「熱は下がったけど今日も寝てた方がいいな」 「うん……」 「明日になったら雨も上がるだろうからさ、そしたら計画通りに出かけよう。限定のいちごパフェ食べに行かないと!」 「うん………明日のために今日は大人しくしてるわ」 「それがいいって。昨日の夜にリンゴを甘く煮たんだ。ここに持ってくるから一緒に食べよう」 3月13日(4日目) 創司が部屋を出ていくと風眞はベッドに横たわりぼんやりと天井を見上げた。 「(また創ちゃんに迷惑かけちゃった…)」 特に体調が悪くもなかったのにどうして熱が出たのか風眞は理由を知っている。 沢山の人が居る町に行ったら発作が起きてしまうかもしれない。 そうしたら創司に迷惑をかけてしまう。 旅行を楽しんでいる梨紅達にも迷惑をかけてしまう。 自分のせいで皆に迷惑をかけてしまう。 それが嫌で怖くて不安で考え込んで発熱に至ったのだ。 「(私はこのままじゃダメ)」 創司が自分のために考えてくれた計画を台無しにしてしまったのが辛い。 創司は「途中で天気が悪くなるところだったんだから行かないで正解」と言ってくれたけど、それは自分を気遣ってくれたからであって根本の原因は自分にある。 そう考え風眞の心は段々と沈んできた。 「(変わらなくちゃ……私……もっとしっかりしなくちゃ……)」 気持ちと共に意識も沈み、風眞はウトウトと眠りに落ちていった。 「ねぇ、そうちゃん」 「どうしたの?どこか苦しい?」 「うぅん、だいじょうぶ。そうじゃなくてね、あのね……」 話しかけたはいいが自分の言いたい事を上手くまとめられず、風眞は俯いて黙り込んでしまった。 「焦らなくていいよ。思いついたら言ってね?」 「うん……」 創司はいつも風眞の傍に居る。 起きている間は可能な限り傍に居て甲斐甲斐しく世話をするし、何をするにしても風眞を最優先にする。 それは出会った最初の頃からずっと変わらない。 『そうちゃんはどうしてわたしにやさしいの?』 風眞が聞きたかったのはその事だった。 だが、それを聞くのはどうにも躊躇われた。 どんな答えであるにせよ創司を困らせてしまいそうだと感じていたのだ。 「ねぇ、風眞」 「うん……」 俯いたまま返事をすると創司は風眞の顔を覗きこんで尋ねた。 「風眞の好きなものって、何?」 「え……?えと……えと……」 好きなもの、急にどうしたんだろう? そう思いながらも風眞は一生懸命「好きなもの」を考えた。 ねこさん、うさぎさん、モルモットさん。 去年のクリスマスにもらったお人形。 いちご、みかん、ぶどう。 半熟タマゴ。 春の日差し、初夏の風、秋の夕焼け、冬の晴天。 サクラ、ヒマワリ、コスモス、パンジー。 おとうさん、リクおかあさん、アマネさん。 でも、一番好きなのは…… 「そうちゃん……いちばんすきなのは、そうちゃんよ」 顔を上げてハッキリとした声でそう言うと、創司の目は丸くなり顔色が真っ赤になった。 「そうきちゃう……?」 「だめ?」 「いやいや。ダメ…じゃないよ。ありがとう、嬉しい。僕も風眞が一番好きだよ」 「よかった」 安心して風眞が微笑むと創司は笑って風眞の頬を両手で擦った。 「なぁに?」 「悩んだりあまり考えたくない事を考えてる時は段々しかめっ面になるけど、好きな事を考えると最後は絶対に笑顔になるんだ。しかめっ面は胸が苦しくなるけど、笑顔は胸がスーッとするでしょ?だからさ、しかめっ面になるまで考え込んじゃいそうになったら好きな事を考えるといいよ」 「そうちゃんをかんがえればいいの?」 「えーと………まぁ、それでもいいや。風眞が笑顔になれるんだったら」 「うん」 創司はどうして自分に優しくしてくれるのか、 その答えはもう分からなくてもよかった。 創司の優しさに甘えているだけの自分を少しずつでも変えていきたい……そして、今まで貰った沢山の優しさを創司にお返ししたい。 そう思い、風眞は一層の笑顔を創司に向けた。 「………」 「よく眠ってたね」 目を開けた風眞の視界にボンヤリと創司の顔が見える。 さっきまで見ていた顔よりも若干年上……つまりさっきまでは少し前の自分達の夢を見たいたと気付き風眞はハッとした。 「………あ、ご、ごめんなさい。待っててって言われたのに……」 「いいんだよ、風眞の場合は眠い時は寝た方がいいんだから。そうそう、起きたところでいい知らせだよ」 「なぁに?」 「明日、風眞のお父さんが一緒に外出してくれるって」 思いがけない事に驚き起き上がった風眞は瞬きを何度もしながら尋ねた。 「ほ、本当に?!」 「さっき電話があってさ、休みが取れたんだって。よかったね、今年に入ってから会ってないんだし」 「う、うん。嬉しい……お父さんと出かけるの久しぶり……」 風眞の父親は海外出張が多く、日本に居る時も数か月に1度しか家に帰って来ない。 その僅かな家に帰って来る日に限って風眞の体調が悪くなったりするものだから、父娘で外出というのは非常に珍しいイベントなのだった。 「さぁさぁ、笑顔になったところで何か食べるとしようよ。いっぱい寝ていっぱい笑っていっぱい食べたら、明日は絶対元気にお出かけ出来るからね?」 「うん………あ、りんご………」 「煮たヤツね。さっき冷蔵庫に入れちゃったんだ。取ってくるから………」 「待って」 立ちあがった創司の手をハシッと掴み風眞は布団の中からユルユルと出て来た。 「一緒に行く。もう大丈夫だから」 「……そっか、じゃあ行こう」 風眞にカーディガンを羽織らせ手を繋ぎなおすと2人は部屋を出て行った。 |
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