創ちゃんと風眞の1週間・3日目








「ごめんね……」
「ほらほら、肩を出したら寒いよ。ちゃんとお布団被って寝てなくちゃダメ」
赤い顔をしてベッドに横になっている風眞の布団をかけなおすと、創司はベッドサイドの椅子に腰かけた。



「37.5℃………ゆっくり休めば夕方には平熱まで下がるかな」
「あ……あのね……」
「お母さん達には連絡しないよ、安心して寝てて」
「うん………ありがとう」
ほっとした様子で少しだけ笑うと風眞は目を閉じ眠りについた。







3月12日(3日目)


風眞の額に乗せられた濡れタオルを替えると創司は窓の外を眺めた。
外は曇り空。
もしかしたら午後から雨が降るかもしれない。
「雨……降らないかなぁ……」
雨が降ったら外出できないのを天気のせいにできる。



父親なら天候さえも自由に操れるのに、自分の力は限定されているし世界のルールを無視することもできない。
記憶の一部となっている異世界の自分との力の差を思うと苦々しい気分になることもある。
異世界の自分だったら風眞にもっと沢山の笑顔をあげられるかもしれない。
異世界の自分だったら風眞の辛さや苦しさを取り除いてあげられるかもしれない。



もしも異世界の自分になれたなら……



「………や………」
風眞の寝言で我に返ると、創司は頭を抱えて強く目を閉じた。
「(「もしも」なんてらしくない……)」
「もしも」では何の解決にもならない。
「もしも」で望みが叶うならいくらでも願うだろうが現実はそうではない。
それが分かっているから創司は「もしも」となるべく考えないようにしている。
非現実的な体験をしている割には現実的な思考を持っているのだ。



「……やめ……」
風眞の寝顔が苦しそうに歪み、呼吸が僅かに荒くなった。
「風眞」
首筋に浮かんだ汗を拭くと布団の中で固く握りしめている手に自分の手を重ね、創司は壊れ物に触れるように優しく握った。
体調が悪い時の風眞は悪夢を見やすくなる。
記憶の奥の奥に仕舞い込んだはずの幼少期の体験が悪夢となって甦ってしまう。
風眞が心と身体に負った傷、そして、失った物はあまりに大きすぎる。



「風眞………」
初めて会った時の彼女は本当に傷だらけのボロボロだった。
3歳に近いのに歩けない程小さくて痩せ細っていたし、言葉も上手く話せなかった。
全身に痣や火傷の痕があり、ボサボサの髪に隠れた顔は……
「ごめん……早く見つけてあげられなくて……ごめん……」



風眞が悪夢にうなされる度に創司は後悔の念に苛まれる。
あの時、幼い自分は何も出来なかった。
あんなになるまで何も出来なかった。
子供だから仕方ない?
違う。
仕方ないわけじゃない。
異世界の自分が探している人をもっと早くもっと真剣に探していたら、風眞の苦しみはもっともっと少なかったのだから。



「………そう……ちゃん……」
風眞の右目から流れた1粒の涙が頬を伝い落ち、それにつられたように曇り空から雨が落ち始めた。














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