12の月 青の月の7日 夜。 「お母さん、お願いがあるのですが」 「何?」 何でも器用にやってのけてしまう息子さんは滅多な事では「お願い」なんてしてこない。 それだけに思わず背筋を伸ばして聞く態勢になってしまう。 「実は・・・」 同日 同時刻。 ブレイズ家 ほかほか家族の部屋。 「おとしゃまのすきなものなぁに?」 「勿論、ルナソルとお母さんだよ!」 「ルーもおとしゃますきー♪」 ふっかふかのソファの上で過剰なスキンシップをする父と娘。 2人の素敵笑顔が合わさるとその精神的攻撃レベルはシャレにならない勢いだったりする。 「2人とも仲良しね」 キラッキラの美形フラッシュを温かく見守る母シイラ。 「おかしゃま、おかしゃまのすきなものなぁに?」 「ルナソルとお父さんよ」 「ルーもおかしゃますきー!うわぁーい、みんなすきどうしね!!」 大興奮でぴょこぴょこと跳ねまわるルナソル。 最早、何の目的で「すきなもの」を聞いていたのかキレイサッパリ頭からバイバイしている。 果たして彼女は使命を全う出来るのか・・・・・ 12の月 青の月の8日 昼。 研究院 薬学部門長室(ホリー研究室)。 「私は書庫に居ますので、何かありましたら遠慮しないで声を掛けて下さいね」 「ありがとうございます」 「ありがとごじゃます、ホリーしゃん」 お子様達の秘密作戦遂行の場として定着しつつあるホリーの研究室。 仕事の内容は厳しいが仕事の場としては緩すぎる職場。 「おかあさん達に好きな物とか欲しい物の話を聞けた?」 「んとね、おとしゃまはルーとおかしゃまがすきで、おかしゃまはルーとおとしゃまがすきなのよ。ルーもおとしゃまとおかしゃまだいすき!」 ニコニコと機嫌よく答えるルナソルの顔を見て「やっぱり・・・・・」と内心思うアース。 この様子からいって「すきなものなぁに?」「ルナソルとお母さんだよ」その後、大喜びしてはしゃいで疲れて昨晩は早く寝た・・・・・というコースだろうなとは予想していたので回答にガッカリもしないし呆れたりもしない。 「そっか、聞いてきてくれてありがとう」 「あい!」 ジュースを飲んで一息するルナソル。 目を閉じて考え込むアース。 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・あれぇ?おとしゃまがルーとおかしゃますきだったら、おとしゃまにはルーとおかしゃまぷれじぇんとするのかなぁ?」 確かにファルシエール的には大歓迎なプレゼントである。 「そうだねぇ・・・・・まぁ、でも、ファルシエールさんからはルーとシイラさんを切り離して考えられないから・・・・・・・・・・」 プレゼントあげる人リストに何やら書きこむアース。 「なぁに?」 「誰のプレゼントを誰に手伝ってもらうか書いておこうと思って。ルーのお父さんはルーのお母さんに手伝って貰ったらいいんじゃないかな?」 「しょだね!おとしゃまはおかしゃまがだいすきであいしてるからよろこんでくれるよー」 ・ルナソルのおとうさん ← ルナソルのおかあさん 書き終わるとクレヨンを置いて再び考え込む。 ベストな選択だろうけどシイラさんに迷惑が掛からないようにしないとなぁ・・・と気をもむ気遣いの幼児。 大人に手伝って貰うにしても迷惑をかけるのは出来るだけ避けたい。 子供だけど子供がやる事だからと慰められるのも嫌だ。 見た目は無表情でボンヤリだが、責任感の強さとプライドの高さは彼の母親と同じくらいある。 何かをやるからには最善を考え行動しなければならない。 「・・・・・・・」 「・・・・・・?」 小さな手がそっとアースの頬を撫でる。 「アース、こわいかおしてるの、なんで?」 「怖い顔・・・してた?」 「こーんなかおしてた」 むーーーといいながら眉を寄せるルナソル。 「え・・・・と、どうすれば色々と上手く出来るか考えてたんだよ」 「ルーもかんがえるよぉ!アースだけこわいかおしてかんがえちゃめーなの!!」 「あ・・・・・うん、ごめんね。ちゃんと一緒に考えよう」 素直に謝るとほわんとした笑顔でルナソルは頷いた。 「しょだよ。いっしょ、いっしょ。ルーとアースはいちばんなかよしだから、いつもいっしょするのよ」 ルナソルは同年代の子供よりも思考が子供っぽい。 強力な時の能力を使えるが自在には使えない、厄介な事に強力な故に問題を起こしてばかりいる。 憶えは悪くないが不器用過ぎる。 「ス」以外のサ行の発音は相変わらず出来ない。 直情的で感情的になり過ぎる。 アースはルナソルとは大体において真逆の性質を持っている。 普通の大人以上の知識を持ち、それをどう利用すればいいのかという知恵がある。 竜なのでランクは持っていないが4大属性の大半の能力は使えるし、ルナソルと融合すれば時の能力だって使える。 行動を起こす前には慎重に考えるし、感情を表に出すことを滅多にしない。 破天荒で自由過ぎるルナソルの行動の後始末をするのも、不器用なルナソルの手助けをするのもアースの役割。 今よりも小さい時から、生まれる前から決まっている役割。 周りの他人から見ればアースは損な役割だ。 ルナソルに関わらなければ彼の人生はもっと平穏で、研究なり何なり好きな事に時間を割く事が出来るというのに。 だが、本人と両親はそうは思っていなかった。 「ルーもおとしゃまのぷれじぇんとかんがえてみたよ」 「どういうの?」 「んとね、はこのふたあけるとおかしゃまのうたがきけるのどうかなぁ?おとしゃまねぇ、おかしゃまのうたがすきなのよ。あおいつきのよるはおとしゃまにうたってあげてなかよしするのよ」 この場に大人が居たら中断させられそうな夫婦生活の話だが、お子様達にはそんなの知ったこっちゃない。 ルナソルは自分が見たままその通りを忠実に説明する。 「歌が聞ける箱・・・オルゴールみたいなのかな。歌う歌って決まってるの?」 「あおいつきのよるはいつもおなじうただよ。ルーもうたえる!」 すぅっと息をすってルナソルが歌い始める。 金色の糸のように細く美しい声。 歌に選ばれた者にのみ奏でられる奇跡の音。 「歌が聞ける箱・・・・・・歌・・・・音・・・・・うん、出来る」 歌い終わったルナソルの頭をポンポンと撫でると、アースは新しい画用紙を取り出して何かを書き始めた。 「なぁに?」 「ルーのおかげでいい事思いついた」 「ルーのおかげ?ルー、アースといっしょかんがえたねぇ」 基本的にルナソルは1人前な事は何1つ出来ない。 だが、アースの才能を生かす手助けに関しては誰よりも何よりも長けている。 なーんも考えていない言葉や行動が、アースにとっては必要であり重要なのだ。 そして何よりも。 「うん、ありがと」 「えへへ・・・よかったねぇ!じゃあ、もっとかんがえようねぇ!!」 暖かく柔らかい笑顔が、卓越した才能故に無意識のうちに孤立しそうなアースの心を包み込む。 「じゃあ、次はルーのおかあさんのプレゼントを考えよう」 「あいっ!」 2人は未だ小さくて未完成で半人前。 だけど、半分と半分を足せば1になる。 一緒に考えて一緒に頑張ればきっと何だって出来る。 「・・・・・・・あれぇ?おかしゃまがルーとおとしゃますきだったら、おかしゃまにはルーとおとしゃまぷれじぇんとするのかなぁ?」 「・・・・・・・・・」 きっと、何だって出来る・・・・・・・はず。 |
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