「おはよう、創ちゃん」 「あぁ……ごめん、もう終わっちゃった?」 「謝らないで。私が早く起き過ぎちゃっただけなの」 白いエプロンを装備した風眞に笑顔を向けられた創司は、そのあまりの愛らしさに軽い眩暈を憶えた。 3月11日(2日目) 「はい、どうぞ」 「ありがとう」 ご飯茶碗を一端テーブルに置き、2人揃って「いただきます」。 メインのおかずは目玉焼き。 横にほうれん草とベーコンのソテーが添えられている。 創司の目玉焼きはつやつやとしたオレンジ色の半熟卵が綺麗に並んで焼かれているが、風眞の皿の上のそれは残念な感じに潰れている。 どうも焼く前から卵が割れてしまったようだ。 「最初の1個が上手く割れなかったの。でも、焼くのは上手くできたのよ」 「俺のと替えようか?」 「ううん、これでいいの」 お互いの皿を交換しようとした創司を止めると、風眞は自分の目玉焼きに一口手をつけた。 「うん、同じ味。だから平気よ?」 「でも……はい。俺のは卵が2つだからさ、1つは固く焼いたヤツを食べたいから交換して?」 そう言うと創司は風眞が手をつけた目玉焼きを食べてしまい、代わりに自分の目玉焼きを卵1つ分だけ風眞の皿の上に乗せた。 「あ…………」 「ごめん、食べちゃった」 創司が笑うと風眞は「ありがとう」と言って小さく笑った。 風眞は目玉焼きや月見うどんの半熟状態になっている黄身が大好きだ。 創司は当然その事を知っている。 風眞の性分からいって普通の交渉で失敗作の目玉焼きを交換してもらうのは不可能だろう。 だから創司は強引に交換してしまった。 お互いに気まずくならないようにと取った行動の意味を理解し、風眞は素直に感謝の言葉を言ったのだった。 「創ちゃんはいつも優しいね」 「そうかな?」 「そうよ」 「自分じゃよく分かんないけど、風眞にそう言われるのは嬉しいよ」 それから他愛もない話をしながらゆっくりとした朝食は終わった。 そして…… 「はい、全部合ってたよ」 「よかった。最後の問題が少し自信なかったの」 朝食の後は勉強の時間。 創司が先生・風眞が生徒になって梨紅お手製の問題集を解いていく。 2人は小学校に通っていない。 風眞は心と身体の病で継続的に学校へ通えないのだ。 「3月に入ってからずっと風眞の体調っていいよね。夜中に息苦しくなる事もないようだし」 「皆が気を付けてくれてるお陰ね?」 「それだけじゃないって。風眞の身体が丈夫になってきたからだよ。風眞が頑張って少しずつ運動をしたり努力をし続けた結果が出てきたんだよ」 「そうかな……だったらいいな。身体が丈夫になったら学校に行けるものね?」 「学校なんて別に行かなくたって平気だよ。勉強ならお母さんの問題集をやっていれば十分だし」 「でも、学校は勉強だけをする所じゃないんでしょう?」 学校は集団生活の中で協調性や社会性を学ぶ場でもある。 成長して社会に出ていく上で必要な事ではあるが、集団生活というのは今の風眞には難しい。 だが、難しいからといってそのままにしているのは駄目だと風眞本人が一番気にしているのだった。 「それはそうだけどさ、今は未だ俺と一緒に勉強するだけで我慢して欲しいんだ。何かあってからじゃ遅いんだし………そうだ、明日さ、電車に乗ってちょっと都会まで出かけてみよう」 「子供だけで行ってもいいの?」 「いいに決まってるよ。ダメなら1週間も子供だけで留守番とかさせないって」 確かにそう言われればその通りな気もする。 「そう……なのかしら」 「そうそう」 「じゃあ出かけましょ。電車に乗るの久しぶりだから嬉しいわ」 満面の笑みを浮かべて喜ぶ風眞。 都会に出かける事ではなく電車に乗る事が嬉しいようだ。 「よっし、次の問題が終わったら明日の予定を立てよう」 「そうね、予定は大事だものね」 梨紅母さんの教えが身についている2人。 予定をバッチリ立てて明日は有意義な1日にしたいもの。 |
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