「今日は本当にごめんなさい」 楽しい夕飯の時間、のはずなのにどんよりムードが漂ってる。 「風眞さんが謝る必要ないよ。失礼なのを承知で言うけど、あのオバさん酷い。どんな事情があるか知らないけど、言っていい事と悪い事が分かってないみたいなんだもん。言葉で風眞さんを傷付けて・・・嫌だ、ああいうの凄く嫌だよ」 「粋ちゃん・・・・・」 「それに、焔くんも酷いよ・・・」 どうして焔くんはあんな態度をとったんだろう。 どうして私達を無視したんだろう。 未だ知り合ってあんまり時間が経ってないけど、友達だって思っていたのに。 「でもさ、焔が来てくれたからあれ以上コジれなかったんじゃないか?」 「そうね。粋ちゃん、焔ちゃんのことを悪く思わないでいてくれる?」 「・・・・・・・・うん」 友達なのに、って思う私。 でも、その私が友達を信じてあげられないのはよくない。 焔くんだってきっと・・・きっと何か考えがあっての事なんだよね? そうだよね・・・・・? 「粋ちゃんには悪い事をしたわ」 午後9時。 粋ちゃんは疲れてしまったのか早々に寝てしまった。 「あの人には会わせたくなかったんだけど・・・上手くいかないものね」 怒りという感情を滅多に持たない彼女を、本気で怒らせてしまった。 真っ白な心に染みになる汚いモノを落としてしまった。 「まさか、女帝が来るとは思わなかったよな。オッサンと焔に会いたいなら直行しろっつーの」 「悪態ついて絡みたくなる程、私の事が憎いんでしょう。お互い不快な気持ちになるだけなのにね」 私とお母さんを憎悪する大叔母。 彼女にとっては私達の存在自体が許されないモノ。 「焔のヤツ、すごい怒っていたな」 「そうね。あの場でそれが分かったのは私と創だけとはいえ・・・」 『クソババア・・・』 声には出していない。 表情も爽やかな笑顔のまま。 だけど、口がそう動いていた。 あの子は自分に無関心、何を言われようと気にしない。 ただ、自分の大切に思っているモノが攻撃された時には過剰な反応を示す。 「彼女」に汚い言葉を投げ「ろくでもない娘」と言い、負の感情を持たせた。 これは万死に値する行為。 更に・・・ 『焔くんの、ばか!!』 あそこでガクリと膝をついて落ち込まなかっただけでもオトナになったと評価すべきかもしれないけれど・・・ 「怖いな」 「ええ・・・」 あの子は容赦というものを知らない。 敵は徹底的に潰す。 大叔母は近いうちに制裁を受けるだろう。 同情はしない。 後悔をしない人に同情するほど私は優しくないから。 でも・・・・・ 「大丈夫だよ、焔はバカじゃない。粋には気付かせないって」 「そう・・・ね」 世界が美しいものばかりだったらいいのに。 せめて、彼女の周りだけでもいいから。 許せない、許さない。 キミを傷つける全てのモノは、 ボクが綺麗に失くしてあげる。 「・・・・・おあよぉ」 次の日。 遅く起きた朝。 風眞さんも創司くんも出掛けちゃったみたい。 キッチンのテーブルの上にあったハムエッグとパンを食べて、温かいカフェオレで一息。 生まれて初めて陸上競技で1位になれた日。 すごくすごく楽しい思い出になるはずだった日。 なのに・・・ ふとテーブルの端に目をやると手紙が置いてあった。 何だろう・・・??
「風眞さん・・・」 手紙の下の方に小さく書かれた言葉。 胸がぎゅっとした。 背筋を伸ばして、真っ直ぐな瞳で、凛とした姿の風眞さん。 未だ短い時間しか一緒に過ごしていないから分からない事の方が多いかもしれない。 だけど、すごく優しくて温かい心を持ってるって私は思ってる。 「・・・・・私も大好きだよ」 私も何か風眞さんの力になってあげられればいいのに。 何か・・・ほんの少しの間でも息を抜けるように。 「「すいちゃん!!」」 「いらっしゃい、すいちゃん」 「急にお邪魔してすみません」 急な訪問だったにも関わらず、2人と空さんは熱烈歓迎をしてくれた。 「来てくれてよかったよ。原因は分からないんだけど、あの2人、昨日から塞ぎこんじゃっててねぇ・・・」 「そう・・・ですか」 やっぱり。 風眞さんが思ってた通りだったんだ。 「学校で何かあったの?」 「いえ・・・・・」 話してはいけない気がした。 あの女の人に対する2人の怯え方は普通じゃなかったんだけど・・・ でも、話したら更におかしな事になりそうな気がしたから。 「そう・・・・・。ホムラも様子がおかしかったから何かあったのかと思ったんだけど、思いすごしかね・・・」 昨日は平然としてたのに・・・ どうしたんだろ?? 「焔くんは今日はどうしてるんですか?」 「朝早くに出掛けたよ。オシャレして・・・てっきり粋ちゃんとデートかと思ってたんだけど」 「は・・・・はぁ・・・・」 空さん、何故そこで私が出てくるのでしょうか・・・ でもでも、今日は出掛けててくれてよかったかも。 昨日はいい過ぎたって思うけど、何となく顔を合わせずらいんだもん。 「「すいちゃん、なにしてあそぶ?」」 「え?あ・・・うーん・・・」 きらきらとした目で私を見上げる2人。 きゃわいい・・・ きゃわいいけど、2人と全力で遊ぶ体力は・・・・ない。 「・・・・空さん、キッチンをお借りしていいですか?」 「ん?いいよ」 「「おりょうりするの?」」 「お菓子を作ろう。色々な形のクッキーを沢山作ろう、ね?」 花の形。 星の形。 鳥の形。 猫の形。 「「できたー!!」」 「うん、上手にできたね!少し冷ましてから皆で食べようか」 チョコを入れたり、レーズンを入れたり、ジャムを乗せたり・・・ 粉だらけになりながら一生懸命作った沢山のクッキー。 「いい匂いだね、とても美味しそう」 キッチンに入って来ようとする空さんを2人が押し返す。 「おかあさんはあっちなの」 「いまおちゃをもっていくからね」 「「おとなしくまっているんですよ」」 苦笑い。 2人とも、おもてなし的な事をしたいのかな? 「今日はどうもありがとう。2人ともすごく楽しんでたみたいだよ」 「私も楽しかったです。キッチンを貸していただいて有難うございました」 2人が楽しんで元気になってくれたならよかった。 「今度は私も一緒に作らせてもらおうかな」 「はい、是非。あ、その・・・これ、焔くんに渡してもらえますか?」 「今日のクッキーだね。うん、わかったよ。ちゃんと渡しておくからね」 可愛い紙袋に入れたクッキーを空さんに手渡して双子ちゃんに見送られて外へと出ると、もう夕方になっていた。 んー・・・お夕飯は何にしようかなぁ・・・ ぽややーんと歩き始めると目の前に黒い車(車の事は分からないけど高そう!!)が止まった。 あ、危ない危ない・・・ 車を避けてさっさと立ち去ろうとすると。 「今日は有難うございました」 「焔さんだったらいつでも歓迎しますわ、又いらしてね」 車から出てきたのは焔くんで、 車の中に居たのは昨日の女の人・・・・ 「あ・・・・」 「・・・・・」 焔くんはチラっと私の事を見ると、女の人にお辞儀をしてから行ってしまった。 どうして・・・? どうして無視するの? 胸がチクチクする。 どうして・・・? 友達だよね? 私達、友達・・・だよね・・・? 「ただいま。夕飯は済ませてきましたので、僕の分は結構です」 「そう・・・あ、今日はすいちゃんが双子達とクッキーを作ってくれたんだよ。はい、これがホムラの分」 部屋に戻って手渡された紙袋を開くと、ふんわりと甘い香りが辺りに広がる。 ふっと微笑み、中から1枚取り出そうとすると指先にカサリと何かが当たった。
「粋さん・・・」 小さな手紙を両手で抱いて、その場に座り込んで呟く。 「貴女を傷つける者は許さない。例え、血が繋がっていたとしても・・・」 薄暗い部屋の中、一点を見つめるその瞳の中には細く紅い炎が揺らめいていた。 |
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