休み明けの昼休み。 「粋ちゃんのご家族って素敵ねぇ」 「あ、ありがとう」 うっとりとした目で風眞さんが話す。 大好きな家族を褒めて貰えて嬉しいな。 「お母様も妹さんもは妖精さんみたいに儚くて守ってあげたくなるような繊細でふわふわ〜っとした姿なんですもの。目の保養になるわ・・・」 「目の保養だけじゃなくて妹さんには熱烈抱擁をしてたよな・・・」 「あんなにカワユイ子、近くに居たらやるに決まってるでしょ?」 言いきった!! でもでも、本当にアイちゃんはかわゆいものね。 ふふふ〜ん♪ 「妹さんってお母様のミニチュア版みたいにそっくりなのね」 「うん。身内の贔屓目抜きで2人が並んでいると綺麗でしょ?私もお母さんに似てたら今頃モテモテさんだったのにな」 あははっと笑うと、複雑な表情で風眞さんと創司くんが顔を見合わせた。 はて? 「粋ちゃんはお父様とお母様のどちらにも似てるわね」 「鼻から上が母親似、下が父親似だな」 「そう・・・かなぁ?まぁ・・・・目と髪はお母さんだけど」 鼻と口はお父さんに似てるのかぁ・・・ ぽやーんとお父さんの顔を思い出してみる。 いつも穏やかにのほーんと微笑んでる顔しか出てきません・・・ う・・・私も締まりのない顔なのかなぁ・・・ 「水波一家はほんわか一家だよな。見てると和む」 「ありがと・・・・・ってそうだそうだ!!創司くんのご両親!!本当にビックリしたよぉ〜!!」 昨日の夜、焔くんの家族と聖さんと創司くんのご両親を夕飯に招待したわけですよ。 創司くんが「ビックリする」と予告していたご両親。 お会いするのを楽しみにしていたわけですが・・・・・ ほわほわほわわわわ〜ん♪という音楽と共に昨晩の記憶が思い出される。 「本日はお招きありがとうございます」 「お邪魔しマース・・・って、何だよ・・・」 「ベタベタくっついてんじゃないよ、腐れ堕天使。リクぅ、こんなケダモノにつかまえられてて怖かっただろう?」 「オマエこそ俺のリクに触んじゃねぇよ」 玄関先にて。 分厚いメガネをした黒髪の小柄な女の子と、彼女の腕をがっしりと組んでいる帽子を目深に被った長身の男の人。 先に家に来ていた空さんがその様子を見るなりものすごい勢いで2人を引き離そうと奮闘している・・・ 「空さん、天、人様のお家で騒いではいけませんよ?」 女の子が優しく話すと、火花を散らしていた2人はすぅぅっと静かになった。 す、すごい・・・ 「お騒がせしてすみません」 ぺこりと頭を下げた女の子のメガネがズリ落ちると・・・漫画ではお約束の展開。 メガネの下の素顔は、ウルっとした黒目の大きな純日本風美少女。 何処かで・・・・・見たことがあるんだけど・・・??? 「あぁ・・・いけないですね・・・」 「ん、もうメガネ取っててもいいよ。俺も帽子取るし」 男の人は私達が見ているのも気にしないで女の子の両目蓋に軽くキスをすると、帽子を取った。 「!!!!!!!」 帽子の下から現れたサラサラの金髪。 現在は隣に居る女の子の事しか見ていないヘーゼルの瞳。 見たことある・・・っていうか、実在の人物だったんだ!? 「父さんも母さんも早く上がってクダサイ・・・人様の家の玄関先で2人の世界を作らないでクダサイ・・・」 深い深い溜息をついて創司くんが言葉をかける。 お父さんとお母さん・・・ 天使と美少女・・・・・ 「創司くんのお父さんってリュミエルのモデルさんだったんだ・・・っていうか、ご両親・・・若いよね・・・??」 目の前に居る金髪の天使。(確かアマネっていう名前だったはず) あまりにも現実離れした美しさで年齢も性別も不明だから、CGじゃないかって噂だったんだけど。 「俺の両親の身体年齢は在って無いようなモノなのよ」 「はぁ・・・・」 お母さんに至っては私達とあまり年齢が違わないように思うのですが・・・ ぽかーんとした口をしたまま創司くんのお母さんを見ると、ニッコリと微笑んでくれた。 わ、わわわわ!! ものすっごい可愛い!! 背景に色とりどりのガーベラが咲いたように見えたよっ!! そういえば今、はっきりと思いだした!! 何処かで見たことがある顔だと思ったら・・・ クリスマス、バレンタイン、ホワイトデーの年3回だけリュミエルの広告に登場する女の子だ。 天使と恋する女の子。 実際には夫婦だったのね・・・ 「世界の主要都市に年3回、両親の熱愛写真がバーンと出る息子の気持ちを分かって下さいよ。本当に俺ってば、よくマトモに育ったって自分で感心するわ、ハハハハハ・・・・」 笑うしかないでしょうな。 広告の熱愛写真が本物の熱愛写真だって分かってる人が見ればね・・・ そりゃね、フクザツだよね。 「年3回って、創司くんのお母さんはモデルが本業じゃないの?」 「本業・・・は、何だろうな?医学と薬学と言語学中心に色々とやってるよ。東雲で化粧品をいくつか出してたりもするな」 「創ちゃんがお医者さんになるまでは私の主治医になってくれてたのよ」 「へぇ・・・・」 す、すごいんだ・・・ いわゆる天才と呼ばれる方では。 「あ・・・・・あのさ。私のお母さんの話し方なんだけど・・・」 「カッコいい話し方よね。見た目とのギャップがツボだわ・・・惚れちゃう♪」 「安心していいよ。俺達は変だなんて思ってないから」 「確かめるような事を言ってごめんね・・・・・私のお祖母ちゃんってスウェーデンの人なのね。若い頃から日本に興味があって日本の歴史文学を勉強していたらしいんだけど、その・・・勉強していた本が本で・・・少し変わった日本語を覚えちゃったらしいんだ。それが娘であるお母さんに浸透してああなっちゃったみたいなの」 「お祖父様は日本の方なのよね?」 「うん。その・・・・・お祖父ちゃんもあの話し方だったんだって。お母さんも自分で話し方が変わってる事は知ってるんだけど、どうしても直らなくって・・・・・私とアイちゃんは普通に話せるようにって私達はお父さんから日本語を習ったんだよ」 「話し方なんて個性の1つなんだけど。もしかしたら・・・粋の母さんは話し方で嫌な思いをしたことがあるのかもしれないな」 「・・・・・うん」 小さい頃、お母さんはあんまり話をしてくれなくてどうしてだろうと思ってた。 少し大きくなってからお父さんが教えてくれたんだけど、お母さんは若い頃に話し方で嫌な思いをして・・・・・話せなくなってしまった時期があったんだって。 私達には同じ思いをさせたくないからって、自分の話し方を覚えさせないように話しかけてくれなかったらしいんだ。 「『普通』と異なるモノを人は徹底的に排除するか強い憧れを抱く。俺の母さんも『普通』じゃないからさ、昔は色々あったと思う。父さんに会う前の話、子供の頃の話をしようとしないから・・・」 「同じ『人』であることには変わりないのに。どうしてかしら・・・普通の全てが正しいわけじゃないって分からないのよね」 「・・・・・」 創司くんも『普通』から外れた能力を持っている。 だから、もしかしたら・・・ 創司くん自身にも以前に何かあったのかもしれない。 ううん、あったんだ。 風眞さんの表情は静かだけど、怒りの色が瞳の奥にユラリと見える。 「まぁまぁ、暗い話はこれ位にしまショ。そういや焔はどうしたんだ?いつもだったら俺達よりも早く此処に来てるのに」 「あらあら、あの騒動に気がつかないなんてスゴイわね」 「ははは・・・」 ぐぅ〜っとカッコよくなった焔くんは夏休み明けの学園に衝撃を与えたわけで。 『何だかスゴイ騒ぎになってしまって・・・ 迷惑をかけたくないので今日のお昼は1人で食べますね。 放課後、会えるのを楽しみにしてます』 っていうメールが来たのです。 人気者も大変だぁ。 「焔のよさは見た目だけじゃないんだけどな」 「そうねぇ」 「そうだよね。顔は勿論だけど、優しいし紳士だし家族思いだし・・・いい所いっぱいあるよね」 「・・・・・よくよく考えたら普通の人には分かりづら過ぎる事ばかりだったな」 「そうねぇ」 「え?!分かりやすいよ??」 何で何で?? すっごく分かりやすいのに!! 「アイツももう少し大人にならないとな」 「そうねぇ」 しみじみと話す2人。 むぅぅ・・・・・何でかなぁ・・・・・ 放課後。 「ありゃりゃ・・・」 「さしずめ囚われの王子様?」 「大変だよねぇ・・・声かけてあげた方がいいかなぁ・・・」 校門前に出来た群衆。 その中心に居る焔くん。 「いやぁ・・・焔としてはファンクラブの皆様の視線の中に粋を巻き込みたくないだろうからな・・・」 「・・・・・・・・・創ちゃん、行ってらっしゃい。私は粋ちゃんと先に帰ってるわ」 「え、あ、うん・・・あの、創司くん、お願いね」 「はいはい、お姫様達の声援を受けて頑張って参りまーす」 「行きましょう★」と風眞さんに促されて校門から離れる。 大丈夫かなぁ、創司くんと焔くん・・・ 創司くんの家に立ち寄ると、母3人とちびっ子3人の集会が開催されていた。 「すいちゃん、おかえりなさい。ふうまさん、こんにちは」 「「おねえちゃん、すいちゃん、おかえりー」」 「た、ただいま」 「ただいま、今日も皆可愛いわねぇ〜♪」 とてててて〜っと近づいてきた3人を熱烈抱擁する風眞さん。 顔に『至福』と書いてあるようデス。 「風眞ちゃん、明るくなりましたね。前はあんなに楽しそうな表情は滅多にしなかったのに・・・もう1人の母親としてとても嬉しく思います」 「スイちゃんがあの子の心の凍っていた部分を融かしてくれたんだね。フウマもホムラも私も、彼女のお陰で救われたんだよ」 「そうか・・・」 母3人はお茶とおしゃべりの時間を楽しんでいるご様子。 一応、創司くんと焔くんの事を話しておいた方がいいかな・・・ 「大丈夫ですよ、創司は器用な子ですから」 「リクの息子だからね。頭いいし、顔もいいし、性格もいいし、頼りになるし・・・腐れ堕天使に似なくて本当によかったよ。安心して娘を任せられるね!!」 「うむ、彼は今時珍しい好青年だ。粋もとても世話になったとよく話していた。後で改めて礼を言わせてもらおう」 創司くん、母3人の好感度がすっごい高いのね。 当然といえば当然か。 「焔くんも大変ですね。皇さんのようにはなかなか要領よく出来ないでしょうし」 「コウは異常なの。自分の欲望優先なのに人から恨まれない外面のよさは異常。アイツは昔っからそうなんだ。敵が多くなるのは当然な仕事なのに、敵が出来ないんだ」 「敵になった時のリスクの大きさを測れる者でなければ、相手にならんだろう。それに、リスクが分かって敵にならないのだとすれば、皇さんの技量が多くの人に認められているという事だな。それは妻として誇れる事ではないか」 真面目にお母さんが答えると、空さんの顔がぼっと赤くなった。 直球に弱いんだ・・・ 「焔くんにも特別な相手が出来れば、周囲も落ち着くのではないでしょうか」 「まぁ・・・周りの見る目は変わるだろうけど・・・あの子は・・・・・」 「どうした、空さん。歯切れの悪い話し方だが」 じっと空さんが私の事を見つめる。 「は、はい・・・・?!」 何、何、何??? 私が焔くんに告白前段階をされましたなんてご存知ありませんよね、ね、ね?? 「あの子は特殊な環境に在るからね。傍から見りゃすごく恵まれてる子だけど、本人に取っちゃ枷でしかないモノばかりなのかもしれない」 ふぅっと息を吐いて空さんが呟いた。 「空さん・・・・・・?」 「・・・・・・・」 粋達が校門を離れた少し後。 「あの方が焔さま・・・・・・・・・・写真で見たよりもずっと綺麗。嬉しいわ、あんなに素敵な方がマツリのフィアンセだなんて」 赤茶の髪の少女はニッコリと微笑むと学園の中へと入っていった。 |
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