恋をするのって、ちょっと、痛い。 私は焔くんが好き。 自覚してからは少しだけ自分の気持ちを調整できるようになった。 けれど。 会えない日が続くほどに。 焔くんと彼女の噂を聞く度に。 心が痛む。 「おーいしーい!!」 「美味しいですね」 「ウマイなぁ!」 「あ・・・ありがとう」 あっという間に1ヶ月が過ぎ、11月に行われる中・高等部合同学園祭の準備が始まった。 特待クラスは中間・期末のテストがない代わりに学園祭のクラスでの参加が必須になっているらしい。 そして、高等部1年桜組は・・・ 「ヒーリングカフェじゃなくて、ヒーリングスペースなんだよね??」 クラスの子に渡されたレシピを元に作った試作品のケーキを食べながら、学園祭の打ちあわせ。 創司くんは用事があるからって参加してないんだけど・・・ 入学して半年以上経つけど、クラスの皆とちゃんと話するの初めて。 人見知りする方じゃないけど、ドキドキするなぁ。 「そっそ。気分をリラックスさせる香りと特製のブレンドティ。可愛い動物さんと遊んだり、悩み事を聞いてあげたりするんだよ。毎年、結構評価が高い所まで行くんだ」 「んん・・・?????」 関連がよく・・・分からない・・・ 「すみません、入学して半年以上経つのに水波さんにちゃんと私達の能力を説明してませんでしたね。改めて紹介させてもらいます」 私の顔を見て色々と察してくれたストレートの背中までの長い黒髪、細い銀フレームのメガネをかけた大人っぽい雰囲気の女の子は桜組のクラスメイト達に目で合図した。 「安積 政人。動物と会話できる・・・」 「霧島〜穂高〜。ん〜、勘がいい〜?」 何処か似た雰囲気の2人の男の子。 霧島くんって子は半分寝てる気がする・・・。 「安積くんは動物と意思の疎通が出来るので、小動物に人間と遊んでもらうようにお願いしてもらってます。霧島くんは「〜な気がする」という予感が当たるので、動物とのふれあいスペースに行ける人か行けない人かを入口で判断してもらってます」 「九重 達弥。細工師って、まぁ、手先が器用っちゅー能力やな。いやぁ〜、ようやくカワイイみなみちゃんと交流の場が持てて嬉しいわ〜。よろしゅうな〜?」 「当麻 和泉。調香師はあらゆる香りを作りだす事が出来るんだよ。今度、水波ちゃんに合う香りを作らせてね!」 「う、うん。ありがとう」 すっごい笑顔で私の手を握って話しかけてきた2人。 親しみ易そう!! 「九重くんはクラスの装飾をお願いしています。当麻さんは心が落ち着く香りを作って会場に流してもらってます」 「土浦 冥。調合師だよ。薬の調合とお茶の調合が得意」 「私は常盤 柊です。植物に関して少し詳しいです。学園祭ではブレンドティの茶葉を選んで冥に調合してもらってます」 土浦くんは・・・男の子に言ったら悪いけど・・・すごく可愛い顔してる。 周りの男の子よりも華奢で小柄だから余計可愛く見えちゃうのかな。 「あ、今、僕の事、可愛いって思ったでしょ?!」 「え・・・あ・・・ご、ごめん。思った・・・」 ぷくーっと頬がふくれてる。 怒らせちゃって申し訳ないんだけど・・・可愛い・・・ 「しゃーないわ。めーちゃんはカワイイのも能力と思いーや」 九重くんが土浦くんの頭を撫でている間に、当麻さんが私の耳元で囁いた。 「土浦ちゃんってウチらより1つ年下だからさ、可愛いとか子供扱いされるのに敏感なんだ。でも、可愛いのは本当なんだから気にしなくていいよ」 「1つ年下・・・?」 「中等部でスキップしてきたの。ああ見えて結構優秀」 「そうなんだ、スゴイ。私とは逆だね。私は皆よりも本当は1つ上の学年なの」 「では、私と同じ歳ですね」 「常盤さんも?」 大人っぽい雰囲気だなって思ってたけど、同じ歳だったんだ。 ・・・・・ってか、私が幼く見えすぎなのか。 「インチョはめーちゃんに泣きつかれて中学1年を2回やったんよ。手のかかる彼氏さんやね」 「でも、お陰でこのクラスになれたので感謝してますよ?1年分のタイムロスは一生かけて返してくれるそうですし、気にしてません」 「・・・・・わぁ」 淡々とした口調で最後の方でスゴイ事を言われましたよ! しっかり両想いなんだ・・・いいなぁ。 「委員長と冥のコイバナは又後でね?僕は祐月 円。適応力と同調って能力。簡単に言うと場の雰囲気と馴染み易いってことかな」 「祐月くんにはお客さんの話を聞いてもらってます」 「僕は話を聞いてるだけなんだけどね。それだけで何だかスッキリするみたい」 「へぇ・・・」 聞き上手ってこと? それ以上なのかな?? 不思議。 「最後はアタシ、帝 美久。「みかどくん」とか「よしひさくん」じゃなくて「みくちゃん」って呼んでね?アタシの能力は至高のレシピ。食べた人を笑顔にするメニューを作りだすのよ」 「ミクさんにはお菓子や軽食のメニューを考えてもらってるんですが・・・」 「この子達ってば料理の腕が並以下か下の下なの。頼みのシュウちゃんは料理禁止されてるし。いっくらアタシが素敵レシピを考案しても、実際に作れる子が居ないからお客さんに出せなかったのよ」 「何アホ言うてんの。そんなんやったら早よ一人前って認められればえぇやんか、なぁ?」 「そうそう。ウチらは昔も今もこれからも食べ専だもーん」 九重くんと当麻さんは帝くん・・・じゃなかったみくちゃんと特に仲がいいみたい。 2人に絡まれて嫌そうに振舞ってるけど本気じゃないもん。 「み・・・くちゃんは自分では料理を作らないの?」 「料理を作るのも大好きよ。でも、一人前って認められるまでは不特定多数の人に料理を出すことは親から禁止されているの」 「ふーん・・・早く一人前って認められるといいね!私もみ・・・くちゃんの料理、食べてみたいな」 「スイちゃんにならいつでも作ってあげるわ。学園祭が終わったら、すっごく遅くなっちゃったけどアタシ達のクラスの歓迎会も兼ねて、創司センセイも一緒に食事会を開きましょう?いいかしら、シュウちゃん?」 「反対する理由がありませんね。でも、その前に学園祭をしっかり成功させましょう」 「私もちゃんと自己紹介しなくちゃ。水波 粋です。えぇと・・・癒しの歌っていうのを歌うんだけど・・・その・・・」 焔くんとの事があって以来、思った通りの歌が歌えない。 優しい気持ちになりたいのに、ざわっと波が立つように心が乱れてしまう。 こんなの初めてで、どうしたらいいのか分からない。 「歌えなくて・・・悲しんでたって・・・音楽棟のシマさんから・・・聞いた・・・。すごく・・・心配してた・・・」 「シマさんって〜、ニャンコね〜。シマシマニャンコ〜」 シマシマニャンコ・・・あ、そういえばこの前、音楽棟で茶トラのネコがニャーニャー鳴いてた気がする。 後で挨拶に行こう・・・ 「皆・・・ごめんね。歌えれば学園祭で役に立てたよね・・・」 ヒーリングスペースだもん。 癒しの歌なんてそのまんまだよね・・・ はぁ・・・折角、皆の役に立てそうなのにダメな私・・・ 「気にしないで下さい。水波さんのような能力は精神的要因に強く影響されるものです」 「何があったかは聞かないけどさ、誰も水波ちゃんを責めたりしないよ。ミクのレシピを実際に作ってくれるっていうので十分過ぎるくらい役に立ってるって!」 「ありがとう・・・。じゃあ、調理系は頑張るから。うん、任せて!!」 「心強いわ。アタシも新しいレシピを考えてみる。一緒に頑張りましょうね、スイちゃん」 「えっ?!」 触れるくらいに軽くだけど、頬に・・・ 「あ、アホ!!慣れとらん子にそないな事すんなっ!!」 「驚いたよね?ミクって感情が高ぶると抱きついたりキスしたり酔っ払ったオヤジ的迷惑行為を・・・本っ当にゴメン!!」 「あ、いやいや・・・驚いただけ、ダイジョブ。みくちゃんみたいにカッコイイ男の子にされたら女の子だったら迷惑だなんて思わないよ、多分・・・うん」 迷惑とは思わないだろうけど、勘違いはされちゃいそう。 みくちゃんは線が細いけど和服が似合いそうな純和風美少年。 一重で切れ長の目で流し目とかされちゃったらドッキドキでしょう。 ・・・・・はて? みくちゃんってどっかであった事あったような気が?? 3、4年前・・・・ ・・・・・・・うーん、でも、その頃は日本に居なかったから気のせいかな。 「うふふっ、よかった。怒られたらどうしようかと思っちゃった。スイちゃんのほっぺ、柔らかくて焼きたてのスフレみたいね」 「むぅ〜、ほっぺたポッチャリなの気にしてるのに・・・」 「いいじゃない、アタシは好きよ」 「うぅ・・・」 笑顔大放出でほっぺたをプニプニ触ってるし。 私の周りってふれあい大好きな人が集まるみたい・・・ 「はい、皆、話を学園祭に戻しましょう」 常盤さんがパンっと1回手を叩くと全員が彼女に視線を向けた。 すごい統率力! 「昨年までと会場の設営や内容自体に大きな変更はありません。各自の詳細なスケジュールはこれに書いてありますので目を通して下さい」 渡された小冊子には今日から当日までの作業内容やタイムスケジュールが細かく書いてあった。 常盤さんってしっかりしてるなぁ・・・ 「北杜センセはほとんど準備に参加できひんようやね」 「個人的な事情があって時間が取れないようですから仕方ありません。当日はなるべく手伝うからとは言ってました」 創司くんは、最近、授業が終わると直ぐに帰っちゃう。 でも真っ直ぐ家に帰ってるようでもないし、どうしたんだろう。 風眞さんが学校を休み始めた頃からなんだけど・・・何か関係があるのかなぁ? 「ん?この最後の数枚は??」 「あ、それは北杜センセイが「皆で検討してみて」って資料にくれたんです」 創司くんの作った資料には、最近の人気の香りやお茶の傾向と必要な物の一覧、お客さんの時間帯予想人数、物品の発注数量、緊急時の発注先と搬入までの時間・・・などなどが書かれていた。 す、すごすぎる・・・ この場にいなくてもバッチリ参加してるってば。 「流石、センセー。今、何処に居るか分かんないけどとりあえず拝んでおこっと」 「天は2物も3物も4物も与えるもんだね」 当麻さんはナムナム言いながら手を合わせ、土浦くんは少し不機嫌そうに資料を読んでいる。 「だね。頭だけじゃなくて、顔も性格もいいんだもん。同性でも惚れちゃうよね」 爽やかに笑う祐月くん。 本気じゃないよね?? 「それに超ベッピンさんの彼女がおるやん。羨ましいわ〜、羨ましすぎるわぁ〜!!」 「アホか。あの子・・・選抜の・・・水波ちゃんの友達だよね?よく一緒に居るみたいだし」 「風眞さん、西神風眞さんっていうの。綺麗だし優しいしカッコイイんだ!」 「この学園に・・・鳥が増えた・・・西神さんに会う・・・ため・・・」 「翼あるモノ〜、西神さんが好き〜」 「???」 「動物は・・・敏感・・・。西神さんの周りの・・・風は・・・優しい・・・」 風が優しい・・・? よく分からないけど、風眞さんの事、褒められてるみたいで嬉しい。 「風眞さん、今、学校休んでるんだけどね、学園祭までに出てこられるようだったらクラスに招待していいかな?」 「当然、大歓迎!たっぷりサービスしちゃお」 「サービス、サービス。オレ、付きっきりでウェイターしたいわぁ」 「残念ながら付きっきりは無理です。私達の人数と役割分担を考えて、九重くんには例年通り主に体力仕事面でキリキリ働いてもらいますので宜しくお願い致します」 今、常盤さんのメガネのフレームが光ったように見えたのは・・・気のせい?? 流石、個性満載のクラスを支える委員長。 「穂高の予感は今回も当たったなぁ」 「「新しい仲間と〜仲良くなるには〜学園祭まで〜待った方がいい〜」ってヤツね」 打ち合わせ終了後、教室に残った安積、霧島、九重、当麻、帝の5人。 「スイちゃんと早く仲良くなりたかったのに、アタシ、すっごく我慢してたのよ?」 「だね。ミクってば入学式の日に「これってば、運命よ!!」って大騒ぎするし、創司センセーと付き合ってないって分かったら「アタシにも未だ望みある!?」ってこれ又大騒ぎするし・・・」 「黙りなさいよ!スイちゃんに余計な事言ったら絶交なんだからっ」 「分かっとるって。親友の恋路を邪魔するわけないやん」 「彼女はミクの恩人だもん。ウチらこれから全面的に応援するってば」 「ちょっ、アタシは・・・アタシじゃ・・・ダメなのよ」 哀しげに首を振る帝を眠そうな目で見ると、霧島は立ち上がり安積と教室を出る直前に「予感」を残した。 「「今」なら〜だいじょうぶ〜かも〜?」 「ホダカちゃん・・・」 「・・・・・でね、皆、風眞さんが来てくれるの楽しみにしてるんだ」 「そうなの?じゃあ、学園祭には学校に行けるように頑張らなくちゃ」 ふわふわっと笑う風眞さんは、やっぱりすごく綺麗。 「あのね、クラスの子が言ってたんだけど、風眞さんの周りの風は優しいんだって。それでね、沢山の鳥が風眞さんに会うために学校に集まってるんだって。不思議だね?」 「・・・・・・・」 「風眞さん?」 どうしたんだろう。 ぼーっとしてる・・・? 「あ、ご、ごめんなさい。ちょっと不思議な話だったから、驚いちゃったの」 「だよね?不思議だよね?」 「ヒーリングスペースってメインはカフェになりそうな感じよね。粋ちゃんも接客するの?」 「お菓子を作ってない時はするよ、お茶溢さないように気をつけないと」 「じゃあ、可愛いウエイトレスさんの服をお母さんにお願いしてみましょ、そうしましょ♪」 「え、え、え??」 「桜組の女の子は粋ちゃんを入れて3人だったわよね。皆のサイズ、聞いておいてね?」 「いやいや・・・」 「うふふっ、絶対学園祭行くわね。一緒に写真撮りましょうね?」 ふわふわっと笑う風眞さんは、すごく綺麗・・・で、逆らいようのない雰囲気に満ちていた・・・ |
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