体育祭が終わって1週間。 学校生活は何事もなかったかのように普段通り。 ・・・・・授業は普段通りになったんだけど。 「焔くん、最近見ないね・・・」 「そうねぇ・・・中等部は中間テストがあるから忙しいんじゃないかしら?」 お昼の時間。 焔くんは私達と一緒にご飯を食べなくなった。 放課後は直ぐに帰ってしまうみたい。 「中間終わったら又「粋さん、粋さん!!」って懐いてくるわよ」 「そうかなぁ・・・」 避けられてる気がしたのは被害妄想なのかなぁ・・・ 「坊やは坊やで頑張ってる事があるのよ。・・・・って、粋ちゃん、私が居るのに焔ちゃんが居ないだけで寂しいのー??ショックだわー」 「そ、そんなじゃないよ。寂しくないよ!!」 ぎゅーっと風眞さんの細い(けど出る所はバッチリ出てる)身体に抱きつくと、午後の授業の予鈴が鳴った。 「名残惜しいけど、又、放課後ね」 ふわふわと笑って立ち上がると、風眞さんは自分の教室へと戻っていった。 はて、そういえば。 予鈴が鳴ったのに創司くんは何処に行ってるんだろう? お昼休みの途中で「用事がある」っていなくなっちゃったんだよねぇ。。。 「ボンヤリしてると授業始まっちゃいますよ、娘さん」 「みぎゃ!!」 急に話しかけられて驚いてる私を見て笑う創司くん。 何じゃそりゃー!! 「今日、当てられそうでショ。万全の体制で挑まねばですよ」 「うぅ・・・創司くんの心配なんてしてなければよかった。昼休み何やってたのよぅ・・・」 「ああ、悪い悪い。告白なるものをされてました」 サラリと答えて次の授業の準備をする創司くん。 「・・・・・・・・・・・・・はい?」 すみません、思考が追いついていかないのは私だからなんでしょうか。 告白、告白、告白・・・ ぐるぐるぐるぐるぐるぐる・・・ 告白というのはやはり愛の告白というやつでしょうか。校舎裏で「好きです付き合ってください」というやつでしょうか。でもでも、創司くんには風眞さんというステキ彼女が既にいるですよ。だからだめですよ、だめだめですよ。だってだって創司くんは風眞さんに熱中夢中フォーリンラブウィズユゥーなんですから・・・ 「ものすごく難しい事を考えてるのか?さっきの授業で分からない事があったら教えるけど・・・」 午後の授業もHRも終わったようです。 分からないも何も午後の授業はよく憶えておりませぬ。 まぁ、それはそれとして。 「告白されたの?」 「へ?あ、うん」 素直に頷く様子からサッパリ気にも留めてない出来事だったんだろうと思うけど。 「告白って、告白だよね?」 「好きです、付き合って下さいって言われマシタ」 や、やっぱり!! 「えー!?で、ななななな何て答えたですか?!」 「そうねぇ、何て答えたのかしら?気になるわねぇ」 ニコニコと笑いながら私の隣に座って尋ねる風眞さん。(いつの間に来たのでしょうか・・・) ちょっと小首を傾げて可愛いんだけど、微妙に怖いデス・・・ 「え?!風眞、気にしてくれるの?!ヤバイ・・・俺・・・感激して泣きそう・・・」 「?????」 「いいから答えなさいよ」 相変わらずニコニコとしながらも語尾がちょっと強くなってる風眞さんと、何故か目をウルウルさせて感動している創司くん。 不思議カップルだ・・・ 「「ありがとう、でも、大事な彼女が居るので付き合えません、ごめんなさい」って言いましたですよ」 「・・・・・・まぁ、及第点はあげる。女の子を傷つけるような態度取ったら、ボッコボコにしてあげるから。これからも気をつけるのよ?」 「・・・・・はい」 ええと・・・?? 「風眞さんは・・・創司くんが告白されてもいいの?」 恐る恐る聞いてみる。 普通はあまりいい気がしないのでは・・・ 「人の気持ちは自由だもの、その事に対して嫌だとは思わないわ」 ケロッと言いなさる・・・・ 「告白するのには勇気がいるでしょう。その勇気に対して誠意を持った態度で返答が出来るかどうか、そっちの方が大事だと思うの。私の価値観、だけどね」 「風眞さんらしいね。創司くん、彼女をものすごく大事にしないとだよ?」 「勿論でございますよ」 一般的な恋人同士の甘さはあまり感じられないけれど、この2人は2人で在る事で完成される気がする。 失恋したばっかりなのにあっという間に立ち直っちゃったのは、自然とそれが分かったから。 今でも創司くんは好きだけど、これは恋じゃない。 人として好きなんだ。 性別なんて関係なく「好き」なんだ。 じゃあ、私の初恋って・・・・・・・恋じゃ・・・なかった・・・??? 「粋ちゃん?」 「粋?」 「ふぁい!?」 わわわわわ、ボンヤリボンヤリしておりました。 「大丈夫?」 「はい、はいはい。大丈夫でございます!!帰りましょ、帰りまショ!!」 3人で並んで歩く。 帰り道の話題は大体「今日のお買い得品と夕飯の献立」について。 「今日は第2金曜恒例タマゴのお買い得デーだったよね!!」 「1パック100円。1人2パックまでよねぇ〜」 「お嬢さん達・・・どんだけタマゴを買う気ですか・・・」 16歳の男女の話題がコレでどうだって感じだけど。 「タマゴって何にでも使えるもん。それに結構長持ちするからいっぱいあっても平気だもん」 「一番食べるくせにうるさいわねぇ」 「がーん!!!」 わいわい話しながら校門を出ようとすると、黒い車が門の直ぐ側に止まった。 はれれ? なーんか見た事ある車かも。(・・・って車の識別なんて大して出来ないけど) 「・・・・・急ぎましょう、粋ちゃん」 「え?うん、そうだね。タマゴ売り切れちゃうかもしれないもんね」 きゅっと私の袖をつかんで早足になる風眞さん。 はてはて?そんなにタマゴに対する情熱がすごかったっけ・・・? 「放課後はフラフラと遊び歩いているのかしら。教養はなくても顔だけで寄ってくる男は沢山いそうですものね」 車から1人の女の人が出てくる。 うぇ・・・又あの人だ・・・ 何で此処に居るのかなぁ・・・ 「そちらの小さなお嬢さんは本当に「友達」みたいね。可愛い顔をしてるのに、どんなに汚らわしい遊びをしているのか怖いわ」 ・・・・・私も目をつけられたみたい。 こんな事言って何か楽しいのかなぁ? 「そんな色に髪を染めて、頭が悪そうに見えるだけなのに自分では分からないのかしらねぇ」 地毛なんですけど・・・ 目の色を見て察して欲しいんですけど・・・ 染めるなり脱色なりするにしても、この色は気合が入りすぎでしょうよ。 この人・・・思い込みが激しいのでしょうか・・・ 「女帝さん、いい加減に止めておいた方がいいですよ。汚い言葉は自分の品位を落とすだけでしょ」 創司くんは私達を背中にして「先に行ってて」と促してくれた。 「行きましょう」 「う・・・・・ん」 こっちに非がないのに逃げるみたいで嫌だけど、この人の言葉を聞いてるだけで心が重くなってくるから。 それに・・・表情には出していないけど、風眞さんがどんどん傷ついていくのが分かるから。 「そんな欠陥だらけの身体を持った出来損ないの娘なんていい加減に捨ててしまえばよろしいのに。その程度の顔の娘なら私がいくらでも紹介して差し上げますわよ。小さい方の趣味はよく分かりませんけど・・・比較的可愛い顔といっても十人並みですものね・・・」 「はいはいはいはい、これ以上はもう許せない領域に入っちゃうので本当に黙って下さい。ね、焔?」 「・・・・・・・・・」 振り返ると校内から出てきた焔くんが車の前に立っていた。 「あら、今日は遅かったのね」 私達の事を完全に世界から追いやって、女の人は焔くんへと話しかける。 「・・・・・・・すみません、急に中央委員の仕事を手伝う事になったものですから」 「いいのよ、少し心配しただけだから。さぁ、行きましょう」 すっごい笑顔で焔くんを車内へと促してる。 見事な変わり身デス。 焔くんは分からないのかなぁ・・・って、そうだ!! 今、こんな所で何だけど・・・ 「焔くん!!」 「・・・・・・・はい」 久しぶりに目が合ったから? 綺麗な綺麗な赤茶の瞳。 それは前と変わらないはずなのに。 何かが・・・違う。 「あ、あのね、この前は・・・・」 「行きましょう」 「ごめんね」って言いたかったのに。 言えなかった。 「焔くん・・・」 走り出した車に向かってポツリと呟くと、何だか涙が出そうになった。 ちゃんと話したいよ。 「ごめんね」って謝って、「一緒にケーキを食べに行こう」って誘って、お茶を飲みながら他愛のない事を話したいよ。 ねぇ・・・ 「・・・・・・っ」 右腕の重みにハッとして風眞さんを見ると、青ざめた顔ですごい汗をかいていた。 胸を押さえて、息づかいも荒くてすごく苦しそう。 「風眞!!」 「風眞さん!!」 駆け寄った創司くんが身体を抱き上げると、唇を僅かに動かし何かを呟いて風眞さんは意識を失った。 「・・・・・・これから病院に行ってくる。今晩は戻れないかもしれない」 「創司くん・・・風眞さんは・・・ど、どう・・・」 泣きそうになる私に困ったように、でも、優しく微笑んで。 「大丈夫だよ。ちゃんと2人で家に帰るから、心配しないで待っててくださいな」 その言葉を信じて、私は1人で家に帰っていった。 「子供みたいな顔をして、焔さんに色目を使うだなんてとんでもないわ」 「・・・・・・・」 「でも、焔さんはあんなくだらない娘に引っかかるような愚かな子じゃないから安心ね」 「・・・・・・・」 「貴方は私の可愛い子なんですもの。ねぇ・・・」 「・・・・・・・ええ」 愛しそうに優しく手を握る女を見返す目は溜息が出る程に美しい。 しかし、その美しさが尖った硝子のようなものだと気がつく者はその場にいなかった。 |
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