「でな、今年はこんな感じのケーキがええと思うんやけど。なぁ、聞いとる?」 「・・・・・聞いてるよ」 「ほんまかいな、めっちゃボーっとしとったやんか」 「ぼーっとしてたんじゃなくて、呆れているんだよ!」 達弥と和泉はお互いの事を意識していながら長年幼馴染の一線を越えられずにいた。 その主な原因は僕だから申し訳ないと同時に有難くもあった。 だけどね・・・・・ 「あのさ、達弥と和泉は晴れて恋人関係になったわけだよね?」 「まぁ・・・・・家族には言ってへんけど・・・・・そういう関係になりましたなぁ」 てれてれというかデレデレっとした顔。 幸せそうで何よりなことでございますよ。 だ・け・ど・ね? 「ねぇ、今日って何月何日か分かってる?」 「12月24日やろ?そんなボケてへんよ、俺」 いや、ボケだ。 ボケっっていうかアホっていうか・・・・・ 「・・・・・今、ここに来てるの、和泉知ってるの?」 「ああ、知っとる」 「・・・・・・・・・・和泉さ、今日どっか行こうって言わなかった?」 「んーーーー「俺はミクん家行くけど和泉はどうする?」って聞いたら「家で待ってる」って言っとったな。何なら呼ぼうか?」 アホ、確定。 「・・・・・僕が電話する、話したい事があるし」 「そうなん?ほんじゃ、今の時間やったら3人でランチにしょーか?」 ダメだ、本当にダメな男だコイツ。 「・・・・・・・・・・3人で楽しくランチの時間になるとは限らないよ」 「何で?」 「これから和泉に「男女交際をするのは相手がもっと女心の分かるオトナになるまで待った方がいい」って説得するつもりだから」 「えぇぇぇ?!」 電話するのは我慢して、とりあえずアホ男を和泉の家へ即行させる。 12月24日 クリスマスイブ。 恋人たちには特別なイベントの日。 ・・・・・って、この年になったらどんなにお子様でも分かるだろうが!! 今まで、幼馴染3人で居る時の和泉は「女の子」である事を抑えていた。 僕達と友達として接するためにそうしていたんだけど・・・・・ 達弥と異性として付き合うようになったのなら、当然、普通の女の子と同じように2人きりで出かけたり・・・兎に角、2人で時間を過ごしたいはずだ。 それなのに、あのヴァッカが!! 何でクリスマスケーキの相談なんかに来とるんじゃぁ!! 確かに僕達は3人でクリスマス会を毎年しているけどさ、まさかカレカノになってからも3人でなんて思うか? しかも、昨日の今日で。 イライラとしながら料理をするのは好きじゃないから、ケーキの材料だけとりあえず揃えて気分が落ち着くまでジッと椅子に座る。 僕の事がなかったら、2人はもっと早くお互いの気持ちを知ることが出来たのに。 彼らの関係を邪魔していたのは他でもない僕だから・・・・・だから、2人が今まで出来なかった事が出来るようになったのならそっちを優先して欲しい。 あーー、我ながら自分勝手だ。 それが分かってるから余計にイライラする。 2人は何をするにも僕を優先してくれる。 それが当たり前になってしまっている。 こんな友達は滅多に居るものじゃない。 すごく有難いことだと思う。 だけど、2人の関係が変わるのなら、僕達の関係も変わらなくちゃいけない。 「・・・・・」 『 ♪ ♪ ♪ ★☆★ ♪ ♪ ♪ 』 携帯に着信。 携帯のウィンドウに表示されている名前は和泉。 あれ? 今頃は達弥と話してる頃じゃ・・・・・ 「はい」 「ミク、直ぐに家に来てよ!」 「はい?だって、和泉・・・今は達弥と・・・」 「・・・・・・・・・」 沈黙。 何だ? 何があったんだ??? 「和泉、どうしたの?何かあったの?」 「・・・・・ごめん、電話じゃムリ。だから、早く来て」 声のトーンが下がってる。 まさか・・・・・・達弥と何かあった?! 「わ、分かった。直ぐに行くから」 「あ・・・・・・ケーキ忘れないでね」 「は?」 直ぐに来いと言っておいて、何故、ケーキ・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・・ケーキ食べたいんだもん」 何なんだ? 怒りとか哀しみが食欲に変換されているのか? や、やっぱり達弥と何かあったのか!!! 「じゃあ、2時間くらい待てる?」 「・・・・・・・・うん、待ってる。絶対、ケーキ持ってきてね」 「分かったよ、じゃあね。ええと、1人で泣いちゃだめだからね」 「・・・・・・・・・うん」 何だかよく分からないけど、行かなくちゃ。 その前に達弥に電話か? いや、とりあえず和泉に会わなくちゃ。 全く。 関係改革1日も経たずに何をやっているんだ!! 急いでケーキを焼いて和泉の家へ。 お手伝いさんに案内された部屋へ入ると・・・・・ 「「めりーくりすまーす!!」」 トナカイの格好をした和泉とサンタの格好をした達弥が満面の笑みで迎え入れてくれた。 部屋の装飾はそれはもう見事な程にクリスマス一色だ。 「ミク&ケーキが来たからパーティを始めよー!」 「昼飯抜いて待っとったんやで?早よ、始めよ」 「・・・・・・・・」 騙された。 2人ともいつも通りじゃないか。 全然何も変わってないじゃないか。 「あれぇ??ケーキってお願いしたのにシュークリームなの??」 「・・・・・・だって、ヤケ食いするんだと思ったんだもの」 あんな電話だったらヤケ食いかと思うでしょうよ。 「こうしたらええやん。フツーのケーキよりぎょーさん食べられてこっちの方がええわ」 大きいお皿の上にシュークリームをクリスマスツリーのように積み上げていく達弥。 器用だ・・・・・ 「なーによぅ。折角の楽しいクリスマス会に怖い顔して」 「折角のキレーな顔が台無しや」 「・・・・・・・何で」 「ん?」 「ん??」 「何でオマエらはいつもと変わらないんだよ!!!」 僕1人だけバカみたいじゃないかぁ!! 「別に騙してなんかないよ。ウチは一言も達弥と喧嘩したなんて言ってないもん」 「せやせや、俺達、ラブラブカップルさんやもん」 おいおい・・・・・胸張って「ラブラブカップルさん」なんて言うなよ・・・ 「でも、騙すような電話だっただろ。僕、すっごく心配したんだからね」 そう言うと2人は少しバツが悪そうな顔をした。 反省してるのか? 反省してるよね? 本当に心配したんだから。 「勘忍な。せやかて、こうでもせーへんとミク来てくれんかったやろ?」 「は・・・・・?」 「ウチらが付き合うようになったなら2人でクリスマスを過ごせって絶対言うと思ったし、誘っても理由付けて来てくれなかったと思う。ミクに追い返されたって達弥から聞いて確信した」 「そ、それは・・・・・だって、それが当たり前でしょう?どこの世の中に幼馴染とクリスマスを過ごすカップルが居るんだよ」 「ここに居るよ」 「ここにおるやん」 ハモられた。 何なんだよ。 2人とも・・・・・・おかしいよ。 「あのね、2人の関係が変わるなら僕達の関係も変わらなきゃおかしいでしょ?」 「何で?」 「何でって・・・・・あのね、一応僕は男なんだよ?彼氏以外の男とつるむのっておかしいと思わない?」 「そんな事思ってたら、クラスの子とも一緒に行動出来ないじゃん」 いやいや、そうじゃなくて。 もーーー、何で分かってくれないのかなーーー?! 「僕達が一緒に居るレベルは家族並でしょ。だから、これからはそんなに一緒に居たらおかしいって言ってるの」 「家族並に一緒に居る人との関係を変える方がおかしい。イズミと達弥の関係が変わったってイズミ達とミクの関係は変わんないもん。イズミとミクは赤ちゃんの時から一緒なんだもん。こんなんで離れられたらヤダ!!」 「「こんなんで・・・・・」」 今度は僕と達弥がハモった。 「まぁまぁ、諦めていつも通りにクリスマスを楽しも?和泉の一人称が名前になったら俺らじゃ勝てへんって」 「・・・・・・・わかったよ」 これ以上言い争うのは意味がない。 深い深いため息をついて席につくと、ウーロン茶の入ったグラスを配った和泉がにこやかに立ち上がった。 「それじゃ改めまして、メリークリスマース!」 「めりーくりすまーす!」 「メリークリスマス」 乾杯が終わると同時に食べ始める2人。 色気より食い気先行・・・・・何ともお子様な恋人達もいたもんだ。 「ミクのケーキ食べないとクリスマスって感じがしないよね、んーーー美味しい★」 「・・・・・・そう」 本っ当にいい食べっぷりだ。 僕が初めて料理を作った時から変わらないな・・・ 「変わらんでもええやん」 「は?」 普段はニブニブなクセに時々やたらと勘がいい。 考えている事を見透かされたのかと思って思わずビクッとしてしまった。 「無理に変えてもだーれもハッピーになれんのやったら、変える意味ないやろ?」 「でも・・・・・」 「なぁ、ミク」 「ん?」 コソコソと達弥が耳元に話しかけてくる。 和泉はシュークリームを食べるのに夢中だ・・・・・(突っ込みきれない) 「和泉が俺の事を好きだって分かった以上、和泉に下心持っとるヤツを近づかせるつもりは流石にないんよ?それに、心変わりさせる気もあらへん」 「うん・・・・・」 決意表明? だったら和泉に聞こえるように言えばいいのに。 「だから、もし、もしもミクが和泉を恋愛対象として見る時がきたら親友であろうと全力で阻止するわけ。こんなにヘラヘラっと笑ってられんのは、ミクが家族だから」 「それってさ、つまり・・・・・むっ!」 ニィっと笑って達弥は僕の口にシュークリームを突っ込んだ。 「何よぉ、男同士で楽しくやってるなんてズルイ!!」 「なんや、妬いとんの?」 「ウルサイ、で、何を楽しく話してたの?」 「ん・・・・・今後の傾向と対策」 「はぁ?!」 ボケボケでニブニブでアホだと思ってたけど、達弥はちゃーんと和泉を彼女として大事にしてくれる。 器用なのは手先だけじゃないようだし、僕と達弥達の関係は今まで通りでも達弥と和泉の関係はそれなりに上手くやっていくって確信が出来ただけでよしとしよう。 「お、クリスマス恒例の雪や!地面に落ちる前の雪、捕まえに行こ!」 「うんっ、ミクも行こう!」 結局、いつものクリスマスと何も変わってない気がするんだけど。 ・・・・・変わらないでいるっていうのも難しいことだよね。 「・・・・・・はいはい、後でちゃんと行くって。和泉は達弥に面倒見てもらってなさい」 「そんなん言われんでも分かっとるよなぁ?一生面倒見るって約束したばっかやし」 「ばっ・・・・・もぅ、先に行ってるからね!!」 赤く火照った頬を隠すようにして外へ出て行く和泉。 「可愛い、可愛い」 「知っとる」 僕の頬を軽くつまむと達弥も和泉を追うようにして出て行った。 「人のことより自分の心配をしとけって感じ?」 今日何度目か分からない溜息をついて外を見る。 窓の向こうからで早く来いと催促する2人に頷いて、僕は椅子から立ちあがった。 |
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