『わたしね、そうしくんのことが、すきだったんだよ』 少し開いたドアの向こうから聞こえた言葉。 僕はその場から動けなくなってしまった。 知ってた。 粋さんは、北杜さんに惹かれていたって。 北杜さんと電話で話している時。 話す声も聞く様子も輝いていた。 みんなで写真を撮ろうといった時。 すごく嬉しそうにしていた。 粋さんは自分の気持ちがよく分かっていないみたいだけど、さっきの話が答え。 近くに居る友達の写真はなくても平気。 だけど。 好きな人は近くに居ても写真が欲しい。 粋さんは、北杜さんに恋愛感情を抱いていた。 姉さんと北杜さんが恋人同士だっていう事を知って、大好きな2人と気まずくなりたくないから身を引いて、そして恋愛感情を違うものと思い込もうとしていたみたいだけど・・・ 僕は粋さんにとってただの友達で、弟みたいな存在。 僕がいくら粋さんに好きだと愛情表現を送っても、甘えているの?とすり返られてしまう。 2年の差。 大人になっての年齢差なんて微々たるものなのに、子供にとっての2年は大きすぎる。 僕があと1年早く生まれていたら、粋さんが1年遅く生まれていたら。 僕のことを異性として意識してくれた? 僕の写真を欲しいと言ってくれた? 僕に恋愛感情を抱いてくれた・・・? 僕は貴女の弟なんかじゃないんです。 1人の男として僕を見て欲しいんです。 粋さん、僕は貴女の事を愛しているんです。 「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」 あれから私は眠ってしまった。 目が覚めてリビングに出て行くと、帰ってきてた双子ちゃんたちと美両親と3人が迎えてくれた。 眠ってしまう前に言った事が気になって創司くんを見ると、いつもと変わらない様子で「少しは休めた?」って微笑んでくれた。 私は創司くんが好きだった。 ほんの少しの間だけ、今とは違った意味で好きだった。 今は人として、友達として、そして家族のように好き。 それはこれからも変わらない。 私の中の淡い小さな想いは、少しの痛みと一緒に溶けて消えていった。 消えて、無くなっていった。 そのはずなのに。 何であんな事を言ってしまったんだろう? 今さら言う事じゃないのに。 だからどうする?って話でもないのに。 「大丈夫?無理しないで泊まっていってもいいんだよ?」 「あ、いや・・・明日は学校なんで・・・」 「とまっていって」 「とまっていって、いっしょにねよう?」 ゆうきちゃんとのぞむくんが私の両手をくいっと引っ張る。 むぅぅ・・・断りづらい・・・ 「お言葉に甘えちゃえば?制服とか荷物は後で持ってくるわよ、創ちゃんが」 「「おねーちゃんは?」」 「ごめんなさい、おねえちゃんは明日からテストだからお泊りできないの。夏休みに入ったら一緒に遊びましょうね?」 あ、あ、あ、そうだった。 選抜クラスは明日から期末試験だったんだ。 特待クラスには定期試験っていうものがないから忘れかけていた!! 「風眞さん、待っててもらっちゃってごめんね・・・」 「いやだ、そんなの気にしないで。もしも、悪いなぁ〜って思ったら大事を取って無理しないで、それから試験が終わったら沢山遊んでちょうだいね?」 「う、うん。ありがと・・・」 風眞さんも優しい。 優しくて、綺麗で、凛としていてかっこいい。 創司くんと風眞さんは見た目も中身もすごくお似合いで、2人は2人で在ることが自然で当然。 2人にはいつも一緒に居て欲しい。 本心からそう思う。 ・・・・・・・。 「・・・・・じゃあ、お言葉に甘えて今日は泊まらせてもらいます。すみません」 「「わーい!!」」 「じゃ、俺は荷物を取りに家に戻るよ」 「私も帰るわ、粋ちゃん、明日学校でね」 ゆうきちゃんとのぞむくんと3人で見送ると、2人を追いかけるように焔くんが外に出て行った。 ・・・・・どうしたのかな? 「どうしたの、焔ちゃん」 「粋さんの荷物は僕が持って帰ります」 「近くだしそんなに手間じゃないからいいのに、粋と一緒に居る時間が減るだろー?」 ・・・・・はぁ。 何でこうなのかな、この人は。 「粋さんの気持ちを優先したまでです。貴方達が一緒に居られる時間を増やしてあげますよ」 粋さんが泊まると言ったのは、きっと一晩2人きりにしてあげようと思ったからだ。 そんなに気を使わないでも、この2人は長い時間を一緒に過ごしてきてるし、見てない所で散々イチャベタ甘甘な事やってるのに。 3人で並んで歩いていると、暫く何かを考えていた北杜さんが呟いた。 「裏切られた・・・・・って言ってたよな」 確かに言っていた。 でも、「僕」も「彼」も「姉さん」も「彼女」を裏切るはずがない。 「僕達」が気がついた時には「彼女」はもう・・・ 「もしかして、俺達と粋の「夢」は何か違うのか・・・?」 「そんなはず・・・」 「ない、とは言えないわね。とりあえず様子を見ましょう、私達の夢は夢であって夢じゃない。今の段階で私達が粋ちゃんの「夢」に関わるのは危険だわ」 「・・・・・・・」 夢。 僕達を繋ぎ止めるもの。 「僕達」は「彼女」を救うために夢を見る。 「彼女」が守ろうとした世界。 「僕」が壊そうとした世界。 世界は未だ、「僕達」を必要としているのだろうか? 全てが繋がった時、僕達はどうなるんだろうか・・・ 「ただいま帰りました」 荷物を預かって家に戻ると、リビングの方が賑やかになっていた。 「おかえりなさい、どうしたの?急に出て行っちゃったから心配したよ?」 「北杜さんの代わりに荷物を取りに・・・・・」 顔を上げて粋さんを見て絶句した。 藍玉の瞳、銀青色の髪。 真珠の肌、珊瑚色の唇。 「彼女」だ。 「面白い色のウィッグがあったから試してみたんだけど、似合うよねぇ。妖精さんみたいで可愛いだろう?」 粋さんの後ろから出てきた母さんが満足そうな顔で話す。 目の前に「彼女」が居る。 小さい頃から「夢」で何度も何度も見た「彼女」。 「僕」が愛した「彼女」、「僕」を愛してくれた「彼女」。 「わざわざありがとう、焔くん。・・・焔くん?」 「あ・・・・・・す、すみません。荷物、ここに置いておきますから!!」 リビングを飛び出し自分の部屋へと駆け込む。 粋さんと目を合わせられない。 顔が熱く、心臓の鼓動が異常に早い。 おかしい。 自分で思っていた以上に動揺している。 「焔くん、焔くん、どうしたの?」 暫く経って、ドアの向こうから粋さんの心配そうな声が聞こえた。 「な、なんでもありません。僕は何ともないので・・・本当に・・・」 「・・・・・・・私、変だった?」 少し寂しそうな声で、粋さんがポツリとこぼす。 「そんな事ないです、ただ、その・・・驚いてしまって・・・」 「驚いたの?」 「あ、えと・・・・・・上手く説明できません。すみません、今日はもう休みますね、おやすみなさい」 「・・・・・焔くん・・・・・」 ドアを開けてくれなかった。 私の顔を見たくなかったみたい・・・ 「照れてるんだよ、きっと」 暫く焔くんの部屋の前に立ち尽くしていると、空さんが声をかけてくれた。 「ホムラ、明日の朝になったらちゃんと出てくるんだよ」 「・・・・・・・はい」 ドアの向こうからの返事。 どうして・・・? 多分、照れてる・・・とかじゃない。 焔くんが言ってた通り、本当に驚いていたんだ。 理由はきっと今の私の姿。 実際にこんな色の髪の人なんていないのに、私はこれが馴染んでいるような気がする。 もしかして・・・ ううん、ありえない。 でも・・・・ 焔くんは、この姿に見覚えがある? 「粋ちゃん?」 「は、はい!?」 リビングに戻ってボンヤリと考えていると皇さんが話しかけてきた。 「ごめんね、何か考えてる所だった?」 「い、いえ、大丈夫です。何ですか?」 「今度の土曜日に、又、家に来て欲しいんだ」 「はい、いいですよ。何かあるんですか?」 「それは、その時までのお楽しみという事で。さて、これから色々と忙しくなるなぁ」 ニコニコと笑って楽しそうな様子で皇さんはリビングを出ていった。 「呼ぶのか・・・呼ぶんだろうね、やっぱり・・・」 何だか複雑な表情の空さん。 「呼ぶ?」 「ん?あぁ・・・・・うん、多分、土曜になるまでには分かるよ。さてと、ちょっと早いけど今日は休もうかな。すいちゃんはどうする?」 「「すいちゃん、いっしょねよ?」」 答える間もなくステレオで2人がお願いしてくる。 しかも色違いのパジャマを着て、それぞれ枕持参で準備万端。 「う、うん、えぇと・・・私、部屋を明るくしてないと寝られないんだけど・・・」 「そうなんだ?2人も暗い部屋だと寝られないんだよ」 よかった、それなら問題ないや。 「じゃあ一緒に寝よう、空さん、お休みなさい」 「おやすみ。ユウキ、ノゾム、いい子にしてるんだよ」 「「はーい。おやすみなさい、おかあさん」」 急いでお風呂に入って部屋に戻ると、2人はベッドの中でヒソヒソと何かを話していた。 内緒話? 何をしててもかわゆいなぁ。 「遅くなってごめんね」 声をかけるとピタっと話すのを止めて、いつものような無邪気な笑顔で「ねよう、ねよう」と私をベッドの中に引っ張り込んだ。 私を真ん中に、右手側にゆうきちゃん左手側にのぞむくん。 川の字で寝るなんて何年ぶりだろう。 「「すいちゃん」」 「ん?なぁに?」 両脇からピタリと2人がくっついてくる。 くすぐったくてあたたかい。 「ほんとうにほんとうのことは」 「じぶんのなかにあるんだよ」 「「わすれないで」」 わすれないで。 夢の中でも繰り返されていた言葉。 「ゆうきちゃん、のぞむくん・・・・・??」 「「おやすみ」」 言葉の意味は語らずに、2人はあっという間に眠ってしまった。 本当のこと・・・・ 「おはようございます、昨日はすみませんでした」 「ううん、私こそ。あんな格好してたら驚くよね・・・」 次の日の朝。 焔くんはいつもと変わらない様子で接してくれた。 「少し早いですけど、一緒に学校に行きませんか」 「うん、あ、お泊り用の荷物、帰りに取りに来てもいいかな?」 カバン1つ分とはいえ、学校に持っていくのはちょっと邪魔な量。 大変申し訳ないのデスが・・・ 「はい、・・・・じゃあ今日は一緒に帰りましょう。校門で待ってます」 「ありがとう、なるべく早く行くようにするね」 「待ち合わせは男が待つものですよ。急がなくていいですからね。じゃあ、そろそろ行きましょう」 自然な動きで私の通学バックを持って歩きだす。 いいよって言っても「一緒に行こうと誘ったのは僕なので」って笑顔でスルーされてしまった。 優しくて紳士な男の子。 「焔くんの彼女になる人って幸せだね」 「・・・・・・・・・・・・・・・は?」 信じられない言葉を聞いたような顔をして、焔くんは立ち止った。 「すごく大事にしてくれて、すごく甘えさせてくれそう。オンナノコの理想の彼氏」 「理想・・・・・ですか」 「うん」 完璧だよね。 足りない部分が見つからないもん。 「そうですか・・・」 「うん」 少しだけ顔が赤いみたい。 照れちゃったのかな。 普段は大人っぽい分、こういう所がちょっと出るとかわゆいな。 「だったら・・・」 「うん?」 じっと赤茶の綺麗な瞳が私を見つめる。 な、ななななな何だろう? そして、ふわりと抱き寄せられて、耳元で囁かれた。 「だったら、僕の彼女になってくれませんか?」 |
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