ぼくのわたしのおとうさん









僕のお父さんは研究院で働いています。
研究院は色々な世界の知識を解析します。
皆の生活に役立つ物の開発もします。
治療院や魔道院と違って仕事の時間が不規則です。
お父さんは複数のお仕事を見ています。
忙しくて何日もお家に帰って来られない時もあります。
だけど、お父さんは疲れた顔を僕に見せたことがありません。
いつも笑っています。
人が失敗しても怒ったりしません。
何とかなるよ、と言って本当に何とかしてしまいます。

僕はお父さんのことを尊敬しています。
大きくなったらお父さんみたいな人になりたいです。



※ ※ ※ ※ ※




おとさんはルーがあそびいくとおかしたべるのよ。
おとさんはおかしいつぱいもつてるの。
アースとホリーさんがおはなのなまえおしえてくれたのよ。
おとさんにおしえてあげたらよくおべんきよしたねてあたまなでてくれたのよ。
おとさんのてあたかくておきくてきもちいのよ。
ルーおとさんだいすき。





◆研究院 ホリー研究室(お子様達の作戦会議室)

「かいたよー」
「うん・・・・・」
「いっぱいかいたんだよ。ねぇねぇ、すごい?」
「頑張ったね」
お父さんの日に向けてお父さんの作文を書くことにしたアースとルナソル。
簡単な字を書けるようになってきたルナソルは、表現するならば「元気」な字を紙面いっぱい埋め尽くすように書いていた。
近親者の愛情フィルターを通さなければ解読不可能怪文書なのが難点。
一生懸命さなら100点満点。



「アースはなにかいたの?」
「お父さんはお仕事頑張っててすごい・・・・・みたいな事」
「しょなの。ルーはねぇ、おとしゃんおかしもってて、てがおっきくて、あったかくて、だいすきってかいたのよ」
「・・・・・・そう」
何とも言えず相槌を打つアース。
ルナソルらしいが、果たしてこれでいいのだろうかと悩む5歳児。
その説明では「お菓子持っているから大好き」にとられてしまう。
紙にもそのような内容が書かれている。
勿論、サイが特別沢山お菓子を持っているわけでもないし、頻繁にお菓子を食べているわけでもない。
ルナソルが研究室に遊びに来た時をお茶の時間として設定しているため、自然にそうなってしまったのだ。
休憩時間の設定されていない研究院ならではの事だが、ルナソルが理解してるはずもなく。
遊び行く→お菓子食べる=いつもお菓子食べてる
この公式がルナソルの中で成立しているのだった。



「アースさん、ルナソルさん、どんな具合ですか?」
「ルー、いっぱいかきました」
「それは頑張りましたね。見せて頂いてもよろしいですか?」
「どじょ」
手渡された怪文書と作文を読むと、ホリーは優しく微笑んだ。



「よく書けてますね。ルナソルさんがセンセイの事を大好きだって伝わってきますよ」
「しょですよ。ルーはおとしゃんだいすきです!!」
「アースさんのはセン・・・・・お父さんの事をよく見ていますね。お父さんの事をとても尊敬しているって伝わってきますよ」
「あ・・・・・ありがとうございます」
笑顔大放出のルナソルと少し頬を赤くして照れるアース。
ホリーは子供を褒めて伸ばす教育者に向いているようだ。



「ファルシエールさん・・・・・ルナソルさんのお父様の分はこれからですか?」
「あい」
「はい」
「そうですか、それでは続けて頑張って下さいね。お腹が空いたらセンセイの研究室にいらっしゃって下さい。フルーツタルトがあるので、皆で食べましょう」
「うわぁぁい!!アース、アース!!」
「・・・・・・・ホリーさん、今行ってもいいですか?」
「えぇ、勿論」
食べたい時が食べ時。
3人はサイの研究室へと向かい、そして又、「サイ=お菓子食べる」の公式がルナソルの中で確実なものになっていくのであった。









◆研究院 サイ研究室

「おいふぃーねぇー」
「食べながら話しちゃダメ」
「ふぁい」
タルトを口いっぱいに頬張り、上機嫌なルナソル。
「ルナは何でも美味しそうに食べるなぁ。ゆっくり食べるんだよ」
「ふぁい」
お茶を飲みながらニコニコと子供達を見守るサイ。
完全にお父さんモードである。



「ねぇねぇ、おとしゃん。ルーのおとしゃまなにしてるかなぁ?」
「ん???仕事してると思うけど・・・・・???」
「おしごとなにしてるかなぁ?」



毎度お馴染みルナソルの唐突発言。



ルナソルの父親ファルシエールとアースの母親メールディアは魔道院に勤務している。
魔道院は魔法エネルギーのバランス調整や、他の世界から来てしまった「お客さん」に帰って貰うというのが主な仕事だ。
他にも治安維持や土地管理等々・・・・・結構色々何でもやってる所だったりする。
上級職のファルシエール達は、各地から上がってくる報告書や意見書を見直し承認したものは院長または四聖司長へ上げる、下級の能力者では太刀打ちできない「お客さん」が現れた時に相手をする・・・・・等々。
幼児に・・・・・というかルナソルに理解できるようにどう話すかはかなりハードルが高い。



「うーん・・・・・皆が毎日元気に暮らしていけるようにしてくれてるんだよ」
「しょなのー?」
「そうだよ」
「しょっかー」
納得したんだかしないんだか。
うんうん頷きながらモクモクとケーキを食べ続けるルナソル。



「急にどうしたの?」
「あーふふぁおふぉふゃん・・・・」
「ごっくんしてから」
「ふぁい」


もぐもぐ ごっくん


「アースはおとしゃんのおしごとかいたでしょ?ルーもかきたいなぁとおもったのよ」
「・・・・・それで、今ので分かったの?」
「むー・・・・・おとしゃまみんなをげんきにしてるのかなぁ?」
「・・・・・・・」
何だかやっぱりイマイチ分かってなかった!!



「ホリー、魔道院に届ける書類があったでしょ?アレさ、俺が持って行くよ」
「え?あれは・・・・・あ・・・・・・はい、お願いします」
それ程急ぎではない書類を届けに行くのは、お子様を魔道院に連れて行くためと察する有能な助手。
直ぐに用意をすると、残っていたフルーツタルトを包んで一緒に渡した。
気遣いの人、ホリー。
「ありがと。ルナ、アース、ケーキを食べ終わったら一緒にお父さんの仕事を見に行こう」
「魔道院って、子供が行っても大丈夫なんですか?」
規制がユルユルな研究院に比べれば魔道院は遥かにガッチガチな所。
子供がウロウロっとしていたら怒られてしまうんじゃ?と、アースは心配しているのだ。



「うん、大丈夫だと思うよ」
何でもない事のように頷くサイ。
お父さんが大丈夫だと言ったら大丈夫なんだろうけど・・・・・
そう思いながらも苦労人アースがチラリと横を見ると、案の定、問題発生装置のルナソルは、
「うっわーい!!ルー、おとしゃまおしごとしてるのみるのはじめてー!!」
バンザイしながら目をキラッキラに輝かせていた。



『僕が気をつけなきゃ。大人たちは皆ルーに甘いんだもの!!』 
固く心に誓ってコップに残ったミルクを飲み干すアース。
彼以外の全ての人が、誰よりもルナソルに甘いのはアースだと知っているのだが・・・・・









◆魔道院 ファルシエール&メールディア執務室

「ったく、何処のアホなわけ?こんな間違いマジアリエナイんですけどー」
「・・・・・」
「このエネルギー配置でバランス取れるわけないじゃん。世界に歪みが出来て処理するのは僕達なんだから、もっと考えて欲しいよねー」
「・・・・・」
ブツブツ言いながら大量の書類をチェックしていたファルシエールは、ふと窓の外に目をやり、とてつもなく驚いた。



「る、ルナソル!!」
ガタっと椅子を鳴らして立ち上がると、背後に緑色の雷が落ちた。
「早く書類回しなさいよね」
今まで煩い独り言に何も言わなかったメールディアは、表情を変えずに左手の人差し指をファルシエールに向けていた。
因みに指先にはバチバチと小さな火花が飛び散っている。



「ちょ、ちょっと休憩させてよ。今、僕の最愛の娘、可愛い可愛いルナソルが外に居るんだからっ!!」
「・・・・・・居るんじゃなくて、少し待ってれば此処に来るわよ」
「なっ!!!何故何故どうして???じゃ、じゃあじゃあ、おやつの準備しなくちゃ!!」
あたふたし始めるファルシエールの背後に2発目の雷が落ちた。
「お父さんのお仕事を見学に来たのよ。だ・か・ら、仕事をしなさい」
「お仕事見学???」


※ ※ ※ ※ ※



◆魔道院 受付

「それじゃあ、これは俺が担当に渡しておきますんで」
「ねぇねぇ、おとしゃまどこかなぁ?」
「あぁ・・・・・キョロキョロしたら危ないよ。もう少しだから大人しくしてよう?」
初めての場所に興味津々なルナソル。
ピョーンと駆け出してしまわないように、アースは普段よりも更に注意を怠らずしっかりがっちりと手を繋いでいる。
これでは見学者ではなく引率者である。



「いらっしゃい、よく来たわねぇ」
「めるしゃん、こんにちは!!」
「こんにちは、ルナちゃん、アース。さぁ、2人とも、此処からは私が案内するわね」
「お母さんが?」
「ええ」
奥から出てきたメールディアは、サイに目で合図するとお子様達を呼びよせた。
「俺も後で行くから」
「その頃には片付いているわよ、ふふっ・・・・・」
メールディアは楽しそうに笑うと、お子様達と手を繋いで執務室へと向かった。
この時たまたま受付にいた極普通の魔道院職員(2名)は、メールディアの天然記念物的表情に衝撃を受け、すぐさま『風聖神様に微笑まれ隊(隊員募集中)』に入隊したという。



◆魔道院 ファルシエール&メールディア執務室

「やぁ、いらっしゃい。ルナソル、アース、中へ入っておいで」
「おとしゃま、こんにちはー!!」
「失礼します」
中へ入ったお子様達を待っていたのは、キラキラシャイニングスマイル大放出のファルシエール。
心臓の弱い人には大変危険な兵器である。



「ルーとアースは、おとしゃまのおしごとみにきたのよ。びっくりした?」
「びっくりしたし嬉しいよ。いつもはお家に帰るまでだーいすきなルナソルに会えないんだもの」
「ルーもおとしゃまだいすきー!!」
「★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
愛娘から言って欲しかった言葉を貰い、言葉では表現しようがないデロ甘顔になるファルシエール。
この場にいる面々には見慣れた光景だが、一般の人達には何が何やら分からないメロメロオーラしか見えない。
究極の美を持つ者は、アホ面さえも美。



「さぁさぁ、2人とも、こっちにいらっしゃい」
「あい!」
「はい」
「え?!」
可愛い可愛い愛娘を今、当に今、抱き上げてぎゅーっとしてチュウしちゃおうとした瞬間、くるっと回れ〜右!されたものだから、『ズコーーーーッ!!!』っと前につんのめったファルシエール。
そして、その様子をニヤニヤと眺めるメールディア。
超ドSなお姉さまである。



「じゃあ、少し離れた私の机からお父さんの仕事を見ていましょうね」
「あい」
「はい」
「・・・・・・」
きーーーーっと悔しそうな顔をしながら書類に目を通し始めるが、愛娘の事が気になって仕方がないのは誰の目にも明らか。
娘の前で仕事をしなけりゃならないという自尊心だけは残っているのがせめてもの救い。



「ルーのおとしゃまはおてがみよむおしごとですか?」
「(・・・・・あれはお手紙じゃないよ)」
「あれはね、えぇと・・・・・どう言えばいいのかしら。そうねぇ・・・・・夜になっても明かりをつければ明るくなるとか、暑い日でも蛇口を捻れば冷たいお水が出るとか、そういう事が普通に出来るようにお仕事をしている人が沢山いるの。あの紙には誰が何処でどのようなお仕事をしているのか書いてあるのよ。ルナちゃんのお父さんと私は、あの紙を読んで、間違っている所があったらその人に教えてあげるの」
「ほぇ・・・・・」
「(・・・・・分かってないんだろうなぁ)」
ぽけーっと口を開けてメールディアを見上げるルナソル。
可愛らしいが、ちょっぴりおばかちゃんな表情だ。



うん。全然、分かってないっすよ。


「んーーー・・・・・大雑把に言うと、皆が毎日元気に暮らしていくためのお手伝いをしている・・・・・感じかしら。これならどう?」
「げんきのおてつだいですか。おとしゃんもおとしゃまはみんなをげんきにするおしごとしてるっていってました。がんばれーっていうですか?」
「(言わないと思う・・・・・)」
「そうねぇ、ルナちゃんのお父さんが笑顔で「頑張れ―」って言ったら、きっと沢山の人が無意味に張り切ってくれると思うわよ。それはそれでいいわねぇ、今度試してみようかしら」
ニコニコと笑いながら返答するが、内容は結構黒い。
しかし、ルナソルには黒い部分はサッパリ分からず、「お父さんが頑張れって言って沢山の人が頑張る」と都合よく理解した様子。



「うわぁー、おとしゃますごいねぇ。おてがみよんでがんばれっていってみんながんばっちゃうんだぁ・・・・・」
「(・・・・・違う、違うよ!!!もう、突っ込みようがない程に湾曲してるよ!!)」
「うふふっ、それじゃあ、ルナちゃんはお父さんに「頑張って」って言ってあげたらどうかしら?お父さん、きっと喜ぶと思うわ」
「あいっ!おとしゃま、がんばってぇ〜〜!!」
お父さんに喜んで貰いたいルナソルが声援を送ると、期待していた以上の効果が即現れることになった。



「ありがとうっ!超頑張るよっっ♪」



キラリン★っと歯を輝かせて笑うと、ファルシエールは1時間程前までのダラダラ状態は何だったのかと思う程のやる気を見せ、恐ろしい早さで書類を処理していったのだ。
「す・・・・ごい・・・・・」
「おとしゃまてがぐるぐるしてるねぇ」
「チョロいわね」
子供達に聞こえないように小声で呟くと、メールディアは回ってきた書類の点検を始めた。
仕事を潤滑に回す為、子供さえも利用する協力してもらうとは恐ろしい。


※ ※ ※ ※ ※



◆魔道院 ファルシエール&メールディア執務室

「おっじゃまっしまっす・・・・・っと、今出て行ったのは・・・・・何?」
「張り切りお父さん、子供達を連れて書類を自らの手で担当に渡しに行くの図」
「・・・・・上手く利用しましたネ」
「バカと何とかは使いようって言うでしょ?」
それを言うなら「何とかとハサミは使いよう」だったりするのだが、サイは何も言わずに苦笑した。



「たまにはいいわねぇ、お仕事見学。あの甘ちゃんでゴーマイウェイな坊やに一人前の仕事をさせるのにとっても有効だわ」
「たまには・・・・ね。毎日だと魔道院の皆さんの体力が持たないっしょ」
「ま・・・・・・そうでしょうね。あらっ、それじゃあ今頃被害拡大中ね、困ったわ」
困ったわと言いながらテーブルの上にお茶の用意をし始めるメールディアと、そうだなぁと答えてホリーに渡されたケーキを皿に並べるサイ。
困った事になりそうでも「ま、何とかなるでしょ」という結論に達している2人。
余裕なのか諦めなのか、唯のマイペースなのか???



◆その頃 魔道院の各部署

「それでは、宜しくお願いします
「は・・・・・・い・・・・・」

バタンキュ〜〜

「おとしゃま、このひともおひるねしちゃったねぇ」
「疲れちゃったんだろうから、このまま寝かしておいてあげようね。さぁ、次の部屋に行こうか」
「あーい」
大好きなお父さんの言葉を疑いもしないルナソルは、ニコニコと愛らしい笑顔でファルシエールを見上げ、男性にしては細くて綺麗な指を小さな手でキュッと握った。
すると、
ほんにゃらふわわ〜ん♪という妙な効果音と小花と星が散る特殊効果が発生し、部屋の中に居た一般職員達が次々と倒れていった。



「(この父娘は、悪気がないだけに厄介すぎるよ!!!)」



ファルシエールはメールディアと違って無愛想ではない。
柔らかな作りモノの微笑を標準装備している。
微笑が作りモノというのは単に性格が悪いというだけでなく、感情が入った笑顔を一般人に見せてしまうと心に衝撃を与えてしまい卒倒させてしまう為、どうせ感情を込めない表情だったら誰にでも好印象を与える微笑でいいんじゃん?・・・・・とのことで自然となってしまったものなのだった。



それが、今日は、今日に限っては。
仕事中に大事な大事な可愛い可愛い娘と手を繋いで「おとしゃますごいねぇ」とか言ってキラキラの目で見られちゃたりするものだから、もう上機嫌で100万ボルトの輝きの笑顔大放出のまま魔道院を移動し、各地で気絶者を多数出してしまっていたのだ。
メールディアとサイが言っていた「困ったこと」は当に現在被害絶賛拡大中。



「あとどれくらいあるの?」
「あと5・・・・いや、此処は姉さんに任せるから・・・・4箇所だよ。ルナソル、疲れてない?疲れたら抱っこしてあげるよ?」
寧ろ抱っこしたくてたまらないというのが顔に出ているのを見て、アースは何だか物凄く嫌な予感がした。
抱っこなんてしたものなら、全身から幸せオーラを放出させて魔道院を機能停止状態にしてしまうかもしれない。
・・・・・かもしれないではなく、確実に。



「うわぁぁい!!だっこだっこ!!」
喜んでぴょこぴょこ跳ねるルナソルには事の重大性が全く以って分かっていない。
「それじゃあ、抱っこしてあげ・・・・・・」
最早、一刻を争う事態とみたアースは強引な行動に出た。
「ルーっっ!!」


※ ※ ※ ※ ※



◆魔道院 ファルシエール&メールディア執務室

「ふふっ、やっぱり何とかなったわねぇ」
「そのようで」
ファルシエールがルナソルを抱き上げようとした瞬間、アースはルナソルと融合し白竜になった。
白竜はアースでもありルナソルでもある。
その事は分かっているが、見た目は全くの別人なものだからファルシエールのテンションはガックーンと落ちていった。
そして、



「私達の優秀な息子のお陰で、魔道院の危機は回避されたわね。お父さんのお仕事見学、無事終了になりそう」
「アースはオトナだからなぁ」
「いつまでたっても自分の感情をコントロール出来ない欲望だけに忠実な精神発展途上男よりよっぽどね」
凄まじい言われ方をしているが、ファルシエールは魔道院の上級職をしているというだけでなくブレイズ家の後継者たる威厳と高いカリスマ性をもっている。
一般的には尊敬される人に該当するのだが・・・・・・
「妻と娘が絡むと使い物にならなくなるって段階でお話にならないわ」
バッサリと言い捨てるメールディア。
容赦なさ過ぎである。



「でもまぁ、それだけシイラとルナを大事にしてるって事だし。2人がキーになってアイツの特殊な体質が発動されるのは、逆に2人が居なかったら本当の感情を表に出す事なく生きていたってことでしょ?嬉しいとか愛しいとか、そういう思いを自然に持てるっていうのは幸せな事だよ。何だかんだ言って、ファルが事故を発生させるのを大目に見てるのは、メーデだってそれが分かってるからだもんね?」
「自分に実害がなければ、下らない事は放置に限るでしょ」
本当は優しいお姉ちゃんなんだけど、と思いサイが僅かに口元を緩めると、メールディアは渾身の力でサイの頬を引っ張った。









◆ブレイズ家 なかよし家族の部屋。

「できたー!!」
「ん?」
洗濯物をたたんでいたシイラの元へ、ルナソルはちょこちょこと駆け寄ってきた。
「あのね、きょうおとしゃまのおしごとみたからね、おとしゃまのしゃくぶんかいたのよ。おとしゃまのひにあげるの」
「しゃくぶん・・・・・あぁ、作文?作文なんて難しいものを書いたんだ、すごいねぇ」
感心されて悪い気はしないルナソルは、怪文書ならぬ「作文」をシイラに差し出した。



「よんで」
「読んでいいの?じゃあ、読ませてもらうね」





おとうさまはみんながげんきになるおしごとしてるのよ。
いつぱいおてがみよんでおてがみはこぶのよ。
おてがみはこんでおとうさまがにこにこするとみんなおひるねしちやうの。
おひるねするとげんきになるのかな。
ルーおとうさまだいすき。
にこにこおとうさまいちばんだいすき。





はっきり言ってさっぱりプーな内容だが、「お仕事見学」の話を聞いていたシイラはほんわかと微笑んだ。
「ルナソルはおとうさんが大好きなのね」
「しょなのよ、ルーはおとしゃまとおかしゃまがだいすきなのよ」
「おとうさんもおかあさんも、ルナソルがだーいすき。この作文を読んだら、おとうさん、もっともーっとルナソルが大好きって喜んでくれると思うな」
「しょかな?やったぁ!!」



「何を喜んでいるの?」
大喜びでルナソルがシイラに抱きついた丁度その時、部屋に入ってきたファルシエールが妻と娘限定の素敵笑顔で訊ねると、元気な声でルナソルはこう答えた。


「おとしゃまにはひみつなのよ!!」


「おとうさんの日にあげる作文だから秘密」なのだが、娘の言葉から推測できるはずもなく。
その晩、シイラは娘を寝かしつけつつ落ち込んだ夫をなだめることに忙殺されたという。





◆ 後日 ◆

おとうさんの日に怪文書作文を貰ったファルシエールは、歓喜のあまり笑顔を押さえることが出来なくなり、次の日の魔道院は午後から臨時休業となったとのこと。










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