「ソーシくんはよく出来た子だよねぇ?」 「………」 恐らく世の人達が天使の微笑みと称する素敵な笑顔で息子に話しかける天。 何かを企んでいるというのがバレバレだと創司はゲンナリした顔で父を見上げた。 「だ・か・ら、子供達だけで1日と言わず1週間くらいお留守番出来るよね?」 「はぁ」 「できるよねっ?!」 「はぁ………まぁ」 未だ10にもならない子供相手にその言い方はないと思うが、相手をするのも面倒くさいと創司は首を縦に振った。 「本当に大丈夫ですか?」 「大丈夫だよ。ソーシは出来る子なんだからっ!!」 「風眞ちゃんはどうですか?創司と2人で1週間過ごせそうですか?」 「創ちゃんと一緒だったら大丈夫よ。ね、創ちゃん?」 全・信・頼の目で見られたら創司だって笑顔で言ってしまう。 「うん、俺も風眞と一緒だったら大丈夫だよ。だから心配しないでたまには楽しんできなよ、お母さん」 悩んでいた梨紅も子供達の言葉に「それでは…」と言って微笑んだ。 3月10日(1日目) 「行ってらっしゃい!」 「ゆっくりしてきなよ」 「はい。火の元と鍵かけには気を付けて下さいね?風眞ちゃん、少しでも息が苦しいと思ったら早めに創司に教えて下さいね?創司、ここ暫くは安定していますが風眞ちゃんの身体の状態をよく見ていて下さいね?何か困った事があったら直ぐに私の携帯に連絡を下さいね?それと……」 「もういいってばぁ。早く行こー!!」 指折り数えながらあれこれと言っていると、我慢のきかない天はぐいぐいと梨紅の腕を引っ張った。 まるで幼児のような行動だ。 「そんなに急がなくてもいいでしょう。それより子供たちだけを残して1週間も家を空けるのですから、ちゃんと言っておかないと……」 「メールでいいじゃん、ソーシはお利口さんだからそれでも分かるよ!」 「ねっ!?」と言われた創司は「はいはい」といった調子で頷いた。 「そういうものでしょうか…」とイマイチ納得いってない梨紅だったが、意を決して家を後にする事にした。 「やっと行ったね」 「私たちの事が心配だったのよ」 玄関先であれやこれやと15分も会話をしてしまった。 海外旅行に行く人間にしては余裕があり過ぎる。 「アマネさん、海外旅行のチケットを当てるなんてすごいわね?」 「すごい……のかな」 天が【特賞:ペアで行くヨーロッパ7日間の旅】という目録を持って帰宅したのは先週の事だ。 梨紅や風眞は「すごい!!」と驚いていたが、創司は1人怪しんでいた。 「(何かズルい手を使った気がする……)」 己の欲望の為ならば世界のルール違反なんてお構いなしで力を使ってしまうダメダメな最強の竜、それが創司の父親である天の正体だ。 普通だったら「すごい!!」と感心される特賞ゲットだが、力を使えば何の苦労もない。 家族内でそれを知っているのは今のところ創司だけなので曖昧に返事をすると、風眞は不思議そうな表情で首を傾けた。 「すごくないの?」 「いや……いやいや、すごいよね。特賞ってものが本当に存在していた事に驚いた」 「ふふっ、創ちゃんって変なところに驚くのね」 「そうかな?まぁ、そんな事よりそろそろ中に入ろうよ。少しお腹空いちゃったからココアでも飲んでゆっくりしよう」 風眞にとって15分立ちっぱなしというのは結構な運動と同じくらいの体力を消耗する。 それ程疲れているように見えなくても体調を崩すきっかけになるかもしれない。 風眞の冷たい手を握ると創司は家の奥に入って行った。 「3月に入ってもう10日経ったんだ…」 「暖かい日が増えてきたわよね。早く桜が咲かないかしら」 「そしたら電車に乗ってお花見行こう」 「うん!リクお母さんといっぱいお弁当作るわ」 「お父さん際限なく食べるからなぁ……」 ココアの入ったカップを手に並んでソファに座り話す2人。 会話の内容といいその様子は熟年夫婦のようだ。 「リクお母さんね、今度の旅行をとっても楽しみにしていたのよ」 「そうなの?俺にはよく分からなかったけど」 「あのね、リクお母さん達ね、2人で旅行するの初めてなんだって」 「そう………かも。何だか色々あったらしいからね、あの2人」 「色々?」 「大人の事情ってヤツ」 「ふぅん。創ちゃんは難しい事を知ってるのねぇ?」 感心した様子で頷くと風眞は邪気のない瞳で創司を見つめた。 「いや、まぁ、あはは……」 純粋な少女に「付き合い始めた早々にデキ婚で旅行どころじゃなかった」とか「家庭の事情が複雑過ぎて子供を預けられる親族がいない」とか言えるはずがなく創司は誤魔化すように笑った。 笑うしかなかった。 「それで?初めての2人旅行だから楽しみにしてたって事?」 「そうよ」 「へぇ……あのお母さんがねぇ……」 天が梨紅に対して熱烈ラブアクションをしているのは誰の目から見ても容易に分かる。 だが、梨紅の態度は何だかよく分からない。 勿論、天の事を嫌ってもいないし避けてもいないが、「リク〜〜!!ラブ〜〜!!」のノリに対して「はい、そうですか」と穏やかな声で返して自分のやる事をやる。 抱きつかれようが何をされようが決して動じない。 天が自分勝手なマイペースだとしたら、梨紅は自分都合なマイペースだ。 今回の旅行が楽しみだったのだとすれば「調べたい世界遺産があった」とか「見たい美術品があった」とか「行きたい大学があった」とか彼女なりの目的があったに違いないと創司は踏んでいたのだ。 「好きな人と2人で旅行……大人っていいわねぇ……」 ロマンの欠片もない創司の考えとは大違いに風眞は溜息混じりにウットリと呟いた。 心なしか瞳の中心にハートマークが点滅しているようにさえ見える。 「風眞も好きな人と2人で旅行したいの?」 どストレートな質問に首まで真っ赤になると風眞は俯いた。 「そ、そんな……まだ早いもの……」 早いも何も未だ9歳。 想像旅行に留めておくにしても早い年齢だ。 「それじゃあさ、次の検査結果がよかったらお母さんに皆で旅行したいってお願いしてみよう?2人で旅行じゃなくても楽しいよ、きっと」 「うん、そうね。ありがとう創ちゃん、大好き」 未だ少し赤い頬のまま微笑む風眞。 その様子を見て、「2人で旅行と2人でお留守番ってある意味状況は同じじゃない?」と言ったら困っちゃうんだろうなぁと思いながら創司もにっこり微笑んだ。 |
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