おっきくなっちゃった⇔小さくなりました(8)








「アース、アース、アースー!!」
「・・・・・」
どんより雲発生装置のアースは、お化けちゃん的格好で目の前をピョコピョコ動くルナソルに無反応。
「アースアースアースアースアースアースアースアースアースアース!!!」
目の前で動いているだけでは気がついてもらえないと思ったのか、もにゅもにゅとアースの頬を引っ張ってみる。
意外や意外。
モッチモチした柔らかい感触。
「チョー気持ちイイー!!」である。
あまりの気持ちよさに夢中でもにゅもにゅするルナソル。
毎度のことながら目の前の快楽にハマりやすい性格。





もにゅもにゅもにょもにょもにゅもにゅもにょもにょもにゅもにゅもにょもにょもにゅもにゅもにょもにょ・・・・・・





「もー、止めてよー!!」
「ほぇっ!!」
いくらどんより状態でも自分の顔の形状が歪む危機が訪れれば何かしらの反応は起こす。
今がその時。
「・・・・・・ちゃんと聞こえてるよ、何?」
「ほぇ・・・・・・」
後から悔やむから後悔という。
又もやキツい口調になってしまった事に自己嫌悪するアース。
動きが止まったルナソルの顔を覗きこむと、目がテン、口ぽかーん状態。
分かり易く表現すればハニワ顔。
何かを考えているのか考えていないのか判別しづらい事この上ない。



「る、ルー・・・・・?」
「ごめんなしゃい、あと、ルーはおこってないのでだいじょうぶなのよ」
「へ?!」
何故、加害者側と被害者側の言葉が同時に発せられるのか。
いくら付き合いが長いとはいえ、ルナソルの言動は不可解極まりない。
「あ、あのですねアースさん。ルナソルさんは止めて欲しい事をしてしまってごめんなさいと言ったのではないかと思います。後、先ほどの件・・・・・その・・・・・アースさんがルナソルさんの手を掃った事を・・・・・」
「あ・・・・・」



『大丈夫だよっ!』



先ほどまでの気持ちがぶり返しそうになったところでルナソルと目が合う。
「あ、あ・・・・・・ごめんね、ルー」
「あい。ルーはおこってないのでだいじょうぶなのよ。だから、またなかよしね?」
抜群の美女には似つかわしくないニョヘラ〜とした締まりのない笑顔。
だが、ルナソルらしい最高に素敵な笑顔だった。



「ほらほら!こういう時は握手だろ?」
今まで真面目に繋いでいた手を離し、プルートはアースの右手をルナソルの目の前に差し出した。
「仲直りは握手するんだよ。右手と右手を繋いで「仲直り」って言うんだ。やってみな」
「あい」
「あ・・・・えと・・・・・」
ルナソルとアースの手が久しぶりに繋がれる。



「「なかなおり」」



自然と2人の顔に笑みがこぼれる。
手と手を繋ぐ。
それだけの簡単な事なのに2人はたまらなく幸せな気分になれた。
「本当にごめんね。痛くなかった?」
「だいじょぶなの。ルーはじょうぶなのがとりえなのよ」
何処でそんな言葉を覚えたのか。
意味はあっているが分かって使っているかは怪しい。



※ ※ ※ ※ ※




「一件落着?はぁ・・・・・早く解決してよかったよかった」
「頑張ったじゃないですか」
「え?ぼ、僕、頑張ったかな?」
ホリーのお褒めの言葉に喜びを隠せない。
「私だけではこんなに早く2人を仲直りさせられなかったと思います。ありがとうございました」
プルートがいなければアースのヤキモチは無かったし一連のゴタゴタは発生しなかったのだが。
幸いにもそれに気がついている者はこの場におらず(当事者すらも気がついていない)、プルートは100%の感謝の気持ちを素直に受け止めることができた。



「そ、そんな礼なんていいよ。仲直りできればそれでオッケーじゃん」
「ふふふっ、プルートも自分で言うようにお兄さんになったんですね。お姉さんは少し寂しいです」
プルートにラブチャンス到来の予感??
「あ、あ、あ、えと、あの、手・・・・・繋がない?」
「はい?」
「いや、あの、お子様達見てたら何だか・・・・その・・・・」
モジモジ純情男子。
彼の最大級の勇気発動。



「いいですよ、はい」
差し出された小さな手。
耳まで真っ赤になったプルートは、壊れ物に触れるかのようにその手を握った。
「そんなに気を遣わなくても大丈夫ですよ。私が頑丈なのは知っているでしょう?」
「そういう訳じゃ・・・・・えと・・・・・手、冷たいんだ。昔はそんな風に思わなかったんだけど」
「そういえばセンセイもそんな事を言ってましたね・・・・・」
ハッとした顔で立ち止まる2人。
ただ、2人2様にハッとした原因は違う。



「あの男と手繋いでんのか?!」
「外見年齢が変わっても体質は実年齢のままなのかもしれません。だとしたら、お酒の加減が微妙になってくる・・・・・?」
「なぁなぁ、あの男と手繋いでデ、デートとかしてんのか?!それってアレだぞ?不倫ってヤツだぞ?そんなのお互い不幸になるだけだかんな?」
「直接飲んだわけでもないのにあの酔い方は・・・・・かなりお酒に弱いと考えた方がいいですね」
「最初は遊びのつもりでも気がついたら本気になっちゃって、泥沼化するんだぞ。それで、大体は女の方が泣く事になるんだ。僕はホリーが泣くなんて・・・・・許せない」
「はぁ?!何で私が泣くのが許せないんですか?さっきからブツブツ言ってますけど一体何なのですか?私に話しかけてるのでなければ少し黙っていて頂けませんか?うっとおしいですから」



『 うっとおしいですから 』



直下型地震発生。



「ホリーしゃん、おかいものいきましょ?」
「すみません、お待たせしてましたね。ほら、ボケっとしてないで行きますよ。返事は?」
「・・・・・・はい・・・・・」
またしても硝子のハートにピシリとヒビが入れ、ちびっこホリーに引きずられるように歩く少年プルート。
しょんぼりでも繋いだ手は離さないところがスゴイ。



「どしたのぷーしゃん?げんきないです」
「私に叱られたので落ち込んでいるのですよ。全く、少しは成長したかと思えばまだまだ子供なんですから」
全くもって容赦ないホリー。
ドスドスと音を立てて無数の見えない矢がプルートの全身に突き刺さる。
「ぷーしゃんこどもなのですか」
「子供ですよ。ルナソルさんやアースさんの方がずぅぅぅっと大人です」
「ルーおとなですか?!うわぁぁい!!ねぇねぇ、アースとルーおとなだって!!ほんとおとななったかなぁ?」
「うん??まぁ、とりあえず落ち着こうね」
よく分からないポイントで歓喜するルナソルが、ズルズルな格好である事を忘れていつも通り飛んだり跳ねたりしないようになだめる「オトナ」なアース。
ルナソルのハイテンションに反比例するようにプルートのテンションはどどどんっと落ちていく。
先ほどまで春がキタ!!勢いだったのに一寸先は闇。



「シャキッとしなさい。子供達の前でみっともないでしょう」
「はい・・・・・」

なでなでなでなで・・・・・

何を思ったか突然、ルナソルはプルートの頭を撫で始めた。
俗に言う「いいこいいこ」な撫で方で。
「ルー・・・・・何をしているの・・・・・かな?」
「ルーはおとなだからこどものぷーしゃんをげんきづけてあげるのです」
理由を聞けば更に脱力。
見た目はどうあれ幼児に元気づけられようとする大人。
情けないことこの上ない。



「すみません、プルートさん。ルーに悪気はないんです・・・・・」
「あ・・・・・うん、ダイジョブ・・・・・」
大丈夫。
大丈夫、だって大人だもん!
「浮き沈みが激しいのはいつもの事ですから気にしなくていいですよ。早くお買い物をしないと夕飯が遅くなってしまいますね、行きましょう」
そう言うとホリーお買い物隊長は弟分を引っ張ってズンズンと歩みを進めて行く。
時間厳守。
計画遂行。
我が道に敵なし。



「いこ、アース」
「うん」
でこぼこ4人組、ようやく始動。







「 おっかいもの♪ おかいものっ♪ 」
『 オッカイモノ♪ オカイモノッ♪ 』
『 オッカイモノ♪ オカイモノッ♪ 』
『 オッカイモノ♪ オカイモノッ♪ 』
『 オッカイモノ♪ オカイモノッ♪ 』
ぽかぽか陽気に誘われて上機嫌でルナソルが口ずさむと、ふぃよふぃよふぃよふぃよ・・・・と周囲から精霊達が同じように歌いながら寄ってきた。
「う、うわぁぁぁ!!何だかすっげぇ・・・・・」
「プルートさんも見えるんですか?」
「あぁ、見えるだけだけどな」
「見えるだけ」と言っているが、精霊の姿を見ることも言葉を聞くことも出来ない人の方が圧倒的に多いのだから見えるというだけでもちょっとスゴい事だったりするのだが。



「どうしたんですか?」
ホリーは圧倒的多数の「見えない」側なので何が起きているのか分かっていない。
「ルーの歌に誘われて、その辺の色々な精霊達がごちゃごちゃっと集まってきてるんだよ」
「因みに・・・・・ルーと一緒に大合唱もしてます・・・・・」
呪歌の才能があるルナソルは、即興の歌でもノリノリな気分で歌えば何かしらの効果を持ったものになってしまう。
この「お買い物の歌」は付近の精霊に対して「みんな集まって一緒に歌っちゃおうゼ!」の効果を与えているようだ。



「それは楽しそうですね」
「いや、かなり・・・・・キモい・・・・・」
「ごちゃごちゃ」から「うじゃうじゃ」に数が増え、ルナソルの周辺は視界がモヤモヤとしている。
普段は人前に姿を見せない精霊達を呼び寄せるのだから恐るべきパワー。
プルートの顔色が段々と悪くなっていく。
「ルー、楽しいだろうけど歌止めてもらっていいかな?」
「どして?」
「精霊さん達をあんまり遠出させると気の毒だから・・・・・えと・・・・・僕達に付いて来て帰り道が分からなくなっちゃったら可哀想でしょ?」
土地の精霊が帰り道が分からなくなるわけがないのだが・・・・・
精霊が大集合し始めてから明らかに体調が悪くなったプルートを心配して、アースは悪意のない嘘をついたのだった。
「ほぇっ!?おうちかえれないのたいへんだよ!!みんなおうちかえってね?」
まんまと騙されたルナソルは急いで集会を解散させた。



「グッジョブ・・・・・」
ほっとした声でアースの肩に手を置くプルート。
顔色は未だよくない。
「大丈夫ですか?」
「あぁ・・・・・うん・・・・・」
「ぷーしゃん、どしたの?」
とととっと近づいて来たルナソルの頭や肩には、未だびっしりと精霊達がくっついている。
「うぐっ・・・・・」
口を抑えてホリーの背中に隠れるプルートに、お子様達は首を捻った。



「もしかして・・・・・」
「ぷーしゃん、しぇーれーしゃんきらいですか?」
「いや・・・・・違う・・・・・」
「うじゃうじゃ・・・・・・・あぁ、そういう事ですか。仕方ありませんね」
1人納得した表情のホリーは、プルートの背中を優しく擦った。
「ありがと・・・・・ごめん・・・・・」
「謝罪の言葉はいりません。あそこのお家でお水を1杯分けてもらいましょう。スッキリすると思いますよ」
「うん・・・・・アースとルーもごめんな。折角、楽しい気分だったのに」
よろよろと立ちあがってお子様達の頭を撫でて弱々しく笑うプルート。



「お水、僕がもらってきます」
「ルーもいく!!」
「ほら、私達も行きましょう」
「あ、うん・・・・・ごめ・・・・・違う・・・・・はぁ、情けない・・・・・」
「何を言ってるんですか。誰にだって苦手なものはあります。貴方は小さい生き物が沢山集まっている様子を見るのが昔からダメでしたものね」
「1人ずつだったら可愛いのになぁ・・・・・うっ・・・・・思いだしたら又・・・・・」
先ほどまでのツンツンとした態度とはうってかわった優しい口調に感動したり、うじゃうじゃを思い出して気持ち悪さをぶり返してみたり何とも忙しい。



「あらあら・・・・・もう、今日は特別ですからね?私が届くようにかがんで少し口を開けて下さい」
言われた通りに身をかがめると、ひやりとした小さな手がプルートの両頬に添えられた。
「私は治療魔法が使えませんが、幸いな事に貴方との体質の相性はいいので私の魔力を少しだけ分けてあげれば体調が回復するでしょう。ほら、直ぐに終わりますから口を開けて」
「ま、マジデスカ・・・?」
「まじですよ。お互い、ちょっと唇が触れたくらいで気にするような歳でももうないでしょう?」
「と、歳なんて関係ない!!ぼ、僕は、気にするんだからなっ!!」
顔を真っ赤にして否定をすると、プルートはがっしりと小さなホリーの身体を抱きしめた。



「い、痛いじゃないですかっ!何をそんなに怒っているんですか?!」
「僕は誰だっていいとか大人になったから平気だとか思ってない!」
「・・・・・・私では嫌だということですか?」
「ち・が・う!!ホリー以外の奴なんて嫌なんだよ!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・言ってる意味が分かりません」
一世一代の告白を「意味わからん」で返され灰になるプルート。
哀れ過ぎる・・・・・



その頃、お子様達は。



※ ※ ※ ※ ※




「ごめんください」
「ごめんくだしゃい」
「はーい、はいはーい」
2人の声に答えて家の中から出てきたのは、15,6歳の少女だった。
「こんにちは。ぷーしゃんがおみずほしいのでくだしゃい」
「は・・・・・??」
見た目が怪しいだけでなく言動も不可思議。
少女の顔に『不審』という2文字が浮き上がりそうなのを見ると、アースは慌ててフォローをいれた。



「すみません。すぐそこで知人が具合が悪くなってしまったので、お水を1杯分けて頂きたいのですが」
普段は美しすぎる面々に囲まれているために目立たないが、アースも一般的にはかなりの美少年だったりする。
少し困ったような表情でお願いをすれば、それこそ世の女性達の母性本能をバンバンに刺激する程の威力を持っている。
今、当に今、その威力が最大限に発揮された!!



「よかったね、直ぐに持って来てくれるって」
「・・・・・むぅ〜」
よかったよかったと思い覗いたフードの下の顔は何故か不機嫌。
「・・・・・どうしたの?」
「ルーおねがいしたらへんなかおしたのに、アースがおねがいしたらにこにこでいいよっていったのよ」
「それは・・・・・」
ルナソルの頼み方が悪かったからとはハッキリ言えないので口ごもっていると、家のドアが開いた。



「お待たせ。お水、瓶ごとあげるわ」
「どうもありがとうございました。行こう、ルー」
「あい。ありがとごじゃました」
ぺこりと頭を下げてプルートの元へ戻ろうとした2人の背中側・・・・家の中からガシャンという何かが割れる音がした。



「お母さん?」
「サンク・・・・・タム・・・・・」
2人が振りかえると、水をくれた少女の後ろで青ざめた顔色をした中年の女性がルナソルを指差して震えていた。
「サンクタム・・・・・?」
「どうしたのかなぁ?」
「地の民殺しの魔女っ!!」
首を傾げたルナソルに向って、女性は割れた花瓶の欠片を投げつけドアを閉めた。



「ひゃぁ!!」
「っ!」
欠片はルナソルを庇って前に出たアースの肩にぶつかった。
「ルー、大丈夫?」
「びっくりしただけだよ。アースは?アースいたい?」
「平気」
至近距離で拳大の陶器の塊がぶつかれば丈夫な身体であっても流石に痛い。
だが、アースにぶつからなければルナソルの顔に直撃する位置だった。
それを防げただけでいいと考えるアースは余計な心配をかけまいと、ただ優しくルナソルの頭を撫でて静かに微笑んだ。



「アースさん、ルナソルさん!!」
「おい、どうしたんだ?!」
「おばしゃんがルーのことしゃんくたむっていっていしをアースにぶつけたのよ!!」
「えと・・・・・とりあえず僕達に怪我はありません。ただ、ルーの事を『サンクタム』だと言って怖がっていたようなのが気になります」
騒ぎに慌てて駆けつけたホリーとプルートだったが、被害者と思われるアースが事を荒立てたくない様子だった為に口をつぐんだ。



「サンクタム・・・・・ホリーさんのお兄さん達もその名前を出した時の様子がおかしかったですね。最初に出てきた女の人はルーを見ても怪訝な顔をするだけだった、でも、後の人は怯えた。『地の民殺しの魔女』・・・・・・ホリーさん、プルートさん、この土地で「サンクタム」って何なんですか?」
「私はセンセイの守護竜の名前だと思っていました」
「僕は初耳」
暫くノースガルドを離れていたホリーだけでなく、ずっと住んでいるプルートも知らない。
「・・・・・・ホリーさんは今おいくつで、お兄さん達との年齢差はどれくらいですか?」
「私の実年齢は30です。上が18、下とは15歳離れています」
年齢を聞いたアースは黙って目を瞑って考え込んだ後、ルナソルが被っているフードを外した。



「そうですか・・・・・・・何となく分かりました。とりあえずルーはこのぶかぶかの服を脱ごう」
「いいの?これきてないとおかいものいけないでしょ??」
「ごめん、着てない方がいいみたい。多分・・・・・この格好は一定の年齢以上の人にサンクタムを連想させるんだ」
「ほぇ・・・・???わかんないけどぬぐー!!」
喜々としてぶかぶかローブから脱皮したルナソル。
先ほどまでの「怒」の感情は綺麗さっぱり吹き飛ばして上機嫌。
よっぽどぶかぶかローブがお気に召さなかったらしい。



「どうしましょう、お買い物は止めておいた方がいいでしょうか」
「いいえ、このまま行きましょう。ルーの面倒は僕が見ます。あ、そうそう、プルートさん、お水頂いたのでどうぞ」
「あ、ありがと・・・・・」
気分が悪かったことも忘れていたくらいだったが、プルートは渡された瓶の水を1口飲んで再びお買い物の旅へと向かった。









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