みずのきおく・34






「わ、わわわわわ・・・」
「ふふっ、そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
ダンスの練習を始めて1ヶ月。
クリスマス会まで1週間。
始めた頃は転びそうになったりパートナーをしてくれてる祐月くんの足を踏みまくったりでそりゃもう大騒ぎ★だったんだけど、最近は何とか様になってきたみたいな?感じ?とちょっぴり余裕が出てきたわけです。
まぁ・・・・・今みたいにあらぬ方向にステップを踏んでしまう事もあるわけですが。



「今日はこれ位にしておこう。水波さん、お疲れ様」
「今日もお世話になりました。どうもありがとう」
物覚えと運動神経の悪い私の為に丁寧に丁寧に指導してくれてる祐月くん。
彼自身はものすっごく物覚えのいい人だから私の面倒を見るのって大変だと思う。
ううう・・・申し訳なさと有難さでいっぱいです。


「お礼を言うなら僕の方だよ。毎日付きっきりで可愛い女の子の相手が出来るなんて早々ないから」
「祐月くん・・・・・口が上手いんだね・・・・」
白い歯を見せて爽やかな笑顔でそんな事言われたら、本気にされちゃいますよ。
「お世辞だと思ってる?ふふっ、残念」
「・・・・・・・」
最近分かりました。
爽やかで人の好さそうな彼は・・・・・クラスで一番掴み所のない人だって。


「みなみちゃんを口説こうとするのは止めっちゅーに」
「円ちゃん、最近何だかキャラが違くない?」
「僕ってライバルが多い子には燃えるタイプなんだよねー。知らなかった?」
「「知るか、ボケェ!!」」
2人に突っ込まれても「あはははは」と笑うだけの祐月くん。
冗談だか本気だか何が何やらさっぱり分からない人だ・・・


「そういう訳で、僕も水波さんのパートナーに立候補しちゃうね。クリスマス会で最初のダンスを踊ってくれたら嬉しいな」
「最初のダンス・・・・・って、何か意味があるの?」


『クリスマス会の最初のダンス・・・ミクと踊ってくれないかな?』


和泉ちゃんも言ってた「最初のダンス」。
わざわざ「最初の」って言ってる辺りで何か意味があると思うんだけど・・・
「え?まだ聞いてなかったの??」
「うん」
首を傾げたまま和泉ちゃんを見ると、何だかバツの悪そうな顔をしていた。
うーん・・・?
「そっか、じゃあ、当日までのお楽しみって事だね」
「教えてくれないの?!」
「だってその方が面白そうだから」
ううううう・・・・・
やっぱり祐月くんってよく分かんない・・・







「今日の練習はどうだったの?」
「まぁ・・・・ボチボチ。ゆっくりした曲なら何とかって感じ」
「頑張ってるわね」
「和泉ちゃん達は私の為に練習に付き合ってくれてるんだもん、頑張らないと。それにね、少し踊れるようになったら結構楽しいんだ」
12月も半ばになったけど、風眞さんは未だ学校には出て来ていない。
化粧師の仕事を憶える為に空さんと一緒に頑張っているみたい。
お母さんから聞いたんだけど、風眞さんの身体で化粧師になるのは物凄く難しい事らしい。
「少しの無理をしても無茶はしない」っていう創司くんとの約束を守っているとはいえ・・・少し心配。


「風眞さんはクリスマス会には出られそう?」
「私自身は参加しないつもり。でも、桜組の美少女トリオのメイクはさせてね?」
「え・・・・・あ・・・・・ありがとう」
学園祭の後も私達3人は練習の為といって何回か風眞さんにメイクをしてもらっている。
「恋する女の子ってキラキラしてていいわね。3人ともすごく可愛いもの」
「そ、そうかな・・・・・・・・ん?あ、あれれ??」
3人とも・・・って事は、つまり・・・
「どうしたの?」
「和泉ちゃんも、好きな人いるの?」
「居ると思うわよ?」
ぜ、全然そんな素振り見せた事ないのに!!
私が鈍いだけ?
いや、でも・・・だ、誰なんだろう?
私の知らない人なのかな?
それとも・・・


「ど、どうしてそう思うの?」
「メイクが終わった後、鏡を見るでしょう?その時、少しだけ寂しそうに笑って言った事があるの。「いつもこんなに可愛くしてたら、気付いてもらえるかなぁ」って」
いつも・・・
・・・・・って事は、近くに居る?
もしかして、もしかして・・・



『ミクと水波ちゃんが青』
『ミクに温室を見せてもらったら?』
『ミクと踊ってくれないかな?』



和泉ちゃん・・・みくちゃんが好きなの・・・?



※※※※※※※※※※※※※※※




「どうしたの、水波ちゃん。ウチの顔に何かついてる?」
「ううん、何も。何でもないよ」
あぁぁぁ・・・
ポーカーフェイスでいられない私・・・
どうしよう、どうしよう、どうしよう。


「和泉ちゃんって、みくちゃんの事が好きなの?」
・・・・・・って、聞けるわけないじゃん!!
「本当に何でもないの?」
「ナンデモナイデス」
でも・・・もし好きだとしたら、どうして和泉ちゃんは私とみくちゃんの仲を取り持とうとしてるのかな?
そこが一番分からない・・・・・・


「あ、あのね・・・あ・・・風眞さんがね、クリスマス会の時にメイクさせてねって言ってたんだ。それでね、どんな感じにして欲しいかイメージがあったら教えてねって」
「わぁ〜嬉しい〜!!じゃあ、会場の男達をメロメロにする妖艶な感じにってお願いしちゃおうかな」
「無理やって。ふうまちゃんの技術がすんごくても、和泉と妖艶は結びつかへんもん」
ひょいっと私達の間に現れた九重くんは、いつものように人懐こく笑いながら話しかけてきた。
・・・・・あ、あ、あぁ。
和泉ちゃんの背中からユラリと怒りのオーラが・・・見える・・・
「な、何ぃぃ!!!」
「ぐ、ぐはっ!!」
「わ、わわわわわ!!」
首がっ、首がっ!!
そんなに締めたら九重くんが窒息しちゃう!!



「その辺にしてあげなよ。達弥だって悪気があって言ったんじゃないって分かってるでしょう?」
あぁ・・・
救いの神が苦笑いしながら来て下さった!!
「・・・・・」
「た、たすかったわぁ・・・」
和泉ちゃんの手から解放された九重くんは、くったりと床に座り込んだ。
ううん・・・合掌。


「何となく話は聞こえてたけどね、和泉は妖艶な感じよりもナチュラルな感じの方が似合うと思うよ。目鼻立ちがハッキリしているからあまり濃いメイクだと年齢と釣り合わなくなっちゃうんじゃないかな?」
確かにその通りかも。
和泉ちゃんはパッチリ二重で何もしてないのに睫毛がくるんってしてる所が魅力的。
ちょっとツリ目がちの大きな目で黙ってじっと見つめられると子猫みたいですごく可愛い。


「大体ねぇ、達弥ってデリカシー無さ過ぎ。少しはミクを見習いなよね」
「技術的に繊細な分、精神的に繊細になりきれんのよ。ほら、天は2物を与えへんって言うやん?」
「反省はしろっちゅーに!!」
わー!!
又、首が・・・!!
「まぁまぁ、2人とも・・・っていうか、和泉、どうしたの?達弥が年頃の女の子の微妙な心情が理解出来ない精神的にお子様なヤツっていうのは今に始まった事じゃないのに」
「・・・・・ウチ、用事思い出したから帰る。水波ちゃん、今日の練習は付き合えないや、ごめんね」
「う、うん・・・・・・・・あ、えと・・・みくちゃんは今日はもう帰る?」
「え?あ・・・特に用事がないから帰れるけど・・・」
「じゃ、じゃあさ、和泉ちゃんと帰ったら?途中まで帰る方向一緒なんでしょ?」
わ、私ってば珍しく会心の提案!!
「まぁ・・・そうだけど。じゃあ、和泉、一緒に帰る?」
「いいよ。じゃね、水波ちゃん」
「気を付けて帰ってね」



※※※※※※※※※※※※※※※




教室を出ていく2人を見送って、ぽつんと残された私と九重くん。
この組み合わせって珍しい・・・
「難しいもんやねぇ・・・」
「ん?」
「さっきまで一緒にアホな事しとったのに、突然オンナノコになってしまうんやもん。オレはこんな性格やし、どーしたらええんか正直分からへんわ」
それはねぇ、きっと恋する女の子だからなのだよねぇ。


「和泉ちゃんとみくちゃんと九重くんって幼馴染なんでしょ?」
「そーや。ミクと和泉は赤さんの時から一緒に育ってきとって、オレは幼稚部の時から仲間に入ったんよ」
赤ん坊時から・・・
わぁわぁ、運命的だぁ!!
「そ、そっかぁ・・・えーと、えーと・・・あのさ・・・」
「・・・・・和泉がミクの事、好きなんやないかって聞きたい?」
「え?!」
その言葉に驚いて固まってしまった私は本当に単純な子です、はい。


「せやなぁ。和泉は誰よりもミクがホンマのミクになる日を望んでおったし、ミクはメッチャええオトコやから」
「九重くんは和泉ちゃんを応援してあげてるの?」
「なーんもせんよ?」
えぇ?!
いっつも一緒に居るし、あんなに仲いいのに・・・
「なぁなぁ、みなみちゃん、1つ忘れとらへん?」
「何?」
「ミクはみなみちゃんの事が好きなんやで?オレがどっちの味方も出来ひんって分かった?」
「うぐっ・・・・・」
あ、う、私・・・おバカさんだぁ・・・
っていうか、酷い女ですか・・・


「和泉の事、一生懸命考えてくれとったんやね。あんがとさん」
「ごめん・・・九重くんも・・・どうしようもないよね・・・」
「んー・・・何やろ・・・寂しいんやろね。何をやるにも一緒、何処へ行くにも一緒・・・ってこんな歳になるまで続いとったんやもん。もっと早くにケジメつけとったらよかったわ。オレもぶっちゃけしんどいし」
「・・・・・」
ひょっとして九重くんは・・・
九重くんは和泉ちゃんの事が・・・
「ケジメの手始めに彼女でも作ってみたらええかな?オレってこれでも後輩のオンナノコには、ちょっと人気があったりするんよ」
「ケジメの為に・・・っていうのはよくないよ」
「せやね、うん・・・・・」
幼馴染の距離。
3人の間にある暗黙のバランス。
それはとっても繊細で他人は介入すべきじゃないんだ、きっと・・・







「はい、鏡」
「わぁ・・・ありがとう!!」
いよいよクリスマス会当日。
終業式の後、桜組女子3人は私の家で風眞さんにメイクをして貰ったのでした。


「うふふっ、美少女が3人並ぶと圧巻ね。男共にしーっかりエスコートしてもらうのよ?」
「どうもありがとうございました。お身体の方は何ともありませんか?」
「心配してくれてありがとう。3人は何回も練習に付き合ってくれたお陰で慣れてきたから大丈夫よ」
ふわんと微笑んでメイク用の筆を仕舞う風眞さん。
確かに学園祭初日の時みたいな様子はないけれど、やっぱり無理はしてるんだろうな・・・


「風眞ちゃん、本当にクリスマス会行かないの?センセイと風眞ちゃんがバッチリ決めちゃったりしたら、絶〜対ベストカップルに選ばれるのに!!」
「残念だけど・・・創ちゃんも今日は用事があるし、私だけ行って浮気しちゃったら可哀想でしょう?」
「確かに。泣いちゃうよね、創司くん」
創司くんの風眞さんに対する熱烈愛を知らない2人は不思議そうな顔をしてる。
そうだよねぇ・・・普段は超頼れてカッコよくて性格もいい完璧男子だもんねぇ・・・


「私の事よりも皆それぞれ楽しんできて、沢山笑顔になってくれたら嬉しいわ。あら、そろそろお迎えが来る頃じゃないかしら?」
時計は5時少し前。
「クリスマス会は5時30分からだから5時頃に迎えに行くね」って祐月くんが言ってたんだけど・・・
・・・・・って考えてたらチャイムの音が。



「今晩は。ふふっ、皆とっても可愛いね。さぁ、車へどうぞ」
案内された車は多分きっとスゴイ高級車。
後部座席に4人で向かい合わせに座っても(向い合わせって段階で何か違う)車内は余裕あるし、何だかよく分からないボタンやら付属品やらが沢山ある・・・
「す、すごいねぇ。こんな車に乗ったの初めて・・・祐月くんの家の車なの?」
「ううん、レンタル。どうせ年に1回しか使わないんだもん。買ったら維持費だけかかって勿体ないよ」
「はぁ・・・・・」
レンタル・・・でも高そう。


「お金の方は気にしないでね。両親それぞれから過剰な生活費を送ってもらってるから、時々は贅沢しても構わないんだ」
「もしかして、1人暮らししてるの?」
「うん。中学の時に両親が離婚しちゃったから、それからね。僕って色々と器用だから全然苦労する事はないんだけど」
「・・・・・・」
う・・・・・
知らなかったとはいえ・・・何て話を・・・
「気にしないで、って言っても気にしちゃうよね。僕の事が気になるなら今度家に来てみる?家庭的な料理に飢えてるから夕飯とか作ってくれたら嬉しいなぁ?」
珍しい・・・少し寂しそうな笑顔なんて。
わ、私の料理でよければ・・・


「ウチらの目の前で堂々とナンパしないように」
「祐月くんはかなり図太い性格をしてますから真面目に相手をしない方がいいですよ」
「へ?!」
和泉ちゃんだけでなく、常盤さんまでが?!
「2人共、酷いなぁ。僕が性格悪いって水波さんに勘違いされちゃうじゃない」
「悪いもん」
「桜組では唯一の『黒』属性です」
「わわわわわ・・・」
車内の温度が下がっていく気が・・・


「ごめんね、水波さん。怖がらせちゃったお詫びにコレをどうぞ」
差し出してくれたのはお花の髪飾り。
濃いピンクのバラの生花を紫色のリボンで止めてある。
んー?
祐月くんの胸元の飾りとお揃い?
「あ・・・ありがとう?」
受け取ろうとした手を常盤さんが止め、差し出してくれた手を和泉ちゃんが掴んだ。
「そういう所が黒いのよ」
「な、何、何??」
「男らしくありませんよ、祐月くん」
「はぁ・・・本当に、2人共、僕の恋路を邪魔する気マンマンだね」
「「当然」です」



和泉ちゃんの話によると、クリスマス会の日、男子は自分の胸元に付ける飾りとパートナーになって欲しい女子用の髪飾りを準備するらしい。
お花とリボンの色は事前に登録してあるから他の人とダブる事はない=同じ花とリボンの男女はパートナーですよって証になるんだって。
「受け取らなくてもいいんだよ。ウチらのクラスは委員長と土浦ちゃん以外は毎年フリーで・・・・・踊りもせずに料理ばっか食べてるね・・・」
「は・・・はぁ・・・」
それはそれで楽しそうだけど。
「水波さん、後で2人きりになったら受け取ってね?」
「絶対に2人きりになんてさせないっつーの!!」



※※※※※※※※※※※※※※※




がやがやと過ごしている間に車は学校へ到着。
「柊っ!!」
講堂の入口で待っていた土浦くんは、常盤さんへ向かってぱたぱたと駆け寄って来た。
正装してるけど可愛い子犬みたい・・・
「そんなに走って来なくてもいいのですが・・・」
「綺麗!!スゴイ綺麗!!世界一綺麗!!早く、早く、コレ着けて」
「・・・・・はい、有難うございます」
受け取った髪飾りを着けると常盤さんは土浦くんの腕を取った。
「すみません、先に奥へ行ってますね」
「じゃね!」
2人を見送る私達3人。
「・・・・・冥って」
「・・・・・若いね」
「・・・・・うん」



数時間前に終業式をした講堂は、沢山の花と光に飾られたパーティー会場にすっかり変わっていた。
「ふぁぁ・・・」
人も物もキラッキラ!!
想像以上にキラッキラ!!
「こんばんは、2人共とっても可愛いよ」
「可愛い、可愛い。何処のお姫さん達かと思ったで」
「ありがとう。2人もカッコイイよ」
学園祭の時も思ったんだけど、普段と違ったピシッとした格好をすると桜組の男子って皆かなりカッコイイんだよね。
制服の時はホニャランって抜けてるっていう訳じゃないけれど。


「今年は美久も胸飾り着けてるんだ」
「あ、うん・・・」
みくちゃんの胸元の飾りはマーガレットと藍色のリボンだった。
マーガレット・・・
「僕もさっき水波さんに渡そうと思ったんだけど、当麻さんに邪魔されちゃったんだ。お互い頑張らないとね、ふふっ」
ポンっとみくちゃんの肩を叩くと祐月くんは飲み物を取りに行ってしまった。
「本人達目の前にして・・・円ちゃんってやっぱり真っ黒だ・・・」
「う・・・・」
否定できません。



「達弥は今年も胸飾り着けないんだ?」
「作るには作ったんやけど、あげたい子おらんし。今年も美味しいもん食って過ごせばええやろ」
「・・・・・そう」
少し落ち込んだ声の和泉ちゃん。
どうしたのかな・・・
・・・・・あ、あれれ?
もしかして、もしかして・・・
何か、何か、私・・・多分、すっごい勘違いをしてたのかも・・・


「いやぁ、それにしても化けたなぁ。そうやって黙ってると選抜のオトコが騙されて声をかけてくるかもしれんよ?」
「・・・声、かけられたら・・・行っちゃうもん」
「何で機嫌悪いん?もしかして・・・あ・・・本当はミクと踊りたいんやろ?でも・・・」
「どうしてそこでミクが出てくるのよ?」
「え・・・だって、和泉・・・ミクの事が・・・」
「達弥のバカ!無神経!鈍くてガキで・・・もう知らない!!」
困った顔の九重くんを見上げると、鳩尾に力いっぱいグーパンチを入れて和泉ちゃんは会場の外へと駆け出して行ってしまった。



「和泉ちゃん!!」
「ったぁ・・・」
「・・・・・ここは追いかける所だよ」
お腹を抑えて座り込む九重くんの肩に手を乗せてみくちゃんは話し続けた。
「いくら鈍感でも今ので流石に分かったでしょ?作ってきた髪飾りを渡してあげなよ。和泉をイメージして作ったんだろうから似合うと思うし、喜んでくれるよ」
九重くんは黙って何かを考えている。
幼馴染の3人。
それぞれの気持ち・・・
「・・・・・なぁ、みなみちゃん。「けじめ」の方法が変わりそうなんやけど・・・これはこれでええんかな?」
「九重くん・・・」
ゆっくりと立ち上がると、九重くんはいつものような人懐こい笑顔を見せてから和泉ちゃんの後を追って行った。



※※※※※※※※※※※※※※※




「みくちゃんは気がついていたの?」
「うん」
「いつ頃から?」
「小学部の頃から」
「そ、そんなに前から?!」
そんなに前から好きだったのに、今までずーっと変わらない関係でいたんだ・・・


「2人共、僕の事を1番に考えてくれてたからね。本当に感謝しているよ・・・」
「・・・・・最高の友達だね」
「うん、ありがとう」
みくちゃんは自分が褒められているかのように嬉しそうに微笑んだ。



「それにしても・・・何で達弥は和泉が僕の事を好きだなんて勘違いしてたんだろう?スイちゃんも勘違いしてなかった?」
「・・・・・してました」
してましたとも。
そして、九重くんと2人で切ない気持ちになってお話しちゃいましたとも。
「和泉にとっての僕って、同じ歳の兄弟なんだ。でも、達弥は違う。和泉にとっての達弥は幼馴染の特別な男の子だったんだよ、ずっと」
「そっかぁ・・・」
複雑なんだぁ・・・
私に限らず、外からじゃ分かんないよね。



「今まで僕の為に沢山の時間を使ってくれたから、それ以上の時間を2人で居て欲しい。親友として家族としてそう思うよ」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・会話終了?」
「「わぁぁぁぁ!!」」
しんみりと話をしていた私達の間に現れた爽やか笑顔の祐月くん。
「とっくにクリスマス会は始ってるよ。はい、水波さん。この髪飾りを着けて一緒に踊ろう?」
「ま、マドカ!?」
「水波さんに美久のを渡す時間は十分あったはずだよ?それとも渡す気がないの?だったら僕を止める権利もないよね?」
「それは・・・・」
ニコニコニコニコ。
うわぁぁぁ・・・清々しい笑顔だぁ・・・
何と言うか・・・みくちゃんが困った顔してるのを楽しんでる感じ・・・(って言ったら悪いかな・・・)
ど、どうしますか、私。
えーと、えーと、えぇと・・・


「・・・・・折角用意してくれたのなら2人とも頂戴?お花勿体ないし、まとめちゃえば豪華な髪飾りになるし、わぁ!私ってばナイスアイディア?!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
あ、あれれ?
2人とも沈黙。
この雰囲気は・・・ハズしましたか?!



「・・・・っ、あっはははは!!サイコー!水波さんってやっぱ面白いね、益々気に入っちゃった!!」
「はぇ?」
お腹抱えて大爆笑されてるんですが・・・
「スイちゃんらしいね。マドカ、これ・・・君のとまとめてもらえる?」
「いいよ。えーと・・・はい、水波さん」
器用にまとめられた髪飾りを、祐月くんは丁寧に髪に着けてくれた。
「みくちゃん、祐月くん、ありがとう」
「どういたしまして。じゃ、最初のダンスは美久に譲ってあげるよ。後で一緒に踊ろうね、水波さん」
「うん。みくちゃん、もう少しゆっくりした曲に変わったら一緒に踊ろう?」
「え?!」
そんなに驚く事かな?
私とダンスってやっぱり結びつかないのかな??


「私ね、今日のために和泉ちゃん達と沢山練習したんだ。もう足踏んだりはしないから安心していいよ!・・・・・多分、うん、大丈夫!!」
「いや、それに驚いているわけじゃなくて・・・最初のダンスなのに僕でいいの?って事なんだけど・・・」
「いいよ?そのために練習してたんだもん・・・って、みくちゃんの希望も聞かずに勝手にやっちゃったんだけど・・・。あ、もし他にダンスしたい人いたら遠慮しないでいいからね!私、待ってるよ?」
そうだそうだ。
みくちゃんだって他に踊りたい人が居るかもしれないし、もしかしたら誰かにダンスを申し込まれてるかもしれない。


「ううん、他に踊りたい人なんて居ないよ。でも、僕も男だから・・・」
すっと私の手を取って、ふんわりと微笑んで。
「一緒に踊ってくれますか?」
「喜んで」







「へぇ・・・髪飾りを着けてダンスをしてるなんて。彼女もそれなりに楽しんでるみたいね」
「・・・・・」
「ほら、あそこ。見ないの?」
「・・・・・僕には関係ありませんから」
「そう?そうよね・・・・・」
「踊りますか?」
「ええ」
寄りそう赤茶の髪の少女の手を取ると、焔は静かにダンスの輪の中へと入っていった。









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