海へ行こう、リターンズ!【3】





『プルート、プルート……』
うーん……
『プルート、寝ぼけてないで起きて下さい』
うーん……ホリー……?
『よく眠ってましたね。いい夢でも見ていたんですか?』
ホリーに膝枕されてるっ!?
『んもぅ!急に起き上がったら危ないですよ』
起き上がろうとした僕を止め、ホリーは優しく髪を撫でてくれた。



…………いい加減、今の状況が夢だという事は僕だって気が付いている。
けれど、だけれども、髪を撫でられている感触は夢じゃない!!
今こそ僕は最大限の勇気を振り絞る時が来たんだ!!
………というわけで。







「(ホリー!!)」
「ひゃあ!?」
「(あれ?この香りは……)」
がばっと起き上がったプルートが抱きついたのはホリーではなく、
「ぷーしゃんおはようしました!」
ルナソルだった。



「気を失っている間、お花畑で楽しく踊っているような表情になっていたから打ちどころが悪かったのかって心配しちゃった」
「しんぱいしました。ぷーしゃん、だいじょうぶ?」
「え……あ……うん、心配してくれてありが………熱ぅぃぃぃ!!!」
心配そうな顔をしたシイラ(水着)とルナソル(水着)に囲まれ頭を撫で撫でされていたプルートは、突然、足に猛烈な熱さを感じ悲鳴を上げた。



「あぁ……すみません。私とした事が力の加減をうっかり間違えました」
「え?うぇぇぇ???」
プルートの足元には恐ろしく冷ややかな微笑みを浮かべたファルシエールが座っていた。
彼の顔には『KILL YOU』と書いてあるとプルートには読み取れ、死の恐怖を感じガクブルになった。
「ファルがうっかりなんて珍しい」
「ふふふっ、プルートくんが目覚めてすぐルナソルに抱きついたからビックリしちゃって。つい」
「もー、ルナソルがビックリするならわかるけどファルがビックリするなんて!ファルったら面白いんだから!」
「ふふふっ」
「おとしゃま、おかしゃま、なにおもしろいですか?ルーも!ルーも!!」



「…………」
自分の周りで勝手に家族団らんを始めた様子を眺め、プルートはポカーンとしていた。
一体全体何が起こりこうなったのか理解できていないのだ。



「あら、目が覚めたんですね」
「うーん、目は覚めてるけど意識が飛んでる?大丈夫か、プルートくん?」
「大丈夫ですよ。プルートがボーっとしているのはいつもの事ですから」
今度こそいよいよホリーの声だと振り向くと、ホリー(水着)とサイが肩を並べて親しげに話しながら歩いているのが目に入り、プルートは再び気を失いそうになった。
「………しっかりして下さい。はい、冷たいお水です。それとも温かいタオルで顔を拭きますか?」
「あ……ありがとう……水、ちょうだい」
静かにしているために気付かなかったが、プルートの枕元にアースはちょこんと座って一番看護っぽい事をしていた。
そのマトモさにプルートは思わず泣いてしまいそうだった。
弱っている時は普通が一番の薬だったりする。



「ええと、恐らく混乱していると思うので何が起きたのか説明しましょうか?」
「あぁ、お願いできる?僕としてはファルシエールさん達が居るのもよく分からなくて…」
「プルートさん、自分が溺れた事は憶えていますか?」
「溺れ……あ、うん、溺れた。何かを踏んだら急に足が重くなって……」
海の中を歩いて数歩、プルートは何かを踏んだ。
その何かが原因で溺れる事になったのだが、プルート自身はその何かを確かめる前に気を失ってしまったのだ。



「何かっていうのは『コレ』よ。コレがプルートくんの両足を凍らせたの」
ドサッと物の置かれる音へプルートが目をやると、メールディアの足元にある透明袋の中で何かがバタバタと暴れていた。
「何……ですかね、それ」
「出セー!出セー!コンナ所ニ閉ジ込メルナンテ虐待ダー!!」
「………雪だるま、みたいです」
「正確に言えば雪だるまのオバケね」
「オバケ?!」
透明袋の中でジタバタぴょこぴょことしているもの……それは小さな雪だるまだった。



「出セー!出セー!コノ凶暴女ー!!」
「あらいやだ。私は暴力に物をいわせてアナタをどうこうした憶えはないわ。私はちっちゃくてまるくて可愛いものは好きだもの」
「☆★☆★☆★☆★☆★☆★!!」
「いや〜ん、かっわゆ〜い♪」
袋越しにツンツンと突かれると、雪だるまは更に赤くなって怒った。
……が、その様子は迫力がなく滑稽でしかなかった。



「ねぇねぇ、アース。ゆきだるましゃんルーもつんつんしたいよ」
「……ルーは僕とプルートさんの看病をするんでしょ?」
「しょだしょだ!わすれてごめんなさいです。ルーはぷーしゃんのかんびょういっぱいいっぱいします」
しょだしょだといいながらプルートの頭を撫で続けるルナソル。
一体全体どんな看病なんだかよく分からない。
「プルートさんの様子は僕達が見ているのでシイラさんとファルシエールさんはアレを……」
「うん、わかった。行こう、ファル」
「ううぅ……行くっ!」
プルートを凍てつくような視線で見ていたファルシエールはシイラの手を取り「アレ」の元へと向かった。



「ふぅ……あとは何とかして、大人達」
これ以上のゴタゴタには巻き込まれたくない……いくらアースだって休める時は休みたいのだ。







「………と、いうわけでぇ、尋問ターイム!」
「メーデってば生き生きしてるなぁ……」
「だってぇ、この子ったら反抗的でオモシロ可愛いんだものぉ〜」
「真性ドS」
ボソっと呟いたファルシエールの後頭部を素早くド突くとメールディアはニコリと雪だるまに微笑んで言った。
「うふふっ、それでぇ、アナタは一体何をしにこの世界に来たのかしら?オモシロオカシイいたずらをしに来ただけとかいう面白くも何ともない理由じゃない事を願っているのだけど」
ちっちゃくてまるくてカワイイ生き物だからといって「よろしくないお客様」を黙って見逃すつもりはないようだ。



「さっさと吐いちゃえば楽になれるのよぉ〜?ほらほら〜」
「ムムム……」
「雪だるまさん、言う通りにした方がいいよ。メーデは優しいけれどお仕事には厳しいから…」
「ミミミ……」
「シイラの忠告が聞けないわけぇ?もう、燃やしていいよね?オッケー?オーライ!」
「モモモ!?」
「オーライ!じゃねぇだろが。悪いなぁ、お客さん。俺達的にはさっさと事件を解決してしまいたいからさ、話して下さいよ。どうして、何をしにこの世界に来たのか、とりあえずそれだけでいいからよろしくお願いしますよ、ホント」
この世界の4大能力者に囲まれ尋問される雪だるま。
優しそうなのが1人、友好的なんだかよくわからないのが2人、超危険そうなのが1人。
とりあえず動物的感に従って雪だるまは優しそうな人…シイラに話し始めた。



「……ヒト探シニ来タンダ」
「人?」
「おにょれ〜!!シイラに話しかけるとは何たる破廉恥な〜!!」
「黙ってなさいっ!!」
面倒くさいし邪魔と判断し、メールディアはファルシエールにドカンと1発雷を落とした。
命には別状ないが失神する程度のヤツを。
「ヒィィィ!!!」
「あら嫌だ、脅かしちゃった?大丈夫よう、アナタには乱暴な事しないから……今のところ。それでぇ、どういう人を探しに来たのか、教えてくれる?」
メールディアの笑顔はとても美しいが、おばけの世界でも別格のワルである悪魔のそれに通じる物を感じ、雪だるまはガクブルだった。
とんでもない人に捕まってしまったと泣きそうになった。
と、その時。



「あ〜、やっぱり!!でも、何で此処に居るンだ?」
「……ジャック?ホェゥァ〜!!ジャック〜〜!!ジャック〜〜!!ウェェェェェ〜〜ックション!ックション!!ェックション、チクショーイ!!」
突如現れたオレンジ色の髪の男を見ると、雪だるまは涙と鼻水でぐしょぐしょになって泣きながらクシャミをし始めた。
「しまった!」
「……誰?」
「説明は後で。こいつのクシャミを止めないとマズイっす」
「クシャミ……あ!!」
「ックション、ハックション!ハックション!!」
雪だるまがクシャミをする度に周りの何処かしらが凍りついていく。



「うひゃぁ!」
「ルー!」
「ルナソルッ!!」
失神していたはずのファルシエールはガバッと起き上がると光の速さでルナソルの元へ駆け寄った。
「ひゃー!びっくりしたぁー!」
「だいじょう……」
「ぐぇっ!!」
「るなそるるなそるるなそるるなそる!!どうしたの?いたい?だいじょうぶ?」
「おとしゃま、るーいたくないです。まえのかみがねぇ、ぱりぱりなのです」
ルナソルの前髪は凍ってパリパリとしていた。
真夏の太陽の下、なかなか面白な状況である。



「ちくしょうだるまめ……るなそるのふわんふわんのかみをこおらすなんざふてぇやろうだ……。これはもう……ヤルしかないんだぜ……」
「ぐ……ぐるじ……どいで……」
両目をピカピカと点灯させおかしな口調で呟くファルシエールの足元では、プルートが踏まれて苦しんでいた。
哀れ。



「ックション!ックション!ハーーーーックション!チクショーイ!!」
「えとえと、謎の人さん。どうやったらクシャミを止められるの?」
「うはぁ!水着姿も超カワイイっす!いやいやそれは置いておいて。コイツを冷やして下さい。出来れば氷漬けとかがいいンすけど、そりゃ無………」
「オッケー!氷漬けねっ!」
キラリンとシイラの藍玉の瞳が輝くと、雪だるまは袋ごと氷塊の中に閉じ込められた。
「……無理じゃないンすね。オッケーだったンすね」
「シイラってばやっる〜♪」
「シイラさん、すごいです……」
「そうそう、自分を過小評価してるけど結構スゴイ事をやっちゃう子なんだよ、うちの娘は」
「誰がうちの娘ですかい!シイラが手伝ってくれたんだから僕も頑張らないとね。こんな迷惑なナマモノは瞬殺じゃーい!!」
「殺すな、ボケ。はいはーい、このおバカさんは私が抑えておくから説明してくれる、かぼちゃさん?」
「かぼちゃさん?え?この男の人って……」
驚くシイラにニカッと笑って一回転すると、オレンジ色の髪をした男は『ぽわん☆』という音と共にカボチャ頭の生き物(??)に変化した。
そう、ヤツの名は……


「かぼちゃん!」


かぼちゃんとルナソルに命名されたかぼちゃオバケ。
本名はジャック・オ・ランタン。



「どーも、お久しぶりです。今日は仕事じゃないンでいたずらはしませンよ?」









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