おっきくなっちゃった⇔小さくなりました(6)








「ルーは時の能力者なんだってな?」
「しょですよ。ルーはときのはくりゅうなのです。アースはめいのはくりゅうなのです」
「はくりゅう・・・・・・え?!アンタ達って竜なのか?!」
「しょですよ。ルーとアースはゆーごーしてはくりゅうになるのです」
「ゆーごー・・・??合体でもするのか?」
ルナソルにとっては普通の事だが、普通の人にとっては普通の事ではない。
竜という種族を見るのも稀な上、融合と言われてもピンとくるわけがない。



「がったいじゃないです、ゆーごーです。アースとルーがふぃよーんってひとりになるです」
「一人にねぇ・・・」
「へんなのですか?」
「いや、すげーなぁと思うよ。ルーも坊やも。皆が出来ない事出来るんだもんな」
「しょですよ、すごいのです。あのね、アースはいっぱいマホーもつかえるし、いろいろしっているのです。だからすごいのです」
素で感心してくれるプルートに気分がよくなったのか、えへんと胸を張って得意そうにアースの自慢をするルナソル。



「ん?ルーは坊やがすごいのがすごいのか?」
「ぼうやじゃないです、アースです」
「あぁ、悪い。アースな」
「おとしゃまはつよくてかっこいいのです、おかしゃまはやしゃしくてうたがじょうずなのです。おとしゃまもおかしゃまも、かみののうりょくしゃでいっぱいマホーつかえるのです。おとしゃまもおかしゃまも、みんなにすごいねっていわれてるのです」
アースの話をしていたはずなのに突然「おとしゃまとおかしゃま」の話に切り替わる。
ルナソルの我が道を行く話し方に混乱しながらも「オトナ」なプルートは黙って話を聞き続けた。



「でもね、ルーはよんだいじょくしぇいのマホーはなにもつかえないの。ときのマホーもうまくつかえないし、いつもしっぱいばっかりでみんなこまらしぇてるの。でね、おとなのひとがいってたの。「みじゅのたみのちなんかまじゃるから、おちこぼれがうまれるんだ」って。よくわかんないけどね、ルーのしぇいでおかしゃまもわるくちいわれるのよ・・・・・」
ルナソルの家、ブレイズ家は火の民の純粋な血脈を重んじる家系だ。
ルナソルの母親であるシイラは水の民。
本家の血筋に異種族の血が混ざったとあって、一族の中でルナソルやシイラを白い目で見る者も少なくない。
未だ小さいルナソルの前で皮肉を言ったり堂々と陰口を叩いたところで、どうせ理解していないだろうと思った大人たちは甘かった。
難しい言葉は理解出来なくても、ルナソルには意味が分かっていた。
「自分のせいで大好きなお母さんが悪く言われている」
ぽやーんとした表情をしながら、幼い心を痛めていたのだ。



「何だよ、それ?!意味わかんねぇ。今はまぁその・・・・・おねーちゃんな姿してっけど本当は未だ子供だろ?能力者の子供が能力者になるのは可能性が高いってだけだし、成体化してからの能力開花だってあるんだ。僕だってそうだったし」
「プーしゃんはこどものときマホーつかえなかったですか?」
「あんまりな。それでバカにされたりもしたけど、ホリーはいつも僕を庇ってくれたんだ。「人の優越を決めるのは能力の強さではありません。分かりやすいモノを例えにしてそれだけで評価をするのは愚かな事です」ってさ、男として情けないけどカッコよかったなぁ」
「ほぇー」
途中途中の言葉の意味はよく分からなかったが、「ホリーかっこいい」という部分だけは頭に残ったらしくしきりに感心するルナソル。



「そうだそうだ、話の腰を折って悪かったな。ルーの話を続けてくれよ」
「あい。えとね・・・・・」
「ルー、あんまりおしゃべりするとプルートさんが疲れちゃうよ」
わざとか偶然か。
絶妙のタイミングで話に入ってくるアース。
「ひゃー、プーしゃんごめんなしゃい。ルーおしゃべりなのよ」
「いや、僕は気にしてないけど。あ、アース、さっきは態度悪くてごめん。大人げなかったって思ってる」
「いえ・・・・・」
言葉少なく返答するアースを見ると、すかさずルナソルが口を挟んだ。



「アースはおこってないです。あんまはなしゃないだけです。ルーがおしゃべりだからちょうどいいのです」
「そうなんだ」
「しょなのです」
アースはルナソル以外とはあまり話さない。
人見知りが激しいというわけではなく、色々と考えてしまって結果として言葉が少なくなってしまうのだ。
アースをよく知らない人は、「無愛想だ」とか「可愛げがない」と言って顔をしかめる。
アースは全く気にしていないのだが、ルナソルは気にしていた。
彼女なりに一生懸命考えて、アースが話さないから嫌な顔されるという事に気が付き、人に五月蝿く思われても口を挟んでフォローしようと努力をしているのだ。



「・・・・・ルーはいい子だ」
「ルーいいこですか?ありがとごじゃます」
何故褒められたのかよく分からないが、ペコリとお辞儀。
「いい子だよ。うん、いい子だ」
あまり物を考えていないようなルナソルだが、自分の大事な人が周りにどう見られているのかは彼女なりに色々と考えている。
ただのぽややんで能天気な美(幼)女じゃない。
プルートはそこに感心したのだった。



※ ※ ※ ※ ※




「アースさん、ルナソルさん、ついでにプルート」
「はい」
「あい」
「ついで・・・・・」
がくっとするプルートをスルーして話を続けるホリー。
「申し訳ないのですが一緒にお買い物に行って頂けないでしょうか」
「買い物だったら僕が・・・・・」
「時の能力がいつ発動するか分からないので、私達はなるべく4人で行動しなければならないんです」
さっき下がった分の好感度を上げるチャンス!・・・・・と思ったのにしょんぼり・・・・・
「あ・・・・・そう・・・・・なんだ」
・・・・・・・
あれ?
でも、ホリーと(お子様達とも)一緒にお買い物っていうのもいいんじゃない?
・・・・・・・と、考えを切り替えるプルート。
彼は本来プラス思考なのだ。



「おかいものだって!たのしみだねぇ?」
「・・・・・・・でも、この姿のルーを人前に出していいんでしょうか」
のんきにニコニコしている大人ルナソルは、本人の意思に関わらず背景特殊効果と成人男性イチコロフェロモンをガンガン発生させている。
キラキラしてるし花びら舞ってるし、笑うと大輪の花が咲いちゃったりする。
本人そのものが現実離れしたウッフン美女だから、見慣れていない人に与える影響を考えるとどうにもいい事が起きそうにない。



「ルナソルさんの本来の姿を知ってる人がいないから大丈夫ではないでしょうか?」
他に何か?という表情をするホリーにガビーンとするアース。
そう、ホリーの家の人にはあらゆる美を凌駕するキラキラメロメロオーラが効かない為に、ルナソルの持つ凶器のような美しさが「綺麗」の一言で済んでしまうのだ。
「あ・・・・・いや・・・・・えぇと、その考えでいくと逆にホリーさんとプルートさんは大丈夫なんですか?」
「他人の空似だと言ってすっとぼけます」
「「すっとぼける・・・・・」」
アースとプルートの呟きが重なる。
「そうだ・・・・・ホリーは意外に大胆な所があったっけ・・・・・」
「そうなんですか・・・・・」
思慮深くて慎重な面しか知らないアースにとっては全く想像が出来ない情報だった・・・・・



「ホリーしゃんなにおかいものするですか?」
「お料理の材料ですよ」
「おりょうりですか。ルーはおまめのかわむくのとくいです」
「では、お豆を茹でて食べましょうか。サラダにしてもいいですね」
デコボコ女性陣は買い物に行く気満々だ。
現実的な話が出来るのは、見た目だけ同世代の男性陣。
「なぁ、お前とルーって融合とかいうのが出来んだろ?それで何とかなんないのか?」
「身体年齢が変化してから融合が出来ないんです」
「あー、そうなんだ・・・・・」
カクンと項垂れる少年2人。
融合さえ出来ればアースの方から時の能力を制御出来る為、今のややこしい状況だってもっと簡単に解決できる。
世の中なかなか上手くいかないように出来ているものだ。



「見た目が良過ぎるっていうのも面倒なもんだな。幻覚魔法使えりゃ・・・・・って、あぁ、お前、4大属性全ての系統魔法使えるんだったよな?」
「ええ。どうして・・・・・」
「ルーに聞いた。だったら幻覚魔法使えんだろ?」
「はい・・・・・あぁ、そうですね。ルー?」
「なぁに?」
風の民の名家ウィンドワードの者が最も得意とする魔法は幻覚魔法。
アースの母親と祖母はその直系の血を引いている。
彼女達は探索や攻撃系の魔法を得意とするが、実は風の民の中でも指折りの幻覚魔法の使い手なのだ。
その血を引いているアースも幻覚魔法は得意な方だ。



「今から幻覚魔法をかけるから、じっとしてて」
「ルーにかけるの?」
「うん」
「ルー、げんかくまほーかからないよ?」
「え??」
アースもそんなの初耳である。
魔法がかからないとは何たる事!!
「ルーはしょーしゃいしちゃうからめーなんだって。おとしゃまいってたよ」
「げ・・・・・・」
魔法が使えないくせに魔法を相殺させるとは・・・・・何処までも面倒な体質である。







XXX3年 4の月 緑の月の3日

サンクタムに関しての報告

性別:女
年齢:不明(見た目15、6歳)
出身:ノースガルド
種族:地の民
能力:有
ランク:地聖司

黒髪、深緑の瞳、浅黒い肌を持つ。
竜と竜主の間に生まれた為、竜主の資質がある。
守護竜との契約は未だしていない。

素晴らしい記憶力と考察力を持っている。

地の民殺しの能力を持っているとの事だが、本人は頑として口を割らない為に詳細は不明。

不死の者:フィアーと親しく接している模様。



※ ※ ※ ※ ※



XXX8年 12の月 黄の月の4日

サンクタムに関しての報告

逃亡から3月経過。
サンクタムの情報は未だ何も得られていない。
ノースガルドから逃げ出す事は困難と思われるが、念の為「外」の捜索も追加する。







「ねぇねぇ、ぶかぶかでずるずるだよぉ」
「フード取っちゃダメ」
「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!」
「我慢してよ、ルーの為なんだから」
ゆったりとしたローブを着てフードを目深に被ったルナソル。
見た目は怪しいが、ウッフンな体型とキラキラな顔を隠せているからよしとしたアース。
だが、キョロキョロ大好き!ウロウロ大好き!なルナソルは周りがよく見えない上に動きづらいこの服に不満を感じていた。



「嫌かもしれないけど今は我がまま言ったら皆が困るんだぞ。ルーが我慢してくれないと、買い物に行けないんだから」
「何でそんな意地悪言うんですか!!ルナソルさんが可哀想でしょう!!!」
「い、いだい、いだい!!れも、ほんとらろー?」
耳引っ張り攻撃に続く頬つねり攻撃に両目に涙を浮かべながら話すプルート。
「ホリーもアースも甘いんじゃねえか?今の僕達4人は一蓮托生なんだから、可哀想だろうと何だろうと行動を乱されちゃ困るって分かってるくせに。ルーだってそれが分かれば言う事聞いてくれるって、なぁ?」
プルートの言葉をじっと聞き、自分の行動がよくない事だったと気が付いたルナソルは深々と頭を下げた。



「あい、ルーわがままいってごめんなしゃい。ぶかぶかでもだいじょぶです。だからおかいものいきましょう」
「ほら、なー?直ぐに分かってくれたじゃん。よし、じゃあ、後でルーが欲しいモノを1つだけお兄さんが買ってあげよう。ノースガルドは美味しい果物のお菓子が沢山あるんだぞー」
「うわぁーい!ぷーしゃんだいすきー」
動きにくい格好でヨロヨロっと歩いて、むぎゅっとプルートに抱きつくルナソル。
「はいはい、しっかし実際この格好はねぇよな、歩きづらそうだし。裾をちょっと上げるからじっとしてろよ?」
「あい」
ルナソルの周りには自然に世話焼き好きが集まってくるようだ。
プルートも又、例外に漏れず。



「いつの間にあんなに仲良くなったんでしょう。それに、あのプルートがお兄さんだなんて・・・・・・・今年最大のジョークでしょうか。後で日記に書いておかないと」
「・・・・・・・」
ぶつぶつ言いながらも楽しそうなホリーの横で、ぎゅっと下唇を噛んで胸を押さえるアース。
又だ・・・・・と思う。
よく分からない痛みがここでチクチクする。
目を閉じてゆっくりと静かに呼吸を繰り返す。
元々回復力の早い身体だから、病気でも怪我でも落ち着いて呼吸をしていれば自然に治癒されていく。
そのはずなのに。



「よーっし、オッケだろ。ホリー、アース、行こう」
「いくです」
「はい、行きましょう。アースさん?」
「あ、はい・・・・・」
ルナソルの左手にプルートの右手が繋がれているのを見た途端、刺されるような痛みを感じ再び胸を押さえる。
― 痛い・・・・・



「どうしたの?」
「大丈夫・・・・・ちょっと・・・・・」
動作のおかしさに気が付いたルナソルがたずねると、アースは目を合わさないようにして答えた。
― 痛い・・・・・
「いたいの?」
白くて細い手がアースの胸の上の手に触れようとした瞬間。



「大丈夫だよっ!」
「・・・・・!?」
パシンと音を立てて、その手は掃われた。



「アースさん?!」
「何やってんだ、お前!」
「あ・・・・・・」
アースも自分で何をしたのかよく分かっていない。
ただ・・・・・
「ふぇ・・・・・」
目の前で泣きそうな顔になっているルナソル。
その原因を作ったのは自分だという事だけは理解できた。



「ルー・・・・・」
「ふぇぇ・・・・・」
伸ばした手をすり抜けて、ルナソルはホリーにしがみついた。
「ルナソルさん・・・・・・・・アースさんは疲れているんですよ、ね?」
「・・・・・・・」
誰も何も言わない。
言えない。



「ほら、行くぞ」
沈黙を破ってプルートがアースの手を握る。
「え?!」
予想外、想定外の行動に流石の天才児も戸惑う。
「ホリー、ルーの面倒を見て貰えるよね?」
「貴方には無理ですものね。そんな事を抜きにしても当然です。ルナソルさん、私と手を繋いで頂けますか?お買い物に行きましょう」
「ふぇ、ぅえ・・・・・」
フードの下で小さく頷くのを確認すると、ホリーは心配そうにアースを見た後、優しく微笑んだ。









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