みずのきおく・20






私、今、告白・・・されました・・・・・??



「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・さ、学校に行きましょう」
パッと身体を離して歩き始める焔くん。
ええと・・・ご自分が何を言ったのか分かっていらっしゃる??
「あ・・・・・の・・・・」
「放課後、少し話をしてもいいですか?」
「え・・・・と・・・・うん・・・」



それでは放課後に、と校門で別れるまでの記憶がない。



「だったら、僕の彼女になってくれませんか?」



告白みたいな言葉の後の平然とした態度。
本気じゃないから?
あれは冗談なの?



そんな事を考えてみても、まだドキドキが止まらない。
どうしよう。
どうしようどうしようどうしよう。
頭がぐるぐるしてわけがわかんない。
冗談だよね、冗談でしょ?



彼女



カレシカノジョのカノジョ?



一緒にお昼を食べたり
一緒に勉強したり
休日はデートに出かけたり
・・・・・・・うう、貧弱な私の想像力。



焔くんはどうしてあんな事を言ったの?
冗談なんだと思ってもどうしてドキドキが止まらないの?







選抜クラスはテスト期間中で、風眞さんと時間が合わない。
話をしたかったのに・・・残念。
でも、何を話すかっていうとそれはそれでビミョーなんだけど。


「弟さんに告白みたいなものをされたのですが本気か冗談か分からず、ついでに自分のこともよく分かりません。どうしたらいいでしょうか」


・・・・・・・・わけわかりません。


そんなこんなでグルグル持続状態で放課後に。
おもーい足取りで校門に向かうと、キラキラ属性全開の王子さまが。
待ってました、いらっしゃいました。
「お、お待たせシマシタ・・・」
「そんなに待ってませんから気にしないで下さい、ええと・・・いつものカフェに寄ってもいいですか?」
「え・・・・と・・・・」
何となく2人で話す状況を避けようとする私。
逃げですか、逃げですよ。
「7月から桃のパイと桃のショートケーキが始まったって聞いたんですが・・・」
「行きましょう、是非」
されど、ケーキ様の誘惑には勝てない私。
嗚呼・・・




「わぁ・・・・・」
目の前には表面が薄いゼリーに覆われた桃がたっぷり乗ったパイ。
プルンとしてて美味しそう・・・
「半分こしましょうか?」
焔くんの前には桃のショートケーキ。
ケーキの上にも中にも桃が敷き詰められてて、超充実した一品。
そちらもすっごく美味しそうデス。
「うん!!」
目の前のパイを丁寧に半分に分けていると、
「よかった」
ほっとしたような声。
???
「心配しなくても大丈夫だよ。私、こういうの分けるの得意なんだ」
「いえ、ちゃんと半分に分けられるか心配してるわけじゃありませんよ。粋さんがいつも通りになってくれてよかったって思ったんです」
ピタッとフォークを持つ手が止まる。
あ、あぁぁぁぁ・・・素敵ケーキ様の魅力に夢中になっておりましたが、此処に来た本当の理由は「話」をするんでしたよね。
どうしようどうしようどうしよう。
自分でも自分のことがよく分からないのに、何て答えればいいのか・・・



「朝は・・・・急にあんな事を・・・・・驚きましたよね?」
「はい、おどろきました・・・」
「それで・・・・ドキドキ・・・・・しました?」
「ドキドキしました・・・」
当然です。
ドキドキドキドキ大変でした。


「本当に!?本当にドキドキしてくれたんですか?!」
ぱぁっと輝くような笑顔と嬉しそうな声。
ど、どどどどうしたの??
「したよ、すごく・・・・・すごくドキドキした」
「じゃぁ・・・・・脈なしってわけじゃないんですね」
「・・・・・・・・・・・はい?」
じっと目を合わせられると再び心拍数が高くなっていく。
何故何故??


「朝の答え、今はいらないんです。勝手な話なんですけど・・・今は答えないで欲しいんです」
「ごめん、私が分かるように言ってくれるかな?」
頭がついていけないのか、意味がよく分かりませんよ?
「僕は年下だし、粋さんにとっては弟みたいな存在にしか見られない。だから・・・・・意識して欲しかったんです、僕を1人の男として」
「焔くんは男の子だって分かってるよ?」
「でも、恋愛対象には見てくれてなかったでしょう?」
「それは・・・・・」
そうだけど。
「僕は粋さんの事を恋愛対象として好きです。でも、今の僕は粋さんにとっての恋愛対象にはなれていない。だから・・・・・少しでもその対象に近づきたくて・・・朝、あのような行動をしました」
「・・・・・・」
「もし全然意識してもらえないなら、ドキドキもしてもらえないでしょう。逆にドキドキしてもらえたって事は意識してもらえたって事ですよね。僕、頑張ります。頑張って・・・・・粋さんの恋愛対象になれるって自信を持てるようになったら、もう1度告白させて下さい。その時、答えを聞かせて欲しいんです」
今の話も充分告白だと思いますが・・・
でも、どう答えればよく分かっていない私に時間をくれたのはすごく有難い。


「焔くんは、私のことが好きなの?」
「信じてくれませんか?」
「だって、私、綺麗じゃないし、子供っぽいし、特別に頭がいいわけでもないし、運動ダメダメだし、おせっかいでいらないこと言っちゃうし、浮き沈みが激しいし・・・・・」
あ〜、自分で言ってて虚しくなってきたよ・・・
「人を好きになるのに、理由って必要なんですか?」
「え、と・・・どうだろうね・・・気がついたら好きになっちゃってるかもね・・・」
だから一目ぼれっていうのがあるんだもんね。
私が創司くんを好きになったのも、理由なんてなかったと思うもん。


「もし、聞きたいなら言いましょうか。朝の光を浴びた湖面のように輝く澄んだ藍玉の瞳が好きです。柔らかくて風にふわふわと揺れる髪が好きです。小さめの鼻もふっくらとした唇も、粋さんを形作るもの全てが愛しく思えます。僕の名前を呼んでくれる声、心に響く歌声、自分の正義を信じる姿勢、人を思いやる優しい心・・・・・えぇと、まだまだありますけど続けましょうか?」
「イイデス、ケッコウデス・・・」
聞いてて赤面してきました。
どんな御贔屓フィルターを装備すれば、私がそんな素敵に見えるんでしょうか。



「わ、私が焔くんの事を好きになるとは限らないよ?」
「好きにならない自信があるんですか?」
自信?
あ、あるある。
あったハズ・・・なんだけど。
「あ、あり・・・マス・・・」
「じゃあ、その自信を包み込んで溶かしちゃうくらいの努力しますね?」
キラキラの微笑みは、ちょっとだけイジワルに見えた。
う・・・うう・・・・







「こんにちは、おじゃまします」
「ただいま帰りました」
焔くんの家に行くと、有希ちゃんと望くんがパタパタと出迎えてくれた。
「おかえりなさい、おにいちゃん」
「いらっしゃい、すいちゃん」
「ただいま、母さんは?」
「おきゃくさんがきてるの」
「だいじなおきゃくさんなの」
お客さんが来てるんだ。
じゃあ、私は早く荷物を持って帰った方がいいよね。


「すいちゃん?丁度よかった、ちょっとこっちに来てくれる?」
奥から顔を見せてくれた空さんが手招きをしている。
「は、はい・・・・?」
どうしようと思って焔くんを見上げると、「一緒に行きましょうか?」と言ってくれたからその言葉に甘えて一緒に奥の部屋に行ってもらった。


「失礼します・・・」
そっと部屋の中をのぞくと。
「粋・・・・?」
「お、おとうさん!?」
皇さんと空さんの前のソファに座っているのは、私のお父さんだった。
声がちょっと違うように聞こえたのに少し違和感を感じたけど・・・
・・・・・って、あれ?
お父さん、こんなにキリッとした顔できるんだ。
この方がかっこいいよぉ〜!!


「すいちゃん、この人は・・・」
「お父さん、いつこっちに来たの?お母さんとアイちゃんは?この4か月で何があったの?すっごいかっこよくなっててビックリしちゃった!」
「いや、粋・・・俺は・・・」
俺?
「聖さんは、征さんの双子のお兄さんなんだよ。すいちゃんの叔父さんに当たるね」
「聖・・・さん・・・・・?」
聖さん・・・何処かで聞いたような・・・
「あ、えーと・・・風眞の父親・・・だよ」
空さんが少し顔を赤くして教えてくれた。
「え、あ、ああ・・・・って、えぇっ!!!???」
風眞さんのお父さんが私の叔父さんって事は。
風眞さんは私の従兄弟って事??



「驚かせてすまなかった」
「いえ・・・・・」
本当に色々驚かされました。
でも、風眞さんと従兄弟同士なんて嬉しいな。
家に帰ったら風眞さんにも教えてあげなくちゃ。
「それで、すいちゃんを見てみてどうですか?」
「ああ、大丈夫、写せる。だが・・・征がどう言うか・・・」
「征さんは奥さんと娘さん達を溺愛してますからね」
???
何の話をしてるんだろう?
お父さんの名前が出てきてるみたいだけど。



「粋さんが困ってますよ、本題に入ったらいかがですか?」
焔くんの言葉にハッとする大人たち。
ナイス!!
「あぁ、ごめんね。すいちゃん、モデルをやってみない?」
「モデル・・・って?」
モデル・・・モデル・・・
街に貼ってあるポスターのモデルとか、雑誌のモデルとか・・・なんて、まさかねぇ・・・
「リュミエルってブランド知ってる?」
「はい、私の母が好きなんです。毎年、結婚記念日になると父がプレゼントしてるんですよ」
リュミエルは20代後半から40代の女性をメインターゲットにしているブランド。
細かい部分の刺繍とか、生地の色合いとか、ボタンや襟や裾の形とかちょっとした所がその年齢の女心をくすぐるらしい。
あのお母さんが女心をくすぐられるっていうんだから、そりゃもうスゴイ威力を持ってる洋服さまなのですよ。
「今年の冬にリュミエルの10代、20代向けブランドを新しく立ち上げるんだけど、そのモデルになって欲しいんだ。土曜日まで黙っていようかと思ったんだけど、先に知らせておいた方がいいかと思って」
「は・・・・・い?」
ブランドのモデルとは・・・
ご冗談にも程がございますよ?







「昨日のすいちゃんの姿を見て、新ブランドのイメージとぴったりだと思ったんだよ」
「でも・・・・・」
あの姿かぁ・・・
まぁ、私だか誰だか分らない現実離れした姿だったけど・・・
だったら私じゃなくてもいいんじゃないのかなぁ?
「そんな顔しないで。あの姿は、すいちゃんじゃないと出来ないんだから」
空さんが優しく声をかけてくれる。
「今度の土曜日、試しに写真を撮らせて欲しいんだ。メイクは空が、撮影は聖さんが、服は私が用意する。東雲が誇る最高の技術で、最高のモノをやらせて欲しい」
「あ、あの・・・ど、どうしよう・・・焔くん・・・」
大人の皆さまに対抗出来そうな唯一の頼みの焔くんを見ると、何だかぼーっとした顔をしていた。
「焔くん・・・・?」
「あ・・・すみません。粋さんは、どうなんですか?嫌ならここでハッキリ言っておいた方がいいですよ。父はかなり執念深いですが、僕が全力で阻止しますから」
ニッコリと皇さんに微笑む焔くんと、「ほう・・・」と微笑み返す皇さん。
美形な2人の笑顔なのに、ものすごく寒いのは何故・・・?


「嫌っていうか・・・えぇと・・・がっかりさせたら申し訳ないし・・・」
自分に全然自信がないんだもん。
幼児体型だし・・・
「大丈夫、すいちゃん。私には特別な能力があるからね、君にどんな魅力があるかって見えているんだ。だから、がっかりなんて絶対にしない。私の言葉を信じて、土曜日に此処に来て欲しい」
立ち上がって頭を下げる皇さん。
わ、わわわわわわ!!
「あ、頭上げてください!き、来ます、分かりました、試しにやってみてください。私でよかったら協力します、是非是非お願いします!!」



何というか変な流れでスゴイ事になってしまったわけで。
どうなるんだろう、土曜日。


そして。
お父さんのお兄さん。
風眞さんのお父さん。
聖さんって・・・どういう人なんだろ?









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