■■□ サイの場合 □■■
「・・・・・・・・・」 「明日の朝になったら1人で読んで」といって息子さんから渡された手紙。 手紙と息子さんの寝顔を交互に見ながらサイは複雑な表情をしていた。 「あら、どうしたの?」 「え?あ、うん・・・その、アースが今日は1日寝てるから2人で出かけてきてって」 背後から気配なく近づき声をかけてきた「お母さん」に一瞬ビクッとした後、とりあえず何事もなかったかのように応対。 勿論、手紙はポケットの中にコソっとしまうのを忘れない。 「?????」 「えーと、お言葉に甘えまショ?いつものカフェに新茶が入荷されたっていうから行ってみませんかね?」 「いいけど・・・・・」 首を傾げて眠っている息子さんを見ると、微かに口元が上がった。 ― あぁ・・・・・ 「そうね、行きましょう、「お父さん」」 何かを察した「お母さん」はクスっと笑うと「お父さん」の腕をとった。 ■■□ ファルシエールの場合 □■■ 「おとしゃま、いつもありがとごじゃましゅ。ルーね、おとしゃまだいしゅきなのよ」 キラキラキラキラ〜★☆★☆〜★☆★☆ 天使も仰天のキラキラスマイル。 親の贔屓目抜きにしても強烈に愛らしい。 「うんうん、お父さんもルナソルの事がだーいすきだよ♪」 キラキラキラキラ〜★☆★☆〜★☆★☆〜★☆★☆〜★☆★☆ 美の女神も青ざめ逃げ帰るキラキラースマイル。 ある意味、殺傷力抜群の兵器。 「2人とも仲良しさんね」 娘を抱き上げて頬を擦り寄せるお父さんを見てホンワカと微笑むお母さん。 ★☆キラキラ★☆フワフワ★☆キラキラ★☆ホワホワ★☆ この親子3人以外の侵入を許さない濃厚キラキラ空間。 「はい、おとしゃま。おとしゃまのひのプレジェントなの」 小さな手でモゾモゾと一生懸命にお父さんの胸元へプレゼントをつける娘さん。 プレゼントは・・・ 「バラの胸飾り・・・上手に作ったね」 黄色いバラをブリザードフラワーにして作った胸飾り。 「お父さんの日は黄色いバラを贈るんだものね。アースに教えてもらったの?」 「あい!」 元気よく娘さんが頷くと、ピクリとお父さんの肩が動いた。 娘さんとお母さんはそれに全く気付かず笑顔で会話続行。 「アースは物知りね。このプレゼントも一緒に作ったの?」 「んとね、アーシュはじゃいりょうをくれたのよ。うまくできなくてもルーがじぇんぶやったほうがおとしゃまよろこぶよっていってたのよ。ルーがしっぱいしないようにアーシュはよこでみててくれたのよ」 「そうなんだ。じゃあ、お父さん喜んでくれたよ、ありがとうってお礼を言わないとね」 「あい!!」 「ふふっ、ルナソルはアースと仲良しね」 お母さんが娘さんの頭を撫でると、お父さんの肩は再びピクリと動いた。 「しょうなのよ、ルーとアーシュはなかよしなのよ。ルーね、アーシュのこといちばんだいしゅきなのよ」 ぐがーーーーーーーーん!!! 「ル、ル、ル・・・・・」 「どうしたの、ファル?」 がばぁっと娘さんとお母さんを抱き締めるお父さん。 因みに涙目。 「ルナソルはお父さんとお母さんが1番大好きだよね?!お父さんはね、お母さんとルナソルが世界で1番大事で大好きだよ!!」 「ファル・・・・・」 流石のお母さんもガビーンとした様子。 そして、当の娘さんは・・・ 「おとしゃまもおかしゃまもいちばんだいしゅきでしゅよ?」 嘘のない澄んだ瞳で真面目に答えた・・・・・が、大人げないお父さんは・・・ 「じゃ、じゃあ、アースは1番大好きじゃないよね?」 「ちょ、ちょっと、それは・・・」 あたふたとするお母さん。 涙目のお父さん。 それを見て困った顔の娘さん。 「アーシュもいちばんだいしゅきでしゅ。みんないちばんだいしゅきはだめでしゅか?」 「だ、だめじゃないけど・・・・・」 今頃になって自分の行動に少々恥じらいを感じ始めたお父さん。 「そんなに心配しないで。ルナソルはまだまだ私達の元から離れていかないよ」 未だ端に僅かに涙を残した目に軽く口づけると、お母さんはお父さんを優しく抱き返した。 ■■□ アストライトの場合 □■■ 「ア・・・お義父さん、お茶が入りました」 「ありがとうシイラちゃん。よかったら一緒にお茶にしよう?」 「・・・・・・・・・・」 「シイラちゃん、このワンピース着てみてくれる?きっとよく似合うと思うよ」 「わぁ・・・可愛い!!ありがとうございますっ・・・・・・・お義父さん」 「・・・・・・・・・・ねぇ、これって何のプレイ?」 お義父さんと言う(というか言わされる)度に恥ずかしそうに俯く愛妻。 その仕草を見て満面の笑みを浮かべる実父。 第3者の目から見ると変態プレイ以外の何でもない。 「シイラちゃんは私の息子の嫁だろう?だったら私の娘も同然、私をおとうさんと呼ぶのは必然っ!!」 「慣れてないから恥ずかしいって言ったら、せめて今日1日だけでもって・・・すみません、本当はいつもそうお呼びした方がいいんですよね・・・」 「はははっ、徐々に慣れていってくれればいいからね。気にしないでいいよ」 「ア・・・じゃなかった・・・お義父さん・・・ありがとうございます・・・」 いい人スマイルの父。 それに対して感謝と尊敬の眼差しの愛妻。 イライライライラ・・・ 何じゃそりゃー!!! 「ねぇ、こんなオッサンの戯言を真に受けちゃダメだよ。僕とシイラは夫婦で切っても切れない深〜い間柄だけどね、このオッサンは特に気にしなくてもいい存在だから。っていうか、イチイチ気にしてたら疲れるだけだから。無視無視。ね、部屋に戻って2人の時間を大事にしよ?」 くいっと細くて小さな手を取ると、愛妻は少し眉をしかめて拒否をした。 想定外行動に暫く石化する旦那様。 「お父さんの事、そんな風に言っちゃダメだよ。それにね、私、お父さんとお母さんと一緒に過ごした記憶がないからアストライトさんが「おとうさんって呼んで」って言ってくれるの嬉しいんだよ、本当だよ?」 彼女の家族の事情は色々と複雑で、彼女は両親が健在であっても安易に会う事が出来ない。 次にいつ会えるのかも分からない。 だからこそ、「おとうさん」と呼べる存在は彼女にとって特別。 少し考えれば分かる事だったのに迂闊だったと反省。 「ごめんね、考えなしだった。父さんも・・・すみませんでした」 「いや、まぁ、うん。では、親子3人で・・・ファルミディアも呼んで4人で仲良く食事にでもするか」 「はい、お義父さんっ!!」 ◆◆◆その頃、時の狭間では◆◆◆ 「ふふふ・・・小童が・・・私の可愛い娘に・・・」 「どうした、ネオ。笑顔がおかしいぞ??」 「いいえ、何でもありませんよ」 「そうか・・・」 決して崩れない笑顔の裏の真実の感情は、様々な世界に原因不明の時の歪みを発生させたという・・・ |
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