜クラスの子達・・・だよね? 「・・・・・」 「あ、あの、変わったって聞いて・・・その・・・あの時は・・・」 「・・・・・僕は気にしてないから、もうその話はしないでくれるかな」 「今でも私達の事を快く思ってないっていうのは分かるわ。でも、私達だって子供だったの」 「謝らせてくれてもいいでしょ?」 立て込んでる? もしかして、私はここに居ない方がいいかも・・・ 「だから、気にしてない。君達の事は何とも思ってない。・・・・・僕に引け目を感じるのなら、話しかけないで欲しいんだけど」 普段とは全然違う冷たい突き放したような話し方。 少し気になってみくちゃんの様子を見ると、手の指先が僅かに震えていた。 怒っている? それとも・・・・・・・・ 怖いの? 余計な事だとは思ったけど、そっと手に触れるとみくちゃんはぎゅっと私の手を握り返してきた。 「頼むから、僕にこれ以上関わらないで」 「・・・・・・」 顔を見合わせて女の子達は仕方なさそうに去っていった。 ・・・・・・何だったんだろう。 ・・・・・・・・・・・・・・それにしても。 「み、みくちゃん・・・・」 「・・・・・・・・」 うぅ・・・考え事しちゃってる・・・ ・・・・・・ 「あ・・・のね・・・手・・・」 「・・・・・・・・」 うぅぅ・・・未だダメかぁ・・・ 手・・・痛い・・・・・ 「美久、交代しよう」 「・・・・・・・・」 「ふふっ、水波さんを独占したい気持ちは分かるけど強引すぎるよ?」 祐月くんはボーっとしているみくちゃんの目の前に立つと、むにっと両方のほっぺたを摘まんでグイグイと引っ張った。 うはぁ・・・ 「・・・・・!!あ、ご、ごめん!!手・・・赤くなっちゃって・・・痛かったでしょ・・・」 はっと気が付いた様子で手を離すと、みくちゃんは優しく手の甲を撫でてくれた。 「もう大丈夫だよ。みくちゃんこそ大丈夫?」 あれだけぼーっとしちゃうんだもん。 あの子達と何かあったのかな・・・ 「僕は・・・だい・・・じょうぶ」 「・・・・・・・大丈夫じゃないよね?少し頭を冷やしてきなよ。その間、僕たちは踊ってるから」 「あ・・・・うん。本当にごめんね、スイちゃん」 「気にしないでって。それじゃあ、又、後で踊ってね?」 僅かに微笑むと、みくちゃんは会場の外へと出て行った。 無理・・・してるんだろうなぁ。 歌の力を借りてみようかな・・・ 「あ、あのね、祐月くん。私・・・」 「美久の事が心配?追いかけて癒しの歌を歌ってあげようとか思ってる?」 「あ・・・・・うん・・・」 鋭すぎ。 心読みでもできるのでしょうか・・・ 「却下」 「えっ?!」 「僕、性格悪いから」 「えぇっ?!!」 自分で言いますかぁ?! 「・・・・・っていうのは冗談。美久が昔の事・・・水波さんに会うよりもずっと前の事を話す時が来たら、助けてあげて欲しいな。今、力を貸してあげても美久の為にならないと思うんだ」 「・・・・・分かった。祐月くんって、友達思いなんだね」 「ふふっ、惚れちゃった?僕ならいつでも水波さんの彼氏になっちゃうよ?」 「惚れてはいません」 「残念」 どこからどこまで本気なのやら。 でも、友達の事を大事にしているっていうのは祐月くんの「本当」なんだろうな。 「さ、水波さん、踊ろう」 「うん、お願いします」 差しのべられた手をとって中央へと行こうと思ったその時、わぁっという歓声と溜息が会場に響いた。 ・・・・・・あ。 「あぁ・・・王子様が登場か」 「・・・・・」 焔くん・・・ 「一緒に踊っているのは例のあの子か、ふーん」 やっぱり、あの2人ってお似合いだなって思う。 茉莉さんは焔くんと並んでも全然見劣りしない。 綺麗ですごく堂々としている。 「美形カップルに見えるけど、全然お似合いじゃないなー」 「へ?そ、そんな事ないと思うけど・・・」 この会場でそう思う人は誰もいないと思うんだけど。 「王子様、彼女の事を見てないね。彼は1人で踊っているのと同じだよ」 「・・・・・」 「ま、彼の事はどうでもいいや。僕たちは僕たちで楽しく踊ろうよ。僕は水波さんの事だけを見て踊るから」 「・・・・・うん」 祐月くんは勘が鋭いから私の気持ちにも気が付いているんだと思う。 ゆったりとした音楽の中、私は少し痛む心を抑えて踊り始めた。 「僕は美久みたいに遠慮しないよ。王子様達がお姫様を待つだけなら、僕はお姫様を攫う道化師になってもいいんだけど」 暫く踊っていると、祐月くんは耳元に囁いてきた。 「ん?」 「王子様とお姫様のハッピーエンドだけじゃつまんないって思わない?」 「いや・・・・・それは・・・どうかな・・・」 な、何だろう? 嫌〜な予感が・・・ 「僕はね、つまんないって思うな?」 「!!!!!!!!!!!!!!」 ちょ、ちょっと待て、待って!! 何故に顔が近づいてくるのですか?! うぎゃーー!!頭の後ろを押さえられてて逃げられないんですが!! 「冗談でもそういう事はするんじゃない」 駆け寄って来たみくちゃんの手が私と祐月くんの間を隔てた。 た、助かった・・・ 「タイミングの悪い美久にしては珍しい。愛って偉大だなぁ」 「も、もがっ!!」 私の口を塞ぐ手に力が入る。 ぐ・・・ぐるじい・・・・・ 「・・・・・スイちゃんを困らせるな」 「んー?僕よりも、美久の方が水波さんを困らせているんじゃないかな?」 「な・・・・・あっ!?ご、ごめん!!」 慌てて手を離してくれたけど・・・・・何だかさっきのパターンと似てる・・・ 「ぷはぁ・・・・・・・」 「スイちゃん・・・あ、あの・・・・」 「ありがと。えと・・・・・・ちょっと疲れちゃったから端の方で休んでるね」 「一緒に行こうか?」 ニコニコ〜っと笑う祐月くん・・・疲れた原因なんですけど、本人は気にしてらっしゃらないご様子。 「・・・・・遠慮します」 助けてくれた(?)みくちゃんには悪いけど、この2人と一緒に居ると今はとてつもなく体力を使う気が・・・ ダンスをしている人達の間をコソコソと抜けて、私はなるべく人気のない場所へと移動した。 「もしかして怒ってる?」 「当たり前だろ」 「・・・・・美久は戦線離脱してるんでしょう?だったら、僕が水波さんに手を出しても邪魔する権利はないよねぇ?」 「・・・・・僕は・・・スイちゃんを困らせたくないだけで・・・」 口ごもる帝の様子を見て小さく溜め息をつく祐月。 「水波さんを困らせたくないから・・・美久はそれでいいの?」 「・・・・・・・いい、よ」 「ふぅん・・・・・それは本心?」 「・・・・・・・」 「ま、いいけどね」 目を細めて微笑むと祐月は人の中へと消えて行った。 「はぁ・・・・」 冷たいアールグレイを一口。 はぁ・・・・・ 冗談で口にチュウしようとするなんて酷い。 しかも人前で!! 口にって・・・好きな人と2人っきりで・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・焔くんにされた時も人前だったなぁ。 グラスをテーブルに置いて、ふぅっと息を吐く。 あの時は驚いちゃって焔くんの気持ちも自分の気持ちも分からなくって、ただ焔くんが甘えてるだけだって思いこんでしまったんだよね。 焔くんは、あの時、何を思っていたのかな。 焔くんは、今、何を思っているのかな・・・ 「え?!」 ぼーっと考えていると、急に会場から光が消えた。 真っ暗・・・・・・ 何かの事故? 暗い・・・ 怖い・・・・ 『今から15分間、会場内の照明を落とします。時間内は花飾りのパートナーに関係なく自由にお楽しみ下さい』 15分間・・・ そ、そんなに・・・ 暗い・・・ 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い・・・・・・・ 「はっ・・・ひっ・・・はっ・・・」 息が上手く出来なくなってきた。 過呼吸気味なせいで苦しい。 冷たくて気持ちの悪い汗が背中を伝う。 周りに人が居るっていうのは分かるのに、1人だけになってしまった気がする。 「・・・・・やだ・・・・・」 人にぶつかりながらやっと壁まで辿り着いて外へのドアに手をかける。 ・・・・・開かない?! 光が入らないようにしてるから・・・ 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」 足に力が入らず、立っていることが出来ない。 その場に座り込んで身体を抱き締め、ただ時間が経つのを願う。 目を開けても閉じても真っ暗な世界から解放されたい。 「たすけて・・・」 助けて・・・ 誰か・・・ ・・・・・・ほむら・・・くん・・・ ― 粋さん ― 照明が落とされるなんて聞いてない。 聞いていたら絶対に反対したのに・・・ 暗い所に居ても暫くすれば目が慣れてくる。 普通の人にとっては当たり前の事だ。 だから一瞬の驚きはあったとしても騒ぐ人が特に居る訳でもない。 皆にとってはこの状況も唯のイベントの1つに過ぎない。 だけど、粋さんは違う。 彼女は暗闇が苦手というレベルじゃない。 暗闇は恐怖なんだ。 早く、早く何とかしてあげないと・・・ 「焔さん、どうしたの?」 「・・・・・」 粋さんの元に行ってあげたいけれど、この女の傍から離れられない。 悔しい。 自分の力の無さに腹が立つ。 「まさかと思うけど、あの小娘が気になってるんじゃないわよね?」 「・・・・・」 こんな女の傍に居なければならない自分に腹が立つ。 粋さん・・・この闇の中で震えているって分かってる。 今、僕は此処に居るべきじゃない。 僕は・・・ 「・・・・・僕って全然黒くないと思うんだけどな」 「?!」 1人の男子生徒がすっと僕と茉莉さんの間に入ってきた。 何をする気なんだ? 「西神茉莉ちゃんだよね?この時間だけ僕の相手をしてくれませんか?」 「ちょ、ちょっと手を離して」 彼女の手をとると彼は僕の耳元で囁いた。 「迷えるもう1人の王子様、君のする事はなぁに?」 「貴方は・・・・・・・」 チラリと見えた顔は見覚えがある。 確か粋さんと同じクラスで、さっき粋さんと踊っていた・・・ ・・・・・・それに・・・・・粋さんに・・・・ 粋さんの口に・・・キスしようとしやがった輩だぁ!!! 「さ、茉莉ちゃん、こっちこっち」 「止め・・・」 彼の真意はよく分からない。 だけど、今は単純に好意として受け取っておこう・・・ ― 粋さん ― 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」 あとどれくらいで明かりが点くんだろう。 「は・・・・・・は・・・・・・」 苦しい・・・ 目が・・・熱い・・・ 『やっと会えたね』 頭が・・・クラクラする・・・ 何だか、思い出しちゃいけない事を・・・思い出しそう・・・ 『ボクはね、君のお母さんの裏切りで誕生したんだよ』 男の子の声。 冷たい青い瞳。 誰・・・? 『だからね、君はボクを裏切っちゃダメなんだ』 裏切る? 裏切る・・・? 裏切って・・・ない・・・ 裏切られたのは・・・「私」・・・・・ 「っ!!」 意識が遠くになりかけた時、突然、右手に静電気のような痛みが走った。 そして、ふわぁっと甘い花の香りが鼻をくすぐった。 焔くん・・・・・? 「は・・・・はぁ・・・・は・・・・」 私を・・・見つけてくれたんだ・・・ 焔くん、焔くん・・・ 言葉が・・・出ないよ・・・・ 「怖かったでしょう、遅くなってすみません」 「は・・・・・・はぁ・・・・・・」 「・・・・・手、痛いでしょうけどこのまま握っていていいですか?」 「・・・・・・・」 声が出ないからただ頷くと、左肩に添えられた手でそっと抱き寄せられた。 「今はこの闇の中でしか会う事が出来ないけれど・・・」 「・・・・・」 「会えてよかった」 「・・・・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・・・」 言わなくちゃ・・・ 私も会いたかったよって。 私・・・私・・・ 焔くんが・・・好きなのって。 今度、いつ言えるか分からない。 伝えたい。 知って欲しい。 「粋さん・・・?」 「・・・・き・・・・」 苦しくて声が出てこない。 こんなに近くに居るのに。 やっと気持ちを伝えられるのに。 どうすればいい? 言葉以外で気持ちを伝えるには。 どうすればいい? 「・・・・・・!?」 「・・・・・・・・」 焔くんの呼吸とほんの一瞬触れ合って、私は意識を手放した。 「・・・・・・・・」 「スイちゃん・・・・・」 ここは・・・・・医務室・・・? ぼんやりとした視界の中に心配そうな顔をしたみくちゃんの姿が入ってくる。 「何処か痛い所とかない?」 「あ・・・・・うん、大丈夫。心配してくれてありがとう。私・・・どうしちゃったのかな?」 「壁際の椅子の所で意識を失ってたんだよ。本当に、本当に大丈夫?気分は悪くない?」 「本当に大丈夫だよ。私、暗い所が苦手なんだ。まさか気絶する程ダメだったとは自分でも思わなかったけど・・・・・ははは」 「・・・・・僕って本当にタイミングが悪いね。僕じゃ大した力になれないけど、傍に居て声をかけるだけでも気を紛らわせたかもしれないのに」 俯いて悔しそうに唇を噛んでいる。 ああ・・・心配かけちゃって・・・本当に悪かったなぁ・・・ 「気にしないで、1人で居たいって言ったのは私なんだもん」 「・・・・・・・」 気にしないでって言っても、気にしちゃうんだろうな。 みくちゃんは悪くないのに。 私が1人で・・・ 1人・・・ 「あ・・・あの・・・私・・・1人で居た・・・よね?」 「え?うん、そうだったけど・・・」 そう・・・だよね。 夢なのか夢じゃないのかハッキリとは分からないけれど、明るい所ではやっぱり一緒に居られないんだよね・・・ 「誰かと・・・・・一緒に居たはずだったの?」 コクリと頷くとみくちゃんは哀しげに微笑んだ。 「スイちゃんが一緒に居たいのは僕でもマドカでもないでしょう?」 「・・・・・・・」 みくちゃんの気持ちは嬉しい。 けれど、私は焔くんが好き。 焔くんと一緒に居たい。 それが、私の本当の気持ちだから。 「分かってる。分かってるから僕の気持ちは表に出しちゃダメなのに・・・」 「みくちゃん?」 「ごめん・・・ごめんね・・・僕は、スイちゃんが好きなんだ・・・」 「みくちゃん・・・・・」 ぎゅっと抱きしめられても私は何も出来なかった。 声を出さずに私の肩に顔を付けて泣く姿を見て、何の言葉もかけられなかった。 「ごめん・・・ね・・・」 |
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