おこさまたちのクリスマス
〜ぷれじぇんとしよー?〜







12の月 青の月の7日。
ブレイズ家 温室。
「アース、くりすますしってる?」
「どこかの世界の救世主様の誕生日だよ」
「しょれだけじゃないのよ。あかいふくきたひとがぷれじぇんとくばるのよ」
「・・・・・・そう、なんだ」
得意そうに自分の知識を披露するルナソルを見て、 絶対に何か勘違いをしているんだろうなぁと思うアース。
彼女の勘違いが事件を起こすんじゃないかと内心穏やかじゃない。



「しょうなのよ。だからねー、アースとルーであかいふくきてぷれじぇんとくばろー?」
「何で"だから"なの・・・?」
「だってぷれじぇんともらったらうれしいでしょ?みんなうれしかったらルーもアースもうれしいもんねぇ?」

きら★きら☆きら★きら☆

アースもそうだよね?

そうだよね?

そうだよね?

疑いのない眼差し。
完全無欠天才幼児の唯一の弱点、『ルナソルのきらきら目』発動中。



「嬉しい・・・ね」
「しょだよねー?」
折れた、負けたのは仕方ない。
きらきら目の次に待つぴかぴか笑顔を見たらそんなのは些細なこと。



「あのね、”いじゃというとき”のためにルーはちょきんをしてたのよ。しょれでね、きょうぶたしゃんをふってみたらいっぱいおとがしたのね。だからぶたしゃんもってくる!」
相変わらず要点の定まらない説明だが、ようするに
いざというとき = クリスマスプレゼントを用意する
ぶたしゃんをふってみたら〜 = ぶたさん貯金がいっぱいある
ぶたしゃんもってくる = 持ってきて見せてあげる
ということらしい。
「・・・・・途中で落さないように気をつけるんだよ」
「あーーーーいー!!
遠ざかっていく声の大きさから全速力で走っていってしまったのが簡単に想像できる。
「・・・・・・・僕も行った方がいいか」
悲劇を未然に防ぐため、アースはルナソルの後を追いかけた。







「ぶーたしゃんぶーたしゃん、おかねだしてくだしゃーーい」
ルナソルの声に反応し、ピンク色のブタの貯金箱の口の部分から硬貨がチャリチャリと吐き出された。
「・・・・・・」
「いっぱいあるよー。ルー、おてつだいしてためたんだよ!!」
銀色の硬貨が9枚と銅色の硬貨が18枚。
庭の掃除やパパさんの肩たたき(別名:アストライト癒しの時間)をしてコツコツと豚貯金箱に貯めたルナソルの全財産は、意外に沢山あったが皆にプレゼントとなると大した物は買えそうになかった。



「ねぇ、ルー。プレゼントはさ、お金で買えるモノじゃなくてもいいんだよね」
「ん?」
お金は大事なものだという事は分かっているが、どれくらいのお金でどの程度のモノが買えるのかという事をルナソルは理解できていない。
今、テーブルの上でキラキラと光る小さな硬貨の山は彼女にとってスゴイ財産で、これだけあればきっと素敵なモノが買えると思ってる。
今、その思い込みが間違いだと指摘する事も、何も言わないでお店で真実を知る事もルナソルを悲しませる結果に繋がると分かっているからアースは最善の道を考える。
どんな素敵なプレゼントを用意するよりも何よりも、ルナソルがいつものようになーんも考えずニコニコ笑っていることの方が重要なのだから。



「お母さんの日もお父さんの日も誕生日会だって今まで何とかなってきたんだからさ、今回もお金をかけなくても何とかなるよ。だからさ、先ずは皆の好きな物とかを調べて何をプレゼントしたら喜んでくれるのか2人で考えよう。それでね、考えてもやっぱりお金が必要だったらルーのブタさん貯金と僕の貯金を合わせてどうにかしよう」
「うん、わかった!しらべてかんがえようね!!」
何をどの程度「わかった」のか何を調べようとしているのかに一抹の不安はあったが、とりあえずニコニコな顔を守れてホッと一息。



「それじゃあ、誰にプレゼントをあげるかをちゃんと書きだしてみよう」
「あい!!」
画用紙とクレヨンを取りだして準備万端。
「・・・・・ありがとう。じゃあ、名前を書いていくね」



・ルナソルのおかあさん
・ルナソルのおとうさん
・アースのおかあさん
・アースのおとうさん
・アストライトさん
・ファルミディアさん
・ホリーさん



「カイラしゃんは?」
「あぁ、クリスマスの当日に会えるか分からないけれど用意はしておこうね」
「おかしゃまのおかしゃまとおとしゃまは?」
「えーと・・・・・カイラさんに何とかしてもらおうか」
冥の白竜カイラはいつも門の世界に居るとは限らない。
シイラの両親は「時の狭間」に居るので会いに行くことも会いに来てもらうのも容易ではない。
プレゼントを渡せるか渡せないかは分からないが、彼らにとっての喜んで欲しい人リストから外すわけにはいかない。



「ねぇ、ぷれじぇんとはひみつにする?」
「そうだね・・・・・誰に何をあげるかは秘密にしても、僕達がプレゼントを用意するのは秘密にしなくていいと思うよ」
「・・・・・・ルー、わかんない・・・・」
「えっとね、僕達だけの力でこれだけ沢山のプレゼントを用意するのは難しいと思うんだ。だから、プレゼントをあげる人とは違う大人に協力をしてもらうんだ」
ぽぇ〜っと自分を見つめている感じからいってルナソルは未だ言ってることを理解出来ていないのは分かる。
これは又、大変な事になるかもしれないけれど。
「よくわかんないけど、アースといっしょやるからだいじょうぶね!」
全面信頼されてるっていうのも分かるから頑張らなけりゃ幼児とはいえ男が廃る。
「うん、一緒にやれば大丈夫だよ。今回は大人に頼っちゃうしね。大人に頼るのは子供の特権だし・・・」
普段は無表情なアースの微笑は、少しだけ彼の母親のそれに似ていた。









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